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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第二章 始まりの町アルネージュでの出来事
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24 オークの軍勢の後始末

 セーラとリンはレベルアップの反動でしばらく動けそうにない。

 無理に動かずここで休んだ方がいいだろう。

 それよりもボスのオークガイアは倒したが残ったオークも問題だ。



 ほとんどのオークはオークガイアの死を悟ったのか、散りぢりに逃げていっている。

 しかしまだ数体のグレートオークが残っており、まだ戦闘が行われているようだ。

 ここまでやったんだし最後までやるか。


「アイラ姉、まだグレートオークと戦っている人がいるから助けに行って来るよ」

「待てレイ、ならば私も行こう」


 一人で行くつもりだったんだがアイラ姉も来ることになった。


「じゃあシノブ、セーラとリンを守っててあげて」

「承知したでござる、お任せあれでござるよ」


 セーラとリンをこのままにするのは心配だが、シノブがいれば大丈夫だろう。

 さっそくオレとアイラ姉は戦いの場に向かう。


 見た感じオーク達はオークガイアの死に混乱しているらしく、まともに動けていない。

 しかしグレートオークはまだ戦えるようだ。


 だが問題無い。

 残りのグレートオークを倒していく。


 あと3体か。どうやら王国騎士隊と戦闘中のようだ。数十人の騎士達がグレートオーク3体に囲まれピンチだ。


「ぐ、グランサイクロン!!」


 魔術師っぽい人が「風」の中級魔法で攻撃する。

 しかしその程度ではグレートオークは倒せない。

 そのまま魔術師に向けて斧を振り下ろす。


「きゃあああっ!?」

「させないよっ!!」


 オレは魔術師の前に立ち、斧を受け止める。

 今気付いたがこの魔術師よく見たら女性だった。

 オレと同じくらいの年っぽい可愛い子だ。

 まあそんなことはいい。

 オレはオリハルコンの剣でグレートオークを両断する。


「す、すごいですー······」

「大丈夫?」

「は、はいっ······あ、ありがとうございますっ」


 腰が抜けたのか立てないようだ。

 オレは手を差し伸べた。

 女性魔術師の顔が赤いのは怖かったからだろうか。


「はあっ!!」

「グモオオーーッ!?」


 アイラ姉がもう1体のグレートオークを倒した。

 他のオーク達はすでに逃げ出したようだ。

 残るあと1体は······。



「隊長······!?」


 騎士達の悲痛の叫びが響く。

 騎士、おそらく隊長だと思われる人物が血溜まりに倒れていた。

 すぐ近くにグレートオークの死体がある。

 オレとアイラ姉が倒したものではない。

 この騎士隊長が倒したのだろう。

 相討ちだったようだ。


「お兄様っ!!?」


 さっき助けた女性魔術師が駆け寄る。

 どうやらこの騎士隊長の妹のようだ。

 しかし騎士隊長はもう············。


「······残念ですが、もう息がありません······」

「そんなっ、ウソです! お兄様っ!!?」


 ······犠牲者が出てしまったか。

 セーラが配った守りの石を持っていたはずだが万全ではなかったか。

 守りの石といえどグレートオークの攻撃を完全には防げなかったか······。


 自重したのはまずかったか?

 もっと効果を高めるべきだっただろうか。

 戦死者が出るのは仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、この女性魔術師の泣き顔を見るとなんとも言えない気持ちになる。


「······まだ間に合う」


 そんな中、アイラ姉が動いた。

 周囲の騎士達を押しのけ、騎士隊長の体に触れる。

 アイラ姉は「聖」属性の回復魔法を使っている。

 しかし、身体の傷は治せてもすでに死んでしまっていたら······。

 いや、そうか!


死者蘇生(リザレクト·ソウル)!!」


 アイラ姉が魔法を使う。そして騎士隊長に口づけで魔力を送った。

 「聖」属性の最上級魔法の死者蘇生だ。

 ファンタジー世界において最高の魔法だろう。


 だがこの魔法、万能ではなく欠点が多い。

 まず魔力消耗が激しい。

 そして死んで一時間以内でなければ効果はない。

 一時間以内であっても成功率が極めて低い。

 さらに同じ人間に二度は使えない。


 つまり一度限りの賭けだ。

 成功してくれればいいが······。


「かはっ······!!」


 騎士隊長が息を吹き返した。

 よかった成功した!

 蘇生すればもう安心だ。身体はすでに癒してある。


「ま、まさか······」「奇跡だ······」「隊長が生き返ったぞ!」


 騎士達から驚きと喜びの声があがる。


「······あ、貴女は······」


 騎士隊長が目覚め、口を開く。

 よく見たら結構若い人だ。

 二十代前半くらいだろうか? そして美形だ。

 少女漫画とかに出てきそうな騎士だな。

 もっと年配の騎士もいるのに、この若さで隊長になるとは、かなりの実力者なんだろう。

 相討ちだったとはいえグレートオークを倒しているからな。



「まだしゃべらない方がいい。ゆっくり休むが良い」

「······っ」


 アイラ姉が優しく言うと騎士隊長は再び意識を失った。死んだわけじゃない。

 ただ眠っただけだ。血を流し過ぎたんだろう。

 身体は治っても失った血はすぐには戻らない。


「お兄様!!!」

「大丈夫だ、安静にさせておくのだ。数日休めば元気になるだろう」


 アイラ姉が女性魔術師に言う。


「あの、ありがとうございますっ!!」


 女性魔術師の泣き顔が嬉しそうな笑顔に変わった。よかった。

 やっぱりあんな重い雰囲気は苦手だしね。

 しかしヤバイな。ずいぶん目立ってしまった。

 他の騎士達もオレ達にどう声をかけるか迷っている感じだ。



 うん、逃げよう。

 これ以上ここにいる必要はないだろう。


 アイラ姉も死者蘇生魔法を使ってかなり消耗しているはずだしね。


「では私達はこれで失礼する」

「え、あのっ······」


 言うが早いかオレとアイラ姉はその場から去った。



 オーク数万の軍勢との戦いはこれで終結した。

 この未曾有の大危機をアルネージュの町の人々は負傷者こそたくさん出したが一人の死者を出すこともなく乗り切った。




 オレ達はまだ知らなかった。

 オレ達は目立たずにいるつもりだった。

 しかし、この戦いでの活躍をアルネージュの町の領主、果ては王都にいる国王にまで知られてしまうことを。



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― 新着の感想 ―
[良い点] アイラ姉さん、かっこいい! 奥義とかなんかすごく好き❤ しゃべり方も優しいところも全部好きです! 今のところダントツですね。 ちなみに二番目はリンです。かっこかわいい…。 [気になる点] …
2021/11/18 15:23 さっちゃん
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