193 クラントールの冒険者ギルドにて
エンジェの転移魔法でオレ達はクラントールという別の国の町にたどり着いた。
「ああ、冒険者か? まあいいや、さっさと入れや」
町の入り口には見張りの門番がいたけど、どう見てもやる気なさそうにしている。
たいしたチェックもせずにオレ達を通してくれた。
············大丈夫なのか、この町?
入って町の中を見回したが、あまり活気のある町じゃないな。
アルネージュや王都とは大違いだ
「おれは一度里に戻って長に知らせてくる。すぐに戻るからそれまではこの町にいてくれ」
ユヅキがそう言って抜け出して行った。
まあいきなりこの人数で里に押し掛けるわけにはいかないか。
さて、それまでどうしようかな?
「とりあえずは冒険者ギルドに行ってみるとしよう。情報を得るにはそこがいいだろう」
アイラ姉の言葉にみんなが頷いた。
国が違ってもギルドカードは共通で使えるはずだ。初めての町だがMAPで確認すれば、どこに何があるのかは大体わかる。
町の入り口からそう遠くない場所に冒険者ギルドの建物があった。
う~ん、王都やアルネージュの建物に比べたら見劣りする気がする。
中に入ると意外と活気づいている。
結構多くの冒険者の姿があった。
30~40代くらいの年配の人が多い印象かな?
若い人が少ないせいかオレ達が入ると注目された。
なんとなく居心地が悪いが構うことなく貼り出されている依頼などを確認した。
討伐系の依頼が多いな。
魔物だけでなく盗賊や犯罪者とかの物が目立つ。
王都やアルネージュのギルドにもそういった依頼がないわけではないが数が多い気がする。
······やはりこの辺りは治安が悪いようだな。
「ここは子供の来る所じゃないぜ? それとも依頼者か?」
冒険者の一人がオレ達に声をかけてきた。
王都やアルネージュと違い、ここではオレ達を知る人はいない。
「私達はれっきとした冒険者だ。この町は初めてなのでな、依頼を確認していたのだ」
アイラ姉が言う。
その言葉を聞いて周りの冒険者達が笑いだした。
「子供だけのお遊戯パーティーか? ここは子供がこなせるような雑用みたいな依頼はほとんど来ないぜ」
まあ確かにこの人達から見ればオレ達は子供だな。
特にシノブやスミレ、エンジェは本当に子供にしか見えないしな。
しかし雑用みたいな依頼はほとんど来ない?
王都やアルネージュでは結構な数があったんだが。
若い人が少ないからそう依頼は来ても誰も受けないからかな?
「確かに討伐依頼ばかりですね。かなりの数が残ってますけど皆さんは受けないんですか?」
ミールが依頼書を見ながら言う。
年配の冒険者相手にまったく怯んでいない。
エイミは少し腰が引けているが。
「くかかっ、確かに昼間から酒をあおって依頼を受ける雰囲気じゃないのう。ここは冒険者ギルドではなく酒場の酔っぱらいの集まりだったか?」
エンジェが周りの冒険者を挑発するように言う。
確かにエンジェの言うように酒場にしか見えないな。······建物は間違えてないはずだ。
「なんだと!? 子供のくせに生意気な口をきいてくれるじゃねえか!」
冒険者の何人かがエンジェの言葉に激昂している。
エンジェは多分あんたらより遥かに年上だと思うよ。
「やめろエンジェ、ミールもだ。私達は問題を起こしに来たのではない」
アイラ姉がそう言うが遅かったようだ。
何人かの冒険者が下品な笑いをうかべながら近付いてきた。
「ちょっとばかし教育が必要みたいだな? 新人は俺らベテランを敬わないとな」
ベテランねえ······。
この場にいる冒険者のレベルは10~30くらいだ。
弱いわけではないが別に強くもない。
「私達は新人ではない。ランクはBだ」
アイラ姉がギルドカードを見せた。
オレ達はすでに全員冒険者ランクBまで上がっている。それを見て冒険者達は驚きの表情をうかべた。
「て、てめえらみたいなガキがランクBだと!? ウソついてんじゃねえよ!」
冒険者の一人がアイラ姉に掴みかかろうとした。
アイラ姉は慣れた手付きで冒険者をねじ伏せた。
[アイラ] レベル920
〈体力〉229000/229000
〈力〉116000〈敏捷〉127500〈魔力〉76390
〈スキル〉
(全状態異常無効)(アイテム錬成)(暴食)
(獲得経験値20倍)(同時詠唱)(強化再生)
(連携)(分身)(限界突破)
(聖剣術〈レベル9〉)(各種言語習得)
(異世界の絆〈2/5〉)
これが今のアイラ姉のステータスだ。
とてもレベル10~30では相手にもならない。
ちなみに(異世界の絆)スキルのカウントが増えているのはリイネさんとの絆だ。
何をしたのかは知らないがリイネさんの加護がいつの間にか正式なものになっていたからな。
「暴力にはこちらも相応の対応をさせてもらうぞ?」
アイラ姉が冒険者を押さえつけながら言う。
他の冒険者は少し怯んだ様子を見せたが、すぐに怒りの表情に変わった。
「ガキに舐められてたまるか! 全員でやっちまえ!」
周囲の冒険者がアイラ姉を取り囲む。
アイラ姉なら一人で大丈夫だと思うがさすがに黙ってはいられないな。
「血の気の多い方ばかりですね」
「······雑魚ばっか。叩きのめす」
ミールとスミレもオレと一緒に前に出てきた。
シノブやエンジェも冒険者を止めようと動いた。
エイミはあわあわしながらも一緒に動いていた。
結局全員でギルド内の冒険者を叩きのめすことになってしまった。
まさか今頃になってこんなテンプレな展開があるとは思わなかったな。