245 ミウネーレ視点の幻獣人族の里
(ミウネーレside)
今日はレイさんとキリシェさんと一緒に、神樹の迷宮に入りました。
お兄様とユーリは迷宮探索は後にするようです。
あたしもスミレちゃんの故郷である、幻獣人族の里の中も見て回りたかったんですけど、それは後からでもいいですよね。
新たに出現したという迷宮にも興味ありましたし、レイさんと一緒なら、どんな魔物だって怖くないですよ!
神樹グランフォネストというのは、とんでもなく大きな樹でした。
思わず見惚れてしまいましたが、これから迷宮に入るんですから気を引き締めましょう。
迷宮の中は、そのまま大樹に入ったような構造でした。今のあたしのレベルは400を超えているので、大抵の魔物は倒せますよ。
大樹の中のような迷宮のせいか、出てくる魔物は虫ばっかりです!
蟻や蜂みたいなのは、まだいいです。
巨大な毛虫や蜘蛛の魔物とかは、本当に気持ち悪いです!
「きゃあああっ!!?」
背中にヌルっとした物が入ってきました!?
魔物? それともただの虫?
そんなの、どうでもいいです!
我を忘れて、目の前にいたレイさんに思わず抱きついてしまいました。
レイさんは冷静に、あたしの背中に入っていた虫を取ってくれました。
そして虫に怯える、あたしを優しく慰めてくれました。
やっぱりレイさんは格好良くとても頼りになります。冷静になったら、まだ抱きついたままだったので急、に恥ずかしくなってしまいました。
迷惑だと思われてないですよね?
キリシェさんは虫とかは平気みたいです。
これ以上、足手まといにならないように、あたしも頑張らないと!
そうして先に進んでいくと、レイさんが隠し通路を見つけました。
その先にあったのは迷宮ショートカットとかいうのらしく、なんと一気に100階層まで行けるそうです。
何があるかわからないので、レイさんは引き返すことを提案しましたが、あたしとキリシェさんは先に進むことを推しました。
そうして警戒しながら進んでいきます。
100階層にはルナティック·プラントという大樹の魔物が現れました。
ルナティック·プラントというと、一夜で一つの大陸を喰い尽くした伝承がある、伝説の魔物です。
この迷宮は300階層まであるらしく、ここはまだ100階層。
つまり、この魔物は迷宮の守護者ではないということです。迷宮の守護者は、もっと恐ろしい魔物だということでしょうか。
「ミウ、キリシェさん、オレの後ろに! コイツは思った以上にヤバいやつみたいだ!」
「レイさんー! あ、あそこ······!?」
なんとルナティック·プラントは1体だけでなく、新たに2体、合計3体現れました。
レイさんが警戒を強めます。
キリシェさんは動じているようには見えません。
あたしも二人を見習って戦います!
レイさんの「聖」魔法によって、魔物は大幅に弱体化して一気に倒すことができました。
さすがに迷宮探索はここで終わりにして、あたし達は迷宮から脱出しました。
幻獣人族の長さん達に迷宮の出来事を報告して、今日は解散の流れになります。
レイさんもさすがに疲れているようで、里のお風呂に入りに行くと言っています。
レイさんの話だと、この里にはてんねんおんせんという学園やアルネージュにあるような、温泉施設があるそうです。
是非あたしも入ってみたいです!
キリシェさんもそう思ったようで、あたし達はレイさんに案内してもらうことになりました。
温泉のある建物まで来ると、そこにはシノブちゃん、スミレちゃん、エミさん、ミルさん、それにユーリの姿がありました。
みんなも温泉に入りにきたみたいです。
お兄様とアイラさんは、里の外にある町に行ったらしいですね。
レイさんとユーリは男性用の方に。
あたし達は全員で女性用の温泉に向かいました。
幻獣人族の里の温泉は、露天風呂という外の景色が楽しめる所でした。
学園やアルネージュにあるものとは、また別の楽しみ方ですね。
さすがにシャンプーやリンス、石鹸とかはないみたいですから、シノブちゃん達が持ち込んでいたのを貸してもらいました。
「100階層にルナティック·プラント······ですか。また、ずいぶんと強力な魔物が現れたんですね」
温泉に浸かりながら、ミルさん達に迷宮での出来事を話しました。
やっぱり驚きですよね。
あんな強力な魔物が現れるなんて。
「············ボクも戦ってみたかった」
スミレちゃんはそんなことを言っています。
スミレちゃんは、レイさんから正式な加護を受けているので、小さくてもあたしよりもずっと強いんですよね。
あたしはまだ正式な加護をもらっていません。
どうすればもらえるのか聞いても、皆はぐらかしてきます。
エミさん、ミルさん、スミレちゃんはレイさんから。キリシェさんはアイラさんから。
そしてユーリはシノブちゃんから、それぞれ正式な加護を受けています。
あたしだけ、のけ者にされている気分です。
エミさんも最近までは、あたしと同じ〈仮〉の加護だったんですけど、ミルさんに聞いた話によると、酔った勢いでレイさんに襲いかかったそうです。
正直、あのエミさんがレイさんに襲いかかるところを想像できませんが。
この仕切りを挟んだ隣では、ユーリとレイさんが入浴しているはずです。
······あたしも思い切って行ってみましょうか?
ミウネーレはエイミとミールをあだ名で呼んでいます。
エイミ→エミさん。
ミール→ミルさん。
誤字ではありませんが、紛らわしくてスミマセン。