188 変態VS作物泥棒(※)
※(注)変態男が登場します。
作物泥棒をしていた自称男のおれっ娘をエアリィのいる自宅まで連行した。
往生際悪く逃げようとするので魔法で拘束したままだ。
自分では男だと言っていたが本当に男なのだろうか? 確かに胸は無いがシノブとかと変わらないし断定できない。
「アンタが最近の作物泥棒なノヨ? キリキリ白状するノヨ!」
エアリィが尋問するが迫力がない。
おれっ娘はムスッとした表情で黙っている。
(幻獣化)のスキルを持っていたので、スミレの知り合いの可能性がある。
スミレは結構遠くまで見回りに行ったようでまだ帰ってくる様子はない。
「むっき~っ! 泥棒のくせにふてぶてしい奴なノヨ!」
エアリィも最初は人のことを言えないくらい図々しい態度だったと思ったが。
だがそれよりも何も話さないんじゃ文字通り話にならないな。
「スミレ殿の知り合いでござるか?」
「······っ!?」
シノブも鑑定魔法でこの子のステータスを見てスキルに気付いたようだ。
スミレの名前が出たらおれっ娘の表情が驚きに変わった。
やはり知り合いのようだな。
「なんでスミレを知っ············さてはお前らがスミレを拐ったんだな!?」
驚きの表情から怒りの表情に変わってしまった。
どうやら誤解しているようだ。
「スミレをどこへやった! う、おーーっ!!」
おれっ娘は力任せに魔法の拘束を破ろうとする。
ん? 両腕が変化している。
人間の皮膚から黒い別の生物のような皮膚に変わっていく。
もしかして(幻獣化)スキルか?
部分的に肉体を変化させているようだ。
両腕から発せられる力は凄まじく、オレの魔法の拘束を破ってしまった。
「うひゃあっ!? レイ、シノブ! 何とかするノヨ!」
エアリィが慌ててオレとシノブの後ろに隠れた。
シノブが素早くおれっ娘を押さえる。
「おとなしくするでござるよ! 話を聞くでござる」
「くっそーっ! 本当になんなんだよお前らは!? なんでそんな強いんだよ! だったらおれも本気でやるからな!」
シノブに押さえつけられながらもおれっ娘が抵抗する。無理矢理魔力を解き放ってきた。
周囲の家具が吹っ飛び部屋の中が酷い惨状になる。
オレ達の家は頑丈な素材で建てているのでそう簡単には壊れないが······本当に話を聞かない子だな。
どう説得しようか考えていた時、オレは手に例のモノを掴んでいた。
(エアリィside)
レイとシノブが作物泥棒を捕まえてきたけど、コイツ人の話を全然聞かないノヨ!
どうやらコイツは人族じゃない別種族みたいでレイ達を警戒しているみたいだけど。
でもこの超絶可愛らしいエアリィ様まで無視するとは何事なノヨ!
スミレの名前を出したら強引に暴れ出し、無理矢理魔力を解放して周りの家具を吹き飛ばした。
家の中で魔力を解放するなんて何考えてるノヨ!
シノブの手が少し緩んだ隙を突いて拘束から脱出した。
「スミレをどこへやった! お前らが拐ったんだろ!?」
「少し落ち着くでござるよ、スミレ殿は······」
「言わないなら叩きのめしてやるぞっ!」
本当に人の話を聞かない奴なノヨ!
シノブが宥めようとしてるけど聞く耳持ってないみたい。
また魔力を集中させてるノヨ!?
シノブ、もういいからこっちが叩きのめしちゃうノヨ!
「待ちなさい、ここは私に任せてください」
「······へ? きゃああああっ!!??」
横を見たら以前現れた変態男がいたノヨ!?
黒いマスクで顔を隠し、身体は下着一枚。
なんでウチの中にこの男がいるノヨ!?
シノブも驚いて振り向き、レイは······あれ?
レイがいないノヨ?
まさかこの変態男はレイ?
いや、そんなわけないノヨ。
さっきの魔力を解放した衝撃で部屋の外まで飛ばされただけなノヨ、きっと。
「な、なんだよお前は!? 変態な格好しやがって」
作物泥棒も驚いているノヨ。
アタシも以前この男に恐ろしい目に合わせられたから正直怖いノヨ。
「私の名は正義の仮面。作物泥棒という己の罪を認めないばかりかさらに暴れようとは、私のお仕置きで反省するのです」
お、お仕置き······ひぃいいっ!?
以前のことを思い出しちゃったノヨ!?
「あの、ししょ······正義の仮面殿?」
「ここは私に任せて下がってください」
変態男に言われてシノブが下がってきたノヨ。
もうここはあの男に任せてみるノヨ。
「おれを甘く見てると痛い目見るぞ! くらえっ!」
作物泥棒が変態男に攻撃を仕掛けたノヨ。
コイツ、腕が別の生物みたいに変化していてすごい力を感じる······。
まともに受ければヤバいノヨ!?
「ふんっ!」
変態男はいとも簡単に受け止めたノヨ!?
そして一瞬でさっきレイがやってたみたいに魔法で拘束しちゃったノヨ。
「くそーっ!? こんなのすぐに破って············な、なんだよコレ!? 全然びくともしないぞっ!?」
レイの拘束よりも強力みたいなノヨ。
作物泥棒は必死に力を込めてるけどまるで破れないノヨ。
「さあおとなしく己の罪を認めて反省しなさい」
動けない作物泥棒に男はゆっくり近付いていく············ひぃいいっ、何をするつもりなノヨ?
「ひっ!? な、なにするつもりだよ!? ち、近付いて来るな!?」
作物泥棒が怯えた声を出すけど拘束されて逃げることができないノヨ。
男は構わずある部分を作物泥棒に突き出したノヨ。
「や、やめろよ!? 本当になにするつもりだよ!? そ、そんなモノを近付けるなっ!!」
アタシは直視出来ずに目を逸らしたノヨ。
「ぎゃああああっ!!!???」
しばらくして作物泥棒の悲鳴が響いたノヨ······。
以前のことを思い出してアタシも震え上がっちゃったノヨ。
「さあ、この者のお仕置きは終わりました。これで少しは反省したことでしょう」
ひぃいいっ!? 男がこっちに来たノヨ!
作物泥棒は白目を剥いて気を失ってるみたいなノヨ············哀れなノヨ。
「どうもでござる、正義の仮面殿」
「では私はこれで、さらば!」
シノブ······よくその男と普通に話せるノヨ。
男はそのまま部屋を出て去っていったノヨ。
一体あの男は何者なノヨ?
少し時間を置いたら作物泥棒が意識を取り戻したノヨ。けどすっかり怯えきっちゃってさっきとは別の意味で話にならないノヨ。
「あの、大丈夫でござるか?」
「ひぃっ!? ごめんなさい! 食べ物を盗んだのは謝るから許してくれぇっ!?」
シノブが話しかけてもこの通り。
あの男の言う通り反省はしているみたいだけど······。
どうしようかと思ってたら入口の扉が開いたノヨ。
「ただいま、スミレを連れてきたよ」
入ってきたのはレイだったノヨ。
横にスミレの姿もあるノヨ。
いなくなったと思ってたらスミレを迎えに行ってたみたいなノヨ。
スミレは作物泥棒を見て怪訝な表情をうかべたノヨ。
「······ス、スミレか?」
「············何してるのユヅキ?」
どうやら二人は知り合いだったみたいなノヨ。