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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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勇者(候補)ユウの冒険章⑤ 14 反撃開始

(エレナside)


 女神様の神託を受けて私は、ユウ達と共に龍人族の住む大陸までやってきた。



 龍神の神子シャルルアの持っていた魔道具の効果で、船などを使わずに一気にこの大陸まで飛んでくることになったけど······なんでユウ達は平気なの!?

 むしろ飛んできたのを楽しんでいる様子だった。


 物凄いスピードで船なら何日もかかる距離を、ほんの十数分で来たから、私はしばらく足が震えてまともに動けなかった。





 龍人族の大陸のトライヒートマウンテンという山に着いたらしく、私達は龍人の都を目指して山を下ることにした。

 けど、私達がこの大陸にやってきたことは魔人族に感付かれていたようで、あっという間に包囲されてしまった。


 しかも魔王を上回るという、神将が直々にやってくるという最悪な事態。

 ナークヴァイティニアという神将は圧倒的で、あんなに強いユウ達でもまるで歯が立たなかった。



 私は神将の魔法攻撃を受けて気を失ってしまった。







「ん······ここは······?」

「ふん、目覚めたようだな。人族の忌々しき聖女よ」

「······!? あ、貴方は······!?」


 目を覚ましたら、私は拘束されて、どこかの城のような豪華な大部屋に連れて来られていた。

 周りには何人もの魔人族······。

 そして目の前には首領ナークヴァイティニアがいた。ユウ達の姿はどこにも見えない。



 コイツの話だと、ユウ達は私を見捨てて逃げたということだったけど、そんなの信じないわ。

 確かにコイツは強い。それも圧倒的に······。

 だからユウ達は一度撤退して、正面から戦うんじゃなくて、何か作戦を立てているんだと思う。



 どうもコイツは私を魔神降臨の生け贄にするつもりらしく、すぐに殺すつもりはないみたい。

 女神リヴィア様以外の神様のことは、あまり詳しくないけど、魔神ディヴェードとかいうのはろくな神様とは思えない。

 そんなのがこの世界に降臨したら、一体どうなるの?




「ナ、ナークヴァイティニア様! 龍人族の強襲です! 都外の八方から龍人族が攻めてきました!」

「ふっ、最後の特攻のつもりか。ディヴェード様降臨の舞台に相応しいな。龍人族共の血で、この地を染めてやろう」


 外の方が騒がしくなってきた。

 魔人達の会話を聞く限りだと、龍人族がここに攻めてきたみたい。

 いえ、多分ここはシャルルアが言っていた龍人族の都のお城だと思うから、攻めてきたというより奪還しに来たようだわ。


 ナークヴァイティニアが魔人達に指示を出して、龍人族を迎え撃とうとしている。

 もしかしたら、ユウ達も一緒なのかもしれないわ。






 

 外から激しい戦闘音が響いてくる。

 何度も大地が揺れ動くような振動も起きてる。

 ナークヴァイティニアは指示を出すだけで、ここから動く気配はない。


「ナークヴァイティニア様! ひ、東門方面が突破されました······!」

「西門方面の龍人族共の反撃も激しいようです······」


 魔人達の報告だと龍人族が優勢みたいだわ。

 ナークヴァイティニアの表情が少し曇る。


「情けない者共め······まあ良い、突破された方面は下がらせろ。奴らの目的は龍王の救出だろうからな。城の守りを固めさせろ」

「「はっ!!」」


 龍王······魔王にも匹敵すると言われている、龍人族の王。

 そんな龍王でも神将(こいつ)には敵わなかったの?

 魔人達に指示を出したナークヴァイティニアは、私の方に目を向けた。


「少々予定より早いが、儀式の準備を始めるとしよう。この人族の聖女を玉座の間まで連れて行け!」


 ナークヴァイティニアの言葉を受けて、何人かの魔人達が動く。

 儀式······魔神降臨の?

 おそらく、私はそれで殺されることになる。


 死ぬのが怖くないわけじゃない。

 けど、私は本来なら病気で長くは生きられないはずの身体だった。

 それをユウ達によって救われた。

 死とはいつも隣り合わせだったから、覚悟さえ出来れば恐怖心を抑えられる。


「先程までの怯えの色が消えたな? ディヴェード様のために生け贄になる覚悟は出来たということか?」

「違うわよ······私は信じているもの。ユウ達がきっと助けに来てくれるって。だから、その儀式は失敗するわ」


 私は声を振り絞って、そう言った。

 情けないけど、私には自力で逃げることも出来そうにない。

 だからユウ達を信じて、気丈に振る舞うことしかできない。


「ユウ······あの小僧のことか。来るわけがないだろう。今頃、我が差し向けた追手に殺されているはずだ。仮にうまく逃れたのだとしても、我の力を恐れて、立ち向かって来ることなどないだろう」


 ナークヴァイティニアは侮蔑の笑みをうかべた。

 ユウ達なら、その追手を返り討ちにするくらい出来ると思うわ。


 それにユウがコイツを恐れる?

 ユウは私の病気を治すために、止めるのも聞かずに伝説の魔物に立ち向かって行ったのよ。

 そんなユウがコイツを恐れて逃げ出す?

 絶対にありえないわ。


「希望に満ち溢れた目だ······気に喰わんな。まあ良い、ならば、そのままありもしない希望を持ち、最期の瞬間に絶望するがい―――――――――」



―――――――――ガシャアアァンッ!!!



 部屋の窓が突然割れて何かが入ってきた。

 人影が一つ······見覚えのあるシルエットだった。


「エレナ、助けに来たよ。そしてナークヴァイティニア。お前には礼をしに来たよ」


 現れたのはユウだった。

 ユウはいつものように安心する笑顔でそう言った。





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