表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
299/736

勇者(候補)ユウの冒険章⑤ 10 ユウ覚醒?

――――――――(side off)―――――――――


 神将ナークヴァイティニアから逃れたユウ達だったが、二体の魔人に道を阻まれてしまった。


 巨大な蛇の姿の魔人はガーヴァ。

 人型の剣士風の魔人はネルギラという名のようだ。


「倒すしかないみたいね······」


 テリアが弓矢を具現化させ、構える。

 ミリィ、マティア、シャルルアも戦闘態勢に入る。

 幸いにも追ってきたのはこの二体だけで、他の魔人や一番厄介な神将(ナークヴァイティニア)はいない。


「ガヴァヴァヴァ!! 人族のガキの分際で、俺達とやり合う気かよ!」

「格の違いを教えてやろう」


 ガーヴァとネルギラがユウ達に襲いかかった。

 ガーヴァがユウを、ネルギラが女性全員を相手にするつもりのようだ。


「ガヴァヴァヴァ! 一思いに喰い殺してやるぜ!」


 ガーヴァが大きく口を開けてユウに跳び掛かった。

 ユウはそれを避けて(物質具現化)で剣を作り出し、ガーヴァに斬りつけた。

 だが、ガーヴァの硬い皮膚、いや鱗に阻まれてしまう。



「下手に避けぬ方が身のためだぞ? 避けると苦しみが長くなることになる」


 ネルギラは剣技でテリア達を襲う。

 テリアが弓矢で連続攻撃を放つが、すべて弾かれた。


「このぉ! ミリィ達を甘くみないでくださいぃ!」 


 ミリィも魔法を放つが、魔法攻撃すらも剣で斬り裂かれてしまった。

 マティアは神将(ナークヴァイティニア)から受けたダメージがまだ残っていて、まともに戦えそうにない。


「好きにはさせぬぞ、魔人族よ! 喰らえいっ!」


 シャルルアが口を開き灼熱のブレスを吐いた。

 竜形態にならなくても、竜の特技が使えるようだ。


「ぐっ······龍神の神子め······!」


 さすがに今のブレスは、剣で裂けなかったようだ。回避行動を取ったが、わずかにダメージを負っている。








「ガヴァヴァヴァ! このまま絞め殺してやるぜえ!」


 一方、ユウはガーヴァの巨大な身体に巻きつかれている。

 ユウの身体がギシギシと締め付けられるが、ユウは表情を変えず、声も出さない。


「なんだあ? 恐怖で声も出ねえのかよ。泣き叫んでくれなきゃ面白くねえだろがよ!」

「······そうだね。一つ聞いてもいいかな?」


 さらに締め付けてくるガーヴァに対して、ユウが静かに口を開いた。


「命乞いか? 今更遅えんだよ! てめぇらは殺せって命令だからな」

「違うよ、純粋な質問だよ。キミ達ってさ、魔人族の中では強い方なの? それとも、ただの下っ端なのかな?」

「ああ? 俺達はナークヴァイティニア様直属の精鋭だぜ、その中でも俺達は側近中の側近だ。弱いわけねえだろうが!」


 かなり強く締め付けられているはずなのに、ユウの表情に変化はない。

 質問の意図がわからず、ガーヴァがイラつき、さらに力を込めた。


「そっか、それが本当なら安心したよ。あのナークヴァイティニアって奴が圧倒的に強いだけで、他は大したことないみたいだからね。それなら、なんとかなりそうだよ」

「ああ!? この状況で何減らず口をたたい············ゲハァッ!!?」


 締め付けを強くしたガーヴァの身体が突然、斬り裂かれた。ユウが(物質具現化)で無数の剣を作り出し、内側から一気に放ったのだ。

 ユウが締め付けから脱出し、剣を一本手に取り、構える。


「て、てめぇ······!」


 斬り裂かれた身体を再生しながら、再びユウに襲いかかる。

 ユウは無駄のない動きでガーヴァの攻撃をかわし、斬りつけた。


「ぐはぁっ!? ど、どうなってやがる!? このガキ、さっきよりも強くなって······」

「あはははっ! どうしたのさ、ぼくを殺すんじゃなかったのかな?」


 ユウの全身から、先ほど神将と戦っていた時よりも強い魔力が放たれる。

 ガーヴァは知る由もないが、ユウの勇者のスキルがここに来てレベルアップしたのだ。








 テリア達もネルギラを押し始めていた。

 龍人族のシャルルアの攻撃に、テリアとミリィがサポートして、息のあったコンビネーションを繰り広げていた。


「ぐううっ!? 小娘ごときに、この俺がっ」

「わたし達を甘く見過ぎよ!」

「偉そうな口を開いた割には、大したことないですねぇ?」


 テリアとミリィが挑発する。

 その言葉に怒りを覚えたネルギラが、剣に強い魔力を込めた。


「生意気な口を聞いたことを後悔しろ! 殺風我影(さっぷうがえい)············」

「させないよ」


 ネルギラが剣技を放とうとしたが、ユウが間に入り、それを阻んだ。

 ユウの剣に斬りつけられ、ネルギラが後ろに跳ぶ。


「ガーヴァ、何をしている! ガキ一人、抑えられないのか!?」

「う、うるせぇっ! このガキが妙なんだよ! いきなり強くなるわ、こっちは力が抜けるような感覚になるしよ······」


 ガーヴァはユウによって、全身傷だらけにされていた。徐々に再生しているが、それでもダメージは大きいようだ。


 今現在、勇者のスキルの効果によって、ユウだけでなくテリア達もステータスがアップしている状態なのだ。

 逆に魔人達はステータスがダウンしている。

 ユウの勇者のスキルがレベルアップしたことで、その効果がさらに高まっているのだ。


「あはははっ! 側近がこの程度なら魔人族も大したことないね。神将(アイツ)だけが異常なんだね」


 ユウがテリア達の前に立つ。

 そして二人の魔人を挑発した。


「調子に乗ってんじゃねえぞ、くそガキっ!!」

「バラバラに切り刻んでやる······!」


 挑発にまんまと乗って、ガーヴァとネルギラがユウに襲いかかる。

 ユウは静かに構えて、剣技を放った。


破邪閃光剣(はじゃせんこうけん)っ!!!」


 ユウの剣から、まばゆい光の斬撃が放たれた。

 斬撃はガーヴァとネルギラを大きく斬り裂いた。


「す、すご······ユウって、こんな剣技使えたの?」

「ユウ様、すごくカッコイイですぅ!」

「これは勇者の剣技かの······?」


 テリアは目を見開くように驚き、ミリィは甘い歓声をあげた。

 シャルルアも驚きの反応だ。


「あはははっ! ナークヴァイティニアって奴に伝えてよ。何を企んでるかは知らないけど、お前の計画、ぼくが台無しにしてやるってさ」


 ユウが笑いながら言った。

 笑ってはいるが神将(ナークヴァイティニア)に対して強い怒りを覚えているようだ。

 ユウの剣技を受けた二人の魔人はダメージが大きく、どう見ても、これ以上戦える状態ではない。


「ぐはっ······ち、ちきしょう! このガキ······」

「これ以上舐められるわけには······俺も奥義で······っ」



――――――――!!!


 ガーヴァとネルギラの後方から光が降りそそいだ。光を浴びた二人は、全身が徐々に石化していく。


「な、か······身体が······」

「しまっ······ぐあああっ!!」


 二人はあっという間に石像と化してしまった。

 光が放たれた方から、新たな人影が現れる。


「どうやら、神将の力を目の当たりにしても心は折れていないようだな。さすがは勇者といったところか」


 現れたのはユウ達を庇い、神将の足止めをしていたローブの人物だった。

 ローブの人物も、神将相手にうまく離脱してきたようだ。


「よかった、無事だったんだね。改めて、お礼を言わせてよ」


 ユウがローブの人物に手を差し出す。

 慌ててテリアがそれを止めた。


「待ちなさいよ、ユウ! まだ、この人が何者かもわからないのよ!?」

「ぼく達を助けてくれたんだよ? 悪い人じゃないと思うけど」

「それはそうだけど······」


 ユウはローブの人物に対して、まるで警戒していない。いくら助けてもらったといっても無防備すぎるとテリアは思った。


「妾達の危機を救ってくれたことは感謝している。······しかし、お主は一体何者なのじゃ?」


 シャルルアが前に出て、ローブの人物に問う。


「そうだな。前にも顔のわからぬ相手は信用出来ないと言われたばかりだった」


 ローブの人物はフードを外し、素顔を見せた。


(それがし)の名はジャネン。冥界の神、ファンティラドゥス様の使いだ」


 フードの下から出てきた素顔は、ユウ達と同じくらいの年齢に見える、可愛らしいメデューサ族の少女だった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ