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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第四章 スミレの故郷 幻獣人族の里
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206 長の激昂

「お爺ちゃん、今までお世話になりました。ボクは外の世界で生きていくからどうかお元気で」


 アイラ姉に促されてスミレが里の長にそう言った。

 ユヅキの方を見るとその言葉を聞いて頭を抱えていた。

 ユヅキはスミレが里に戻る意思はないことを知っていたはずだが、長に報告はしなかったのかな?


 長はしばらく呆然としていたが、ハッとして表情を戻した。


「ち、ちょっと待てスミレよ! それはどういう意味だ!?」

「······今言った通り。ボクは外で暮らす、もう里には戻らない」


 スミレの言葉が予想外すぎたようで長が明らかに動揺している。


「外の世界が気に入った、こことは違って色々な刺激がある。食べ物も美味しい。それにアイラやシノブ、それにご主人様のような人達とも出会えた」

「ご主人様······だと?」


 スミレの言葉を聞いて長の視線がオレの方に向いた。······なんかヤバそうな展開なんだが。


「シノブは友達。アイラは保護者。ミールとエイミは仲間。レイはボクのご主人様」


 スミレが淡々と言う。

 横でアイラ姉が「私は保護者というわけではないのだが」とつぶやいていた。


「······どういうことだ? まさかスミレを奴隷のように扱って······」


 長の血管がピクピク浮き上がっている。

 まずい、なんか誤解されてる。

 長だけでなく周りの護衛役の人達まで怒りの表情だ。


「そう、ボクはご主人様の奴隷。たっぷり尽くして身体も捧げる」


 いや、スミレ······身体は捧げてないだろう?

 まあここでは表現できないことはされたことあるけど。今の発言がトドメになったようだ。



「そうか、貴様が······貴様がスミレを誑かしたのかぁぁーーっ!!!」


 長が怒りが爆発したようだ。

 鼓膜が破れるかと思うくらいの声をあげた。


「ちょっと落ち着いて、事情の説明を······」


 オレはそう言ったが遅かったようだ。


「者ども! 出合え出合えっ!! この不届き者に天誅を下せえぃっ!!!」


 周りの護衛役の人達まで動き出した。

 武器こそ抜いてないけど取り囲まれ今にもオレを殺しそうな雰囲気だ。


 アイラ姉は呆れたように傍観し、シノブも苦笑いをしている。

 ············助けてくれないのかな?


 エイミとミールもどうするべきか悩んでいるようだ。



「ご主人様への手出しは許さない······」


 スミレがオレを庇う位置に立った。

 こういう場合オレはどうしたらいいんだ?


「そうか、スミレを奴隷の契約で縛って操っておるのだな······そちらのエルフの娘達にも奴隷契約の気配がある。貴様がすべての元凶かぁぁっ!!!」


 確かにエイミとミールは正式に奴隷から解放されたわけじゃないけど、そんなことがわかるのか?

 いや、今はそんなことを考えている場合じゃないな。完全に誤解されてしまっている。


 というか長のさっきまでの厳格で落ち着いた雰囲気が完全に吹き飛んでしまった。

 明らかに頭に血が上って冷静な判断が出来なくなっている。

 長にとってスミレはそれだけ大事だということかな?


「多少手荒になっても構わぬ! その男を捕らえろぉっ!!」


 長の指示で周囲の護衛達が攻撃を仕掛けてきた。

 しかしスミレが一人で護衛達の攻撃を受け止めた。


「スミレ様······」

「長、スミレ様相手では······」


 護衛の人達はスミレを攻撃していいのか戸惑っているようだ。


「ええいっ、構わぬ! スミレを抑え正気に戻すのだ!」


 長に言われて護衛達がスミレを抑えようと動く。


「ボクは正気············正気を失ってるのはお爺ちゃんの方」


 確かにそうだけどスミレが原因だからな?

 護衛の人達はレベル150~200が10人。

 かなりの強さだけどスミレの敵ではない。

 スミレは武器を使わず素手で護衛達を倒していった。


「なんと······!? スミレ、いつの間にそれほどの力を」

「ご主人様とアイラ達に鍛えられたから。今のボクはお爺ちゃんにも負けない」


 スミレ一人で護衛達を全員倒した。

 もちろん殺してはいない。

 気を失うか、悶絶して動けなくなっている。

 それを見て長が驚きの表情をうかべていた。


「儂に勝てるとは大きく出たなスミレよ。よかろう、久しぶりに相手をしてやろうではないか!」


 長が上着を脱いで上半身裸になった。

 改めてお爺さんとは思えない筋肉だな。

 スミレも構えた。お互い本気のようだ。

 というか屋敷の中で本気で闘う気か?


「なんだか大変なことになりましたね、レイさん」

「だ、大丈夫かな······スミレちゃん」


 ミールとエイミが言う。


「スミレ殿なら大丈夫だと思うでござるが······むしろ長殿が心配でござる」


 シノブもミール達のようにどうするべきかわからない感じだ。


「レイ、お前が見境ないからこういうことになるのだ。今後は自重すべきだぞ」


 アイラ姉がため息をつきながらそう言った。

 これってオレが悪いのだろうか?

 反論しづらいが納得できないんだが。


「長もスミレも手加減知らずだからな。離れてた方がいいぞ?」


 ユヅキも止めることはせずに傍観を決め込むようだ。レベル的にはスミレの方が上だが······大丈夫だろうか?



 ヤバそうだったら止めるべきかな。






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