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3 女騎士リンから見た三人

(リンside)


 わたしはリン。聖女セーラ様の専属護衛騎士です。

 セーラ様とは幼い頃から一緒にいる、とても長い付き合いになります。

 セーラ様は元々は一般の修道女としてリヴィア教に入信していましたが、ある時聖女としてのスキルを手にしたため、聖女候補として一気に出世しました。



 セーラ様は平凡な自分が聖女なんて······と、戸惑っていましたが、わたしはセーラ様は聖女にふさわしい方だと思っています。


 セーラ様が聖女候補になったので、わたしはその護衛騎士に立候補するために訓練をしました。

 その甲斐(かい)あってわたしは専属護衛騎士の権利を勝ち取った。


 最近は魔物が特に活発になっています。

 そのため、聖女は今まで以上に重要視されている。

 わたしがセーラ様の負担を少しでも軽くしなければ······。



 今回わたし達はセーラ様が聖女になるための試練の一つを受けるため、アルネージュの町に向かっています。


 アルネージュの町はこの大陸で三番目に大きな都市です。この周囲はそれ程強力な魔物は出ない。

 ごく稀にとてつもない強力な魔物が現れることもありますが普段は弱い魔物がそれなりに現れるくらいです。



 セーラ様の護衛にわたしの他に教会から腕の立つ騎士を10名程連れて来ている。

 この周辺で現れる魔物を考えれば多すぎるくらいです。

 わたし一人でも充分なくらいです。

 ですが、万が一の事態を考えての数です。

 それだけ聖女を重要視しているということです。


 しかし、その万が一が起きてしまった。よりによってサイクロプスに襲われました。

 サイクロプスはランクBの上位の魔物。

 小さな町なら滅ぼされてもおかしくない危険な魔物です。外の護衛騎士達は腕は立ちますがサイクロプス相手であの人数は厳しいでしょう。

 なんとか健闘していますが、やられるのは時間の問題に見えます。


 ここでセーラ様を死なせる訳にはいきません。

 わたしが囮になってでもセーラ様を守らなくては······! わたしはここで死ぬ覚悟をしました。





 しかし事態は急転しました。

 突然現れた二人の女性によってサイクロプスはあっさり倒されました。

 凛々しい顔立ちで美しい長い黒髪の人物と少々幼い体付きの人物です。

 アイラさんとシノブさんというらしい。


 アイラさんは女性ですがカッコいいという言葉が似合う方ですね。

 シノブさんはわたしより年下っぽいのにその動きは目にも止まらない程のものでした。

 たった二人であのサイクロプスを倒してしまうなんて一体この方達は何者でしょうか。


「大丈夫、アイラ姉、シノブ!?」


 む、もう一人いたのですか。しかも男性です。

 見たところあまり強そうには見えない方です。

 というか女性に戦わせておいて男性がなにもしなかったというのはどうだろうか。


 わたしは父親があまり誉められた人物ではなかったため、基本男性が嫌いです。

 もちろんこの男がまだなにかしたわけでもないので、わたしはなにか言うつもりはありませんが。





 その後、セーラ様がせめてものお礼ということで、町まで馬車に乗せることになりました。

 アイラさんとシノブさんは問題ありません。

 しかし、このレイという男も一緒だというのは納得がいきません。


「リン殿、レイを悪く言うのはやめてもらえないか? レイは貴女の思っているような最低の男ではないぞ」

「そうでござるよ。師匠は強くて頼りになる方でござるよ」


 アイラさんとシノブさんに苦言されてしまいました。確かにわたしが一方的に嫌っているだけです。

 この男がなにかしたわけではありません。

 悪いのはわたしです。


 それにアイラさんとシノブさん、こんな凄い人達にこう言われるということはこのレイという男もそれなりに凄い人物かもしれません。

 だからわたしはこれ以上なにも言いません。言えません。





 その後軽い雑談でわかったことですが、この方達はただの旅人であり、冒険者ではないようです。

 リヴィア教はおろか、聖女のことも知らない。

 ············どういうことでしょうか?


 リヴィア教は知らない人の方が珍しいくらい国々に浸透しているはずです。

 ウソを言っている感じではありません。

 旅人と言ってますが一体どこから来たのでしょうか? 向こうもこちらのことを深く聞かないようにしているようなのでこちらも聞きづらいです。


 悪い人達ではないでしょう。

 男の方は············保留です。



――――――――ガタンッ!!



 そんなことを考えていたら馬車が突然大きく揺れました。敵ではありません。

 この辺りは道が悪いので馬車の足が引っ掛かったのでしょう。

 少し驚きましたが普段なら問題ないことです。

 そう、普段なら······。


「えっ」

「あっ······」


 バランスを崩したわたしとレイという男が抱き合う形で転びました。

 あろうことかこの男の手はダイレクトにわたしの胸を掴んでいます。


「ご、ごめん、大丈夫?」


 この男はすぐに離れました。

 しかし、ぶつかったことを謝っただけでこの男、わたしの胸を掴んでいたことに気付いていません。


 確かにわたしの胸は······小さい方です。

 多分シノブさんと同じくらいでしょうか。

 男に触れられて喜ぶ趣味はありませんがこの反応は失礼過ぎるでしょう!


「このっ······痴れ者がぁーーっ!!!」


 わたしは思い切り男の頬を引っぱたきました。

 ······やはり男は嫌いです。





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