201 突然の乱入者(※)
※(注)変態男が登場します。
(エイミside)
レイ君達が作った作物のおかげで、クラントールの町の人達に笑顔が戻っていた。
改めてレイ君達の凄さを感じたよ。
いくらレベルが高くてもわたしじゃこんなこと出来ないよ。
ただ、やっぱり色んな人に注目されてたみたいで位の高い貴族の人がここを狙ってるみたい。
レイ君やアイラさん達を力ずくでどうにか出来るとは思わないけど、本当に大丈夫なのかな?
「レイさん、ワタシと姉さんは少し出掛けてきますね」
「え、わたしも? ミールどこに行くの?」
「いいからついてきて下さい姉さん」
ようやく食糧を配り終えて落ち着いてきたと思ったらミールがそんなことを言い出した。
訳もわからずにわたしはミールに連れられて外に出た。
どうやらミールはさっきの貴族が何かしてくるんじゃないかと気になって様子を見に行くらしい。
それはいいけどどうしてわたしも?
なんか囮に丁度良いとか言いかけたけど······。
「おーーっほっほっほっ!! こんな所にノコノコいるとは好都合ですわね」
そんなふうにミールと町の中を歩いていたらさっきの貴族の令嬢が現れた。
一人じゃなく後ろに怖い顔の男の人が何人かいる。
「ワタシ達に何か用ですか?」
まったく動じた様子もなくミールが貴族の令嬢に問いかけた。
男の人達のレベルは10~20くらい。
わたし達の方がレベルは高いんだけどやっぱりこういう人達は怖い······。
どうやらこの貴族の令嬢さん、さっき無理矢理追い払われたのが我慢ならなかったみたい。
男の人達を差し向けてわたし達に仕返しするつもりだった。
男の人達がわたしとミールを取り囲む。
「ミ、ミール······」
「心配いりませんよ姉さん。むしろ好都合じゃないですか。これなら手荒な反撃をしても問題ないでしょうから」
ミールは寧ろこうなることを望んでいたみたい。
静かに魔力を集中させてる。
「お嬢様の命令だ。悪いが少し痛い目を見てもらうぜ」
「へへっ、今の内に泣いて謝った方がいいぜ」
男の人達がわたし達に掴みかかる。
「アイスボム」
ミールが「氷」の魔法を放った。
小さな氷の塊がいくつか現れて男の人達の目の前で破裂した。
男の人達はいきなりの攻撃に驚いていた。
「て、てめえ······俺達とやる気か!」
「先に手を出したのはそっちじゃないですか」
ミールが周囲に凍てつく冷気を放つ。
男の人達はミールの異様な魔力にたじろいでいた。
「何をしていますの!? 数人がかりで何を怖じ気づいていますの!」
令嬢さんに言われて男の人達が再びミールを取り囲んだ。わたしは相手にされてないみたい。
男の人達は剣やナイフを取り出して構えた。
「町中で武器を抜くなんて正気ですか?」
「へへっ、安心しろよ······殺しはしないからよ」
「魔法の腕は立つみたいだな。少しばかし手荒にさせてもらうぜ」
武器を突きつけられてもミールは動揺していない。
ミールはさっきよりもさらに魔力を集中させてる。
············い、いくら乱暴な人達でも殺しちゃ不味いよミール?
「そこまでです!」
ミールが魔法を放とうとしたけど、寸前で誰かの声が響いた。
誰だろう? 町の衛兵の人達かな?
突如現れた人物が目にも止まらぬ速さでミールを取り囲んでいた男の人達の武器を叩き落とした。
「大丈夫でしたか? お嬢さん」
「ふぇっ······!?」
現れた人物が振り向きわたしに声をかけてきた。
わたしの知っている人だった。
「正義の仮面さん、ですか?」
ミールが言う。
そう、現れたのは黒いマスクで顔を隠して下着一枚の姿の正義の仮面を名乗る人だった。
え······ええっ!?
何でこの人がここにいるの!?
「な、なんだコイツは!?」
「イカれた格好してやがるぜ······」
男の人達も驚いている。
貴族の令嬢さんも同じみたい。
「な、な、何者ですの貴方は!? そんなはしたない格好をして······」
「私の名は正義の仮面。自分勝手に振る舞う貴女には少しばかりお仕置きが必要のようですな」
仮面の人の言葉に令嬢さんは一瞬ビクッとした反応をしたけどすぐに表情を引き締めた。
「へ、変質者の分際でわたくしをお仕置きするですって! 視界に入れるのも不愉快ですわ! あなた達、その男からやってしまいなさい!」
令嬢さんが男の人達に指示を出した。
今度は仮面の人が男の人達に取り囲まれた。
「女を痛めつけるのは乗り気じゃなかったんだがてめえなら問題ねえな」
「変質者として衛兵に突き出せば手柄になるんじゃねえか?」
武器も何も持っていない仮面の人が剣やナイフを持った人達に取り囲まれる。
普通なら仮面の人にとってまずい状況なんだろうけど、その仮面の人は冥王すらも倒したんだよね······。
「ね、ねえミール······なんであの仮面の人がここにいるの?」
「そんなことワタシが知るわけないじゃないですか」
ま、まあそうだよね······。
どうしよう、このまま黙って見てていいのかな?