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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第四章 スミレの故郷 幻獣人族の里
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195 クラントールの実情

 冒険者ギルドを後にしたオレ達は、クラントールの町を色々と回っていた。

 しかしこの町、全体的に活気がない。

 下手したら食糧難だった頃の、アルネージュの第三地区よりも酷いかもしれない。



 邪気に冒された気配はないが、目に映る町の住人達は、かなり痩せこけている印象だ。

 高い税がかかるため、外からの商人の出入りも少なく、食糧は自給自足分で補っているようだ。


「あまり良い土ではないでござるな」


 シノブが言うように作物を育てるには、あまり適した土ではないようだな。

 少し見て回ったが自給自足しているといっても、良い出来とは言えない。


「税を取ろうにも、これではろくに払えないのではないでしょうか?」


 ミールが言う。

 だから冒険者ギルドにまで税をかけてきたのかな?

 この町の領主は無能な人物の可能性が出てきたな。




 商店通りも閑散としていた。

 一応、開いている店もあるが、客の姿もほとんどない。


「どんなに売ったって税で取られちまうからな。皆、他の町に行っちまったよ」


 土産物を売っている店が開いていたので、店主に話を聞いてみた。

 ここ最近、税が値上がりしたらしい。


「そうか、情報感謝する。ここにある物を全部買おう」


 情報のお礼として、アイラ姉が金貨を数枚渡して店に並んでいた商品をすべて買い上げた。

 正直、あまり品質の良い物ではなかったが、情報料代わりとしてならいいかな。

 金貨を渡された店主は驚きの表情でアイラ姉を見ていた。



「············お腹空いた」


 スミレのお腹から可愛らしい音が鳴った。

 そろそろ昼時だな。

 けど、この町には定食屋などは見当たらない。

 まあ、あったとしても、この様子じゃ閉まっていただろうけど。



 仕方無いので公園のような広場があったので、そこで昼食をとることにした。

 アイテムボックスに入っている食べ物を取り出し、全員に渡す。



「ユヅキさんが戻ってくるまでどうしますか? この町、あまり見て回る所がないようですが」


 昼食中の雑談がてらにミールが言う。

 確かに観光出来るような町じゃないな。

 けど、ユヅキがいつ戻ってくるかもわからないんだよな。


「そうじゃのう。見て楽しい町ではないかの」


 エンジェも同意見みたいだな。

 王都のように色々と見て回れる場所があればいいんだけど、そういう雰囲気じゃないからな。


「ねえ、レイ君。周りに······」


 エイミが小声で言う。

 まあ、オレも気付いていたんだけど······。



 周囲にはオレ達の食べ物を物欲しそうに見ている子供がたくさん集まっていた。

 みんな痩せ細り、お腹を空かせていそうだ。

 アイテムボックスの中には食糧は大量に入っているので、分けてあげてもいいんだけど。

 オレはアイラ姉と目を合わせた。


「中途半端な施しは、状況をより悪化させる可能性もある。一時の同情で、軽はずみな真似は感心しないぞ」


 アイラ姉が以前にも言っていたことだな。


「とはいえ、明らかに飢え死にしそうな者達を見殺しにするのは論外だ。レイ、シノブもありったけの食糧を出してやれ」


 アイラ姉もお腹を空かせている子供達を見殺しにする気はないようだ。

 言われた通り、オレとシノブはアイテムボックスにある食糧を取り出す。


 アイテムボックスはほぼ無限に収納でき、時間経過が無いため調理済みの料理も入っている。

 突然、目の前に大量の料理が出てきたことで、周囲の子供達が驚いている。


「······おいしそう」「······っ」

「食べたい······」


 警戒心よりも食欲の方が優先されているようだ。

 ゴクリと唾を飲んで見ている。


「欲しいのならば順番に並ぶがよい。全員に行き渡るくらい余裕であるぞ」


 アイラ姉が周囲の子供達に言う。

 その言葉に子供達がザワザワと騒ぐ。


「い、いいの······?」「でもぼく達お金ない······」


 お腹が空いていても、理性的な考えを持てているようだ。


「金など取る気はない。遠慮する必要はないぞ」


 アイラ姉の言葉に我慢出来なくなったようで、子供達が殺到した。

 オレとシノブだけでなく全員で順番に子供達に食べ物を渡していった。



 食事を受け取った子供達は、我先にと食べ出した。

 よほどお腹を空かせていたようだ。

 同じ勢いでスミレも食べているが、そこは気にしないでおこう。




 最終的には子供達の様子を見に来た、保護者の大人も加わり、広場はちょっとしたパーティー会場のようになってしまった。

 子供も大人も関係無く空腹だったようだな。



 初めは警戒していた大人達も、食欲には勝てなかったようで、オレ達に礼を言って子供達と食べている。

 涙ながらに食べている子もいた。

 まあ、それぞれが楽しみながら食事をしているので、オレとしてもうれしい限りだ。




「これは何の騒ぎだ!?」


 そこに水を差すように数人の男が現れた。

 服装からして町の衛兵だろうか?



 ······やれやれ。

 こっちは問題を起こす気はないのに、なんだかイヤな予感がするな。






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