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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第四章 スミレの故郷 幻獣人族の里
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221 封印獣リュベネイタル

(フウゲツside)


 魔人が自身を生け贄にして神樹に封印されていた魔物を復活させてしまった。

 かつての勇者でもどうしようもなく、激戦の末に封印した魔物。


「――――――ッ!!!」


 復活できたことへの歓喜の声か。

 それとも勇者に対する怒りの咆哮かはわからないけど。当時と変わらない姿の魔物が目の前に現れた。



 封印獣リュベネイタル。

 トロールやサイクロプスを上回る巨体の怪物。

 当時の魔王が様々な実験によって作り出したという話で色々な魔物の特徴が合わさった混合獣。


 その力は魔王にも劣らない程で自我はなく、ただ目の前の物を破壊するだけの存在。


「――――――ッ!!!」


 封印獣がその巨大な腕を叩きつけてきた。

 私達は咄嗟にそれを避けた。

 あまりの衝撃に地面が揺れた。


「お前達は下がれ! こやつはお前達の敵う相手ではない!」


 ゲンライが護衛達を下がらせた。

 護衛達は魔人との戦いで負傷していたし、とてもこの魔物とは戦えないわ。

 私もゲンライも当時この魔物と戦ったことがある。

 お互い今よりも未熟だったとはいえ手も足も出なかった。


 いいわ······当時の雪辱を晴らさせてもらうわ!



「ゲンライ、いくわよ!」

「当時の雪辱を晴らさせてもらおう!」


 ゲンライも私と同じことを思ったようね。


「――――――ッッ!!!」


 封印獣が口から炎のブレスを吐いてきた。

 私は「風」魔法で炎をかき消した。

 結界の力が弱まっているとはいえ神樹はこの程度の炎で燃える程脆くはないけど負担はかけられないわ。


「ぬおりゃあーーっ! 我炎剛爆掌(がえんごうばくしょう)!!」


 ゲンライが奥義を放った。

 炎を纏った拳で封印獣を攻撃する。

 しかしゲンライの拳は封印獣に届かずに阻まれた。


「グランドテンペスト!!」


 私も「風」の上級魔法を放った。

 強力な真空の嵐が封印獣を襲ったけどまったくの無傷だった。


「まだよ! 烈風鳳仙花(れっぷうほうせんか)!!」


 さらに私は「風」属性を纏った奥義を放った。

 枚散る花びらのような烈風が封印獣を襲う。


「――――――ッ!!!」


 私の奥義を受けても封印獣は無傷だった。

 やはり当時と同じだわ。

 封印獣リュベネイタルには()()()()()()()()()()通用しない。



 物理攻撃も魔法攻撃も問わず、どんな攻撃でも。

 勇者の聖剣も聖女の魔法もコイツには無力だった。

 しかも今のコイツは取り込んだ魔人のスキルまで自身の力にしているみたい。

 当時よりも厄介かもしれないわ。


「――――――ッッ!!!」


 封印獣が無数の魔力の塊を放ってきた。

 数が多い上に一発一発の威力が大きすぎる。


「くぅっ······」


 避け切れずに何発か直撃を受けたわ······。

 死ぬ程じゃないけどこれ以上受けるのは危険ね。

 ゲンライは魔力の塊を避けながら封印獣に反撃した。


「ぬぅおおおーーっ!!!」


 さらにゲンライは(幻獣化)を使用した。

 ゲンライの身体が一回り大きくなり肉体も黒く硬質化した体毛に覆われる。


 黒鉄の獅子王。それがゲンライの異名。

 幻獣人族を束ねるのに相応しい姿と強さを持つ。


「――――――ッ!!!」

「そんなものが今の儂に通用するものかぁっ!!」


 封印獣の攻撃を強引に弾いてゲンライが攻撃を仕掛けた。

 今のゲンライは通常攻撃でもとんでもない威力を繰り出せるけど、さらに闘気(オーラ)で身体能力を高めている。

 そんなゲンライの連続攻撃を封印獣に浴びせた。


「ぐはぁっ······!?」


 (幻獣化)したゲンライの攻撃ですら封印獣には通用しなかった。

 封印獣の反撃を受けてゲンライが地に叩きつけられる。


「ゲンライ!?」

「「「(おさ)っ!!!」」」


 私が駆け寄る前に護衛達がゲンライの前に立った。

 魔人との戦いで負傷してるのに無茶するんじゃないわよ。


「ば、馬鹿者! お前達の敵う相手ではないと言ったはずだ」

「たとえ敵わずとも長とフウゲツ様だけにすべてを任せるわけにはいきませぬ!」


 ゲンライがそう言うけど護衛達は首を横に振った。

 死を覚悟した目で封印獣を見ている。

 その忠義心は立派だけど相手が悪いわよ······。


「―――――――ッ」


 ······!? まずいわ! 封印獣が両腕にとてつもない魔力を集めている。

 とても全員を守り切れない魔力量だわ。


「―――――――ッッ!!!!!」


 私が動く間もなく封印獣が集めた魔力を解き放った。

 とても防ぎ切れない。

 ()()()()()()()()を最大にまでしなくては······。



――――――――!!!!!



 そう思ったのだけど封印獣の放った攻撃は私達に届くことなく消滅した。

 何が起きたの?


「······助けにきた。お爺ちゃん、フウゲツお姉ちゃん」

「今のは危なかったでござるな」


 目の前にいたのはスミレちゃんとシノブちゃんだった。

 二人が今のを防いだの?


「わわっ······何あの魔物······!?」

「里を襲っていたのとは比べものにならない魔物ですね」


 エイミちゃんとミールちゃんも姿を見せた。

 その後ろからユヅキも現れた。


「わ、悪い······長、フウゲツ姐さん。スミレ達が言っても聞かなくて」


 ユヅキがそう言い訳した。

 まったく、ここは神樹の神域なのだけど。

 まあそんなことを言ってられる状況じゃないわね。



 こうなったら全員で力を合わせてこの危機を乗り越えましょう。






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