187 作物泥棒捕獲
ノギナの工房を後にしたオレとシノブは、エアリィのいる自宅に戻ることにした。
エアリィはアルネージュの町の住人と仲良くやれているし、特に大きな問題が起きてる様子はないから心配はないだろう。
「食料泥棒?」
そう思って自宅に戻ったらエアリィからそんな話を聞かされた。
果実や作物を盗っていく奴が現れているらしい。
「そーなノヨ! 頑張って育てた作物盗むなんて許せないノヨ!」
エアリィは興奮気味にそう言うが、お前ももともとは作物泥棒をしていなかったか?
まあ今はマジメに働いているが。
「しかし作物には盗難防止用の魔法を付与していたはずでござるが?」
シノブが言う。
確かにオレ達や管理をしている者以外が無断で作物を取ろうとしたら麻痺状態になるようにシノブが魔法付与をしていたはずだ。
殺傷能力はないが麻痺状態になったらしばらくは自力で動くことは出来なくなる。
「防犯魔法は発動してるみたいだけど効果ないノヨ」
どうやら問題の作物泥棒には効果ないみたいだ。
ある程度高レベルの者や耐性持ちなら麻痺にも耐えられるかもしれない。
だが、そんな奴が作物泥棒なんてセコイことするかな?
「一体どんな奴が?」
「気がついたら盗まれてたから誰も姿を見ていないノヨ」
どんな奴かはわからないか。
町の中だし魔物とかは考えにくいな。
盗まれるといっても大した量じゃないみたいだし深刻な被害というわけでもない。
まあだからと言って放っておくわけにもいかないが。
先にこっちに来て話を聞いたスミレはすでに作物泥棒捕獲のために動いているらしい。
食べ物のことになったら行動的だな。
スミレのレベルは400を超えている。
作物泥棒相手に遅れは取らないと思うが············。
むしろやりすぎないか心配だな。
「仕方ない、オレ達も動くか」
「承知でござる、師匠」
オレとシノブも作物泥棒捕獲に動くことにした。
聞き込みとついでに作物の様子も見たいしな。
果樹園や畑はエアリィ主導の下、第三地区の住人に管理を任せている。
見た感じ、みんな真面目に働いているしトラブルもなさそうだ。
作物泥棒が出ているといっても荒らされているわけではないみたいだな。
素直に名乗り出れば作物くらい分けてあげるのに。
数日おきくらいに現れるらしく、もうそろそろ現れてもおかしくない頃合いらしい。
探知魔法を使って警戒しておくか。
············ん? 早速反応があったぞ。
畑の方に不自然な位置に何者かの反応がある。
「師匠」
「ああ、行ってみるか」
シノブも気付いたようだ。
オレ達は反応のある場所まで向かった。
「············」
遠目から畑の作物を掘り起こそうとしている人影が見えた。
丁度周りから死角になっている位置だな。
「何者でござるか!」
「············!?」
シノブの言葉に反応して人影がその場から逃げ出そうと動く。
逃がすか!
オレは後ろに回り込み退路を塞いだ。
「······っ!」
曲者は強引にオレを押し退けて逃げようとしたが、オレはしっかりと身体を拘束して捕らえた。
「く、くそっ······!? 離せ、離せよ!」
暴れようと踠くがオレは離さない。
麻痺攻撃は効かないようなのでオレは魔法で動けないように曲者を拘束した。
「拍子抜けするくらいあっさり見つかったでござるな」
確かに。タイミングがよかったのか悪かったのか。
まあまだこの人物が例の作物泥棒だと決まったわけじゃないが。
だが状況から考えて作物を盗もうとしていたのは間違いない。
髪が長く、目付きが少々鋭い女の子だ。
顔立ちから年齢は14~16くらいだろうか。
服装はシノブが普段着にしているような忍装束のような格好だ。
泥棒している割には身なりは良い。
「くそっ! なんだよコレ!? おれの力でも抜け出せないなんてっ」
作物泥棒はオレの魔法の拘束から必死に抜け出そうとするがびくともしない。
それにしてもおれっ娘か?
可愛らしい見た目なのに言葉遣いが乱暴だな。
[ユヅキ] レベル110
〈体力〉5200/5200
〈力〉2020〈敏捷〉2100〈魔力〉1200
〈スキル〉
(幻獣化)(身体強化〈大〉)(気配察知)
(気配遮断)(状態異常耐性〈大〉)
鑑定魔法でステータスを見てみたらかなりの強さだった。
レベル100を超えている。
スキルも結構強力だが気になるのがある。
(幻獣化)············スミレの持つスキルと同じだ。
ということはこの子は幻獣人族か?
なんで幻獣人族が作物泥棒なんてやってるんだ。
「くっそーっ! びくともしないぞコレ!? なんなんだよお前らは!?」
まだ抜け出そうと頑張っていた。
往生際が悪いな。
「とりあえずおとなしくしてくれないかな? それに女の子ならもう少し言葉遣いを······」
オレがそう言うと表情を変えて睨んできた。
「ふざっけんなーーっ!! おれは男だっ!!!」
そして力の限りそう叫んだ。
おれっ娘ではなく男の娘だったのか?