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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第四章 スミレの故郷 幻獣人族の里
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198 クラントールの次期領主

「この屋敷の主人を出せ! この土地の作物は我々が管理する!」


 衛兵を引き連れた貴族っぽい男が偉そうな態度でそう言ってきた。

 見た目は美形の男だが、なんだか相手にするのが面倒そうな奴だ。

 アイラ姉もオレと同じことを思ったようで、うんざりした表情で前に出た。

 他のみんなは後ろで様子を見ている。



「主人というわけではないが、私がこの家の代表だが」

「ほう、他国の令嬢か? 女とはいえ教養はありそうだな」


 男がアイラ姉を見て言う。

 アイラ姉は美人だし他国の貴族だと思われても不思議じゃないかな。


「まあいい、今言ったようにこの土地の作物は我々が管理する。この町にはこの町のルールがある」


 どんなルールだよ?

 一方的に作物を奪おうとしてるだけにしか見えないぞ。


「断る。ここにある作物は私が()()()育てているものだ。個人の趣味をとやかく言えるルールなどないはずだろう?」


 アイラ姉が言う。

 ここにある作物は商業ギルドに卸したりして売っているわけではない。

 あくまでも()()()()育てているだけだ。


「これだけの規模で行っているものがただの趣味だと? そんな言い訳が通用すると思っているのか?」

「言い訳もなにも事実なんだがな」


 アイラ姉が肩をすくめて言った。

 実際趣味みたいなものだし嘘を言っているわけではない。


「そもそもお前は何者だ? なんの権限があってそんなことを言っているのだ?」


 アイラ姉の問いに男が嘲笑うような表情をする。


「そうか、他国から来たばかりで俺のことを知らないのだったな。俺はノーマス=フォーサイハン。

このクラントールの次期領主だ」


 男がそう名乗った。

 次期領主······つまり現領主の息子ってことか?

 息子がこれなら親も似たような性格なんだろうな。


「フム、次期領主殿か。私はアイラ。他国から来たのはその通りだが貴族ではなく平民だ」

「身分を隠すか。家名を知られたくないようだな」


 コイツ、アイラ姉が平民だと信じてないぞ。

 まあ勘違いしてるならそれはそれでいいか。


「だが気の強そうな所がいいな。俺の(めかけ)にしてやろうか? 不自由のない生活を保証してやるぞ」


 おお、貴族のどら息子が言いそうな定番のセリフだな。

 顔は美形だし乗ってくる女性もいるかもしれない。だがアイラ姉がそんな言葉に乗るはずもない。


「断る。そして最初に言ったようにこの土地の作物は私の趣味で育てているものだ。口出しされる謂れはない」


 アイラ姉はこれ以上相手をする気はないようだ。


「ではでは、他の人達の邪魔になるですますからお引き取りくださいですです」

「アイラ様やマスター様はお忙しいのでこれ以上はご遠慮ください」


 ディリーとアトリが間に入って男にそう言った。


「メイドの分際で俺の邪魔をする気か。俺は貴様らのような······」

「えいっ! ですです」


 不機嫌そうに男がディリーに掴みかかったが、ディリーの反撃を受けて組み伏せられてしまった。


「ノーマス様!?」

「貴様っ、何を!」


 それを見て取り巻きの衛兵達が剣を抜きディリーを囲んだ。

 コイツらよく見たら先日絡んできた奴らじゃないか。


「敵対行為と見なしました。マスター様達の害となる者は排除いたします」


 アトリが素早く当て身で二人を気絶させた。

 残った奴らもディリーに叩きのめされた。

 一応殺さないように指示してあるので衛兵達は死んでいない。


「バ、バカな!? コイツらは女にやられる程弱くはないはずだぞ!?」


 ノーマスが焦った口調で言う。

 確かにディリーとアトリは可愛らしいメイドさんの姿だがレベル100を超えるスライムの魔物だ。

 むしろ並みの男じゃ歯が立たないぞ。


「さあ、貴方も静かになってもらうですです」

「ま、待て······俺が誰だかわかっているのか!? 俺に手を出せば············」

「そんなの知らないですです。マスターの敵はたとえ魔王や冥王でもディリーは許さないですです!」

「わたしも同意見です。さあマスター様の敵は溶かしましょう」


 見た目は可愛らしい二人だが今は威圧感が半端ない。ノーマスは腰が引けている。

 というかアトリ、さすがに溶かしちゃ駄目だぞ。



 二人が他の衛兵同様にノーマスを当て身で気絶させた。


「マスター、アイラ様。この人達どうするですます?」

「ウム、邪魔にならない所に放り出しておいてくれ」


 アイラ姉の指示でディリーとアトリが男達を引きずりながら連れていった。



「ねえ、レイ君······大丈夫なのかな? さっきの人達······貴族、それも領主様の関係者なんだよね?」


 一部始終を黙って見ていたエイミが心配そうに言う。


「大丈夫でしょう姉さん。たとえ貴族を傷つけた犯罪者として指名手配されたとしても、ワタシ達はこの国を出ていけばいいだけなんですから」


 ミールが冷静に言った。

 まあミールの言う通りだな。

 この国には来たばかりだし愛着があるわけでもない。最悪転移魔法で逃げればいいことだ。

 もちろん、進んで犯罪行為をするつもりはないが。



「くかかっ、ディリーとアトリもあっぱれな働きぶりじゃったのう」


 エンジェもたいして気にしていないな。

 シノブとスミレも気にせず、騒いでいる周りの人達に心配ないと声をかけていた。



 とはいえユヅキが戻ってきて、幻獣人族の里での用が済んだらさっさと帰った方がよさそうだな。






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