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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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勇者(候補)ユウの冒険章⑤ 19 神将との最終決戦

――――――――(side off)――――――――


「ぬぐ······ぐぅおおーーっ!!!」


 龍王の超高熱のブレスによって、神将ナークヴァイティニアは龍人の都の外まで吹き飛ばされていた。

 神将は力を振り絞って、龍王のブレスを弾いた。


「ハアッ······ハアッ!! 龍王め······まだあんな力が残っていたとは······」


 龍王のブレスによって、かなりのダメージを受けていたが、その傷も再生していく。

 神将は高レベルの再生能力を持っているようだ。


「いや、そんなことよりも······何故、神柱の杭(マルス·ピラー)が破壊された? あの程度の力で破壊されるなど絶対にありえん······。まさか龍神、いや······女神の仕業か?」


 神将にとって神具を破壊されるようなことは、絶対にありえない事態だ。

 悔しさで表情を歪ませている。


「······あれは長い年月をかけて作り出した物、もはや代わりはない······。くっ、まさかこんなことになるとは······」


 神具が無ければ魔神降臨という目的を果たせない。

 どうするべきか、神将は頭の中で考えを巡らせる。


「あはははっ! そうやって相手を見下しているから、そういう目に合うんだよ。下等生物相手に計画を台無しにされるなんて、《知の将》が聞いて呆れるよね?」


 神将にそんな声が浴びせられた。

 声の主はユウだ。

 神将を追ってここまで来たのだ。


「小僧·············っ!!!」


 怒りの表情でユウを睨みつける神将。

 もはや怒りとは表現できない程の凄まじい憎悪で睨む。


「ノコノコと我を追って来るとは······よほど死にたいようだな」

「お前はこれからどうするのさ? 神柱の杭(マルス·ピラー)は破壊した。もう魔神降臨なんてできないんでしょ?」

「甘く見るなよ、小僧。たとえ神具が無くてもディヴェード様降臨は実現できる······。神柱の杭(マルス·ピラー)に代わって、我自身が礎となればいい」


 魔神降臨のために、神将は自身の命を生け贄にするつもりらしい。


「龍王に龍神の神子、人族の聖女······さらには勇者である貴様らの血があれば、生け贄には充分だ」

「つまりは諦めるつもりはないんだ? やっぱり、お前はここで倒すしかなさそうだね」


 ユウが(物質具現化)スキルで剣を作り出し、構えた。やはり神将に撤退の意志はないようだ。


「勇者なんかやるつもりはないんだけど、今は別だね。ナークヴァイティニア、ぼくは勇者としてお前を倒す。尻尾を巻いて逃げ出すなら、今の内だよ」

「図に乗るのもいい加減にしておけよ、小僧······。勇者とはいえ、聖女同様にまだ覚醒前のはず。そんな貴様ごときが、神将たる我を倒すことなど出来ぬ······! たとえ覚醒したとしても同じことだがな!」


 ナークヴァイティニアが目の前の空間から、四本の剣を取り出し、それぞれの腕に構えた。


「小僧、ここまで我をコケにしたのは貴様が初めてだ。貴様は絶対に許さぬぞ。ただ殺すだけでは飽き足らん······魂そのものを砕き、二度と生まれ変わることのない、無限地獄の闇に叩き落としてくれる。死して尚、安息などないと知れ!」


 初めて対峙した時のような、ユウを甘く見ている雰囲気はもはや無い。

 手加減する気もなく、全力でユウを殺すつもりのようだ。


「許せないのはぼくも同じさ。人を下等生物だなんだと見下して、何様のつもりだよ? 魔人族がそんなに偉い奴らには見えないけどね」


 ユウは恐れることなく剣を構える。

 笑いながら言っているが、ユウからも強い怒気が放たれていた。



―――――――!!!



 ナークヴァイティニアがユウに向かって斬りかかった。ユウは正面から、その剣を受け止めた。


「なにっ······!?」

「いつまでも、やられっぱなしだと思わないことだね!」


 自身の剣を受け止められ、心底意外そうな表情をうかべる神将。

 ユウは反撃に神将に斬りつけた。

 斬りつけられたナークヴァイティニアから、わずかに血が流れる。


「我が剣を受け止めるとは······。まさかこの力、龍王の加護を受けているのか······!?」


 今までとは違うユウに驚きをうかべるが、すぐに理由を察した。

 龍王に与えられた加護によって、ユウは桁外れにパワーアップしていた。


「他種族に加護を与えるとは······しかも並の加護ではない。龍王め······奴もなりふり構っていられなかったということか」


 ナークヴァイティニアが態勢を立て直す。

 ユウに斬りつけられた傷は、すぐに塞がっていた。


「ソード·レイン!!」


 ユウが(物質具現化)で周囲に無数の剣を作り出し、ナークヴァイティニアに向けて一斉に放った。

 神将は四本の剣を振り、すべての剣を防いだ。


「舐めるなよ、小僧。貴様が勇者で、龍王の加護を受けたとしても、それでも我を倒すことなど出来ぬ!」


 ナークヴァイティニアが反撃に出る。

 やはり神将の力は凄まじく、今のユウでも力の差は大きそうである。



――――――――!!!



 ナークヴァイティニアに向けて、無数の矢が降りそそいだ。

 ユウへの攻撃を止め、矢をすべて弾く。


「ユウ、一人で突っ走りすぎよ。わたし達がいることも忘れないでよ!」

「ミリィもユウ様に加勢しますよぉ!」


 テリアとミリィが姿を現した。

 二人もユウ同様に、龍王の加護を受けて力が増している。


「雑魚共が······貴様らが何人来ようが―――――」


 二人に目を向けるナークヴァイティニアの足下に魔法陣が浮かび上がる。


「パーガトリー·バーニング」


 次の瞬間、魔法陣から「炎」が舞い上がり、神将を呑み込んだ。

 凄まじい灼熱の業火が神将を襲う。


「アタシも、かせいする······こいつには、たっぷり()()をかえす」


 神将を呑み込んだ「炎」はマティアの魔法だった。

 もともと魔力が高かったマティアだが、龍王の加護によって、さらに上がっている。


「神将ナークヴァイティニアよ! お主の蛮行もここまでじゃ!」


 シャルルアも姿を見せた。

 エレナはリュガントの治癒のためにまだ城に残っているようだ。

 ジャネンはどこに行ったのか姿を見せない。



 ナークヴァイティニアがマティアの「炎」を吹き飛ばした。

 ある程度ダメージを受けているようだが、その傷も再生していく。


「鬱陶しい奴らが次々と······」

「あはははっ! ぼくには頼もしい仲間がいるからね。一人だけのお前とは違うのさ」


 ユウ達はナークヴァイティニアを取り囲む形を取る。


「わたし達も龍王さんに力を分けてもらってるからね。もう、アンタに後れを取らないわよ」

「降参するなら、今の内じゃないですかぁ?」


 テリア達の言葉に神将の表情が歪む。

 だが、すぐにその表情が変わる。


「くっ······くくくっ······ふははははっ!!!」

「何がおかしいのよ!?」

「貴様ら下等生物の浅はかさだ······!」


 突然、大笑いしだした神将だったが次の瞬間、表情を引き締めた。


「龍王の加護を受けて増長しているようだが、貴様らごときが束になろうと我は倒せぬ!」


「コイツ······どこまで人をバカにすれば······」

「待つのじゃ、テリア! 神将の様子がおかしい」


 攻撃を仕掛けようとしたテリアを、シャルルアが止める。シャルルアが言うように神将の身体に変化が起きる。

 異様なまでの力が集まっていた。


「······いいだろう、我も()()()相手をしてやろう」


 ナークヴァイティニアの全身が不気味に脈打つ。

 異常な程の力が膨れ上がろうとしていた。



「光栄に思え、だが後悔しろ! 我が真の力を見ることを! ぬぅおおおーーっ!!!」


 ナークヴァイティニアが力を一気に解放した。

 身体が膨張し、巨大化していく。

 もともとがかなり大柄な体型だったが、さらに数倍巨大化している。

 身につけている漆黒の鎧も、身体に合わせて形を変えていた。



―――――――ズンッ!!!



 とてつもない巨体になったことで、神将が動くたびに大地が揺れる。


「クズ共が······我を敵に回したこと、精々後悔しろ! 己が罪を悔いて死ね!」


「後悔するのはお前の方だよ。散々好き勝手してくれて。ここで完全に(めっ)してやるよ······! テリア、ミリィ、マティア、ルル! ぼくに力を貸して!」


 本気の戦闘形態になった神将を前にしても、ユウは引く気はない。

 テリア達も、ユウと共に戦うべく動いた。





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