勇者(候補)ユウの冒険章⑤ 21 助っ人参戦
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神将ナークヴァイティニアが出現させた4つの柱から、特殊な魔力が放たれ、周囲一帯がスキルの使えない場になってしまっていた。
「······どうやら、封じられたのはスキルだけみたいだね。魔法は普通に発動するよ」
ユウが自身の状態を確認する。
魔法は使えるようだが、ユウの武器はスキルによって作られた物に頼っていたため、今は丸腰状態だ。
「龍王の加護も勇者のスキルも使えず、そんな状態で我を倒せるか······!」
神将が剣を振り下ろしてきた。
この空間内では神将自身もスキルを使用できないようだが、地力では神将が圧倒的に上だ。
「させぬぞ、神将······!」
シャルルアが口から高熱のブレスを放った。
スキルに頼らない攻撃ならば可能のようだ。
「脆弱だな、龍神の神子よ。そんな程度では何千発撃とうと、我を傷つけることは出来ぬぞ!」
ブレスは神将に直撃したが、まるで効いている様子はない。
反撃に神将も口から高熱のブレスを吐いた。
シャルルアのブレスとは威力が桁違いだ。
「こ······のっ、わたし達を甘く見ないでよ!」
「これくらいならミリィ達でもぉ······!」
「············!」
テリア、ミリィ、マティアが全力で防御魔法を張って、神将のブレスを防ぐ。
しかし、それでも防ぎ切れなかった。
三人の防御魔法が貫かれた。
「「「きゃあああっ!!」」」
神将のブレスをまともに浴びてしまった。
防御魔法によって威力がある程度抑えられていたが、三人とも大きなダメージを負った。
「テリア、ミリィ、マティア!」
ユウが三人を守るために、神将の前に出る。
「楽には死なせぬぞ······精々、苦しむがいい」
今のですら、神将は死なない程度に加減していたようだ。実際、三人とも大きなダメージを負ったが、致命傷には至っていない。
「ボルティックスピアー!!」
ユウが勇者専用魔法「雷」の魔法を連続で放った。
「雷」を帯びた魔力の塊が神将を襲う。
「ほう、スキルを封じられて尚、これ程の威力が出せるとは······小僧、貴様は勇者の中でも優秀な部類に入るようだな。だが、相手が悪かったな······!」
ユウの魔法攻撃を弾き、神将が反撃を仕掛ける。
ユウは素早く神将の剣を回避しようと動いたが、完全には避け切れずに、わずかに斬られてしまう。
「くっ······」
「これで終わりだ! 死ねっ、小僧······!」
さらに追い打ちをかけてくる神将。
今の体勢では、ユウはその攻撃を避け切れない。
「クゥアアアーーッ!!!」
突然、上空より巨大な影が降りてきた。
謎の影はユウを守るように、神将の剣を受け止めた。
「ぬっ······!? なんだ?」
神将が一度後ろに下がった。
謎の影は全身が黒く染まった翼を持つ、大型の鳥の魔獣だった。
「あれが真の力を見せた神将か······」
「ユウ、大丈夫!?」
「ジャネン、エレナ?」
魔獣の背からジャネンとエレナが顔を見せた。
エレナが魔獣から降りて、傷ついているテリア達を癒やす。
「リュガントさんっていう人は、もう大丈夫よ。まだ動けないだろうけど、意識は戻ったわ」
エレナはリュガントや他の傷ついた龍人族を癒やし終えて、ここに来たようだ。
エレナの「聖」魔法により、テリア達の傷が癒えていった。
「カオスレイヴン······冥界の魔獣か······!」
「霊獣だ」
鳥型の魔獣、いや、霊獣が翼を広げて飛び上がった。ジャネンは霊獣に乗ったまま神将に攻撃を仕掛けた。
攻撃魔法を何発か放ち、神将の注意を自分に向けた。
「鬱陶しい奴め······消えろ!」
神将が四本の剣の先から、魔法攻撃を連続で放つ。
だが、霊獣の動きは素早く、すべての攻撃を避けていった。
「特殊封じ場か······厄介だな」
ジャネンが結界内では、スキルが使えないということを確認した。
「クゥアアアーーッ!!!」
神将の攻撃を避けながら、鳥型の霊獣が口からブレスを放った。
超高熱に加え、猛毒や呪詛などが込められた攻撃だ。神将は魔法障壁を張って、ブレスを防いだ。
「ユウ、これを使え······!」
神将と霊獣が攻防を繰り広げているスキに、ジャネンはユウに剣を投げ渡した。
魔剣ナイトメアと呼んでいた武器だ。
「お前に使いこなせるかはわからんが、それなりに強力な剣だ。丸腰よりはマシだろう」
「ありがとう、ジャネン。助かるよ」
ユウが魔剣をしっかりとキャッチした。
鞘から抜き、軽く振って使い心地を確かめる。
「助かったわ、エレナ」
「もう大丈夫ですよぉ、エレエレ〜!」
エレナの「聖」魔法でテリア達が回復した。
すぐに態勢を立て直して構える。
「デスプロージョン」
マティアが4つの柱の内の1つに魔法を放った。
神柱の杭ほど頑丈ではないらしく、魔法が直撃した柱は、意外と簡単に崩壊した。
柱の1つが崩壊したことで、スキル封じの結界の効果が徐々に弱まっていく。
「少しずつだけど、スキルの力が戻ってきてるね。ありがとう、マティア!」
「······あいつは、ぜったいにたおす」
ユウの言葉にマティアが無表情で頷きながら、そう言った。
無表情だが、マティアも神将に対して相当に怒りを感じているのかもしれない。




