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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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勇者(候補)ユウの冒険章⑤ 11 冥界の神の使いジャネン

――――――――(side off)――――――――


「冥界の神? それってミリィが言ってた、五大神ってやつの一人だったかしら」


 ローブの人物、ジャネンの言葉を聞き、テリアが言う。


「へえ〜、失礼かもしれないけど、女の子だとは思わなかったよ。髪の毛も蛇みたいで可愛いね」

「か、可愛いかしら······?」


 ユウはそんな感想を漏らし、テリアは首を傾げた。

 だが、髪はともかく、顔立ちは人間の少女と変わらず、可愛らしいと言える容姿だ。



「冥界の神の使いが何故、龍人族の地にいる? それに何故、妾達を助けてくれたのじゃ?」

「この地に来た本来の目的は別件だが、緊急で我が神より指示があってな。龍人族の手助けをしろと」

「冥界の神が妾達を手助けせよと? 一体何故······」

「龍人族がこのまま滅びるのは、我ら冥界側にとっても不都合だからだ」


 シャルルアの問いに、ジャネンが淡々と答えた。


「魔神ディヴェードの最終目的は全種族の支配だ。某達、冥界の民も例外ではないだろう。ここで龍人族がヤツの軍門に下れば、次の目標は冥界に向く可能性がある」

「つまり、自分達を目標にされないために、龍人族には防波堤になっていてほしいってことなわけね」

「簡単に言えば、そういうことだ」


 テリアの言葉をあっさり肯定した。

 感傷的に龍人族の味方をしているわけではないようだが、悪い話ではなさそうだ。


「というか、そもそも冥界ってなんなのよ?」

「某達の住む地のことだ。詳しい場所などは話せんがな」


 テリアの問いに、ジャネンが簡単に答える。


「確か、北の最果ての大地に、冥界の入口があると聞いたことがあるのう。妾も実際見たわけじゃないので、そこまで詳しくはないがの」


 冥界と聞いて、テリア達はあの世とか死後の世界を想像したが、シャルルアが言うには普通にこの世にある地のことらしい。


「某のことよりも、今後のことを考えるべきじゃないか? とりあえずは、その娘にこれを使ってやれ」


 ジャネンがマティアを指差し薬を取り出した。

 マティアは神将(ナークヴァイティニア)から受けたダメージが思ったよりも大きく、ツラそうにしている。


「これは?」

「ダークポーションという薬だ。冥界で作られた物で、お前達人族にはあまり効果はないが、()()()なら、おそらく効果があるだろう」


 ユウが薬を受け取りマティアに与えた。

 テリアは警戒したがジャネンが言うように、マティアには効果が発揮されたようだ。

 マティアはやはり通常の人族とは何か違うらしい。

 おそらくだが、今の薬は上級ポーションくらいの効果はあったようだ。


「············からだが、らくになった」


 マティアの身体はすっかり回復したようだ。


「元気になってよかったよ、マティア。ありがとう、ジャネン、でもこの薬、結構貴重な物だったんじゃないかな?」

「······たいした物ではない」


 ユウが笑顔でお礼を言い、ジャネンは素っ気無く答えた。少し照れている感じのような気がするが。


「そういえば、さっきからミリィが静かね? アンタがおとなしいなんて珍しいじゃない」

「失礼なこと言わないでください、テリっちぃ。ちょっと驚いていただけですからぁ」

「驚いた?」


 テリアが声をかけたことで、いつもの調子で答えた。


「夢魔族は基本無神教で、特に神を崇めていませんけど、冥界の神には一目置いているんですよぉ。昔、色々ありましてぇ。冥界の神の使いって、神子や聖女と同じ存在ですから、そんな人が目の前に現れたら、ミリィでも驚きますよぉ」


 どうやらジャネンは、シャルルアやリヴィア教の聖女達と同じ立場のようだ。


「某はそんな偉い立場ではない。ただの使い走り、いいように使われるだけの存在だ」


 ジャネンは口ではそう言っているが、自分のそんな立場を不快に感じているようではない。


「そんなことよりも、お前達はこれからどうするつもりだ? 連れて行かれた娘を助けるのか?」

「当たり前だよ。エレナを見捨てるわけにはいかないよ」

「ナークヴァイティニアの強さは理解できたはずだ。正面から挑んでも、勝ち目はないぞ」


 ユウは当然、攫われたエレナを助けに行くつもりだ。それにはテリア達も同意見だ。

 神将(ナークヴァイティニア)は部下に殺すなと命じていたが、何が目的かわからないので、いつまでもエレナが無事とは限らない。


「だったら搦め手で行くだけさ。強いのが神将(アイツ)だけなら、どうにでもなるよ。()()()()()()()()()()()()()使ってやるさ」

「ユウ······アンタもしかして、相当怒ってない?」


 笑顔で言うユウを見て、テリアが冷や汗をかいて言った。ユウから、今まで感じたことがない程の怒気を感じたからだ。


「城に連れていくと言っていたから、おそらく都の龍王様の居城にいるはずじゃ」


 龍人族の都には龍王の城があり、おそらくは魔人族にすでに占拠されてしまっているだろうということだ。


「この山の麓に龍人族の残党が集まっていた。その者達と合流し、協力を仰いだ方がいいのではないか?」

「何、本当か!? 案内してくれ! 妾以外に無事な者を確認したい!」


 ジャネンの言葉に、強く反応するシャルルア。

 シャルルアも自分以外の龍人族の安否が気がかりだったようだ。

 龍人族の協力があれば、エレナを救出できる可能性が高まるだろう。


「ジャネンも、ぼく達にこのまま協力してくれるんだよね?」

「我が神の(めい)だ。出来る限りは手を貸そう」

「ありがとう。じゃあ、改めてぼくはユウ。これからよろしくね、ジャネン」


 笑顔で握手を求めるユウに対して、ジャネンから少し戸惑いを感じる。


「······某は冥界の者だぞ? 人族は我らに触れると呪われるだとか言って、忌避するものだと聞いたが?」

「ジャネンに触ると呪われるの?」

「呪術をかけるならともかく、触れただけでそんなことはできん」

「じゃあ問題ないね。よろしく、ジャネン」


 ユウはジャネンの言葉をまったく気にせずに、改めて手を差し出した。


「······変わった奴だ。わかった、改めて協力を約束しよう」


 表情は変わっていないが、苦笑いでもしそうな口調でジャネンはユウとの握手に応じた。






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