184 ラッキーハプニングとアンラッキーハプニング
学園の入浴施設でのんびり湯に浸かっていたら、ミールとルナシェアが乱入してきた。
エイミは決心がつかずに置いてきたとか言っているが。
この世界の女の子は大胆過ぎやしないかな?
それともミール達が特別なだけだろうか?
漫画やアニメなどでも異性の入浴中に乱入するという話はあるけど大抵は男が女湯に、とかじゃないだろうか。
まあそれはそれとして、ルナシェアがオレに確かめたいことがあると言って身体をじっくり見てきたと思ったら、手合わせで使った剣技の質問をしてきた。
(聖剣術)を覚えたら普通に使える剣技ではなく、ルナシェアの家に伝わる秘伝の奥義だったらしい。
······道理で魔力の込め方が特殊だと思ったよ。
見よう見まねで覚えたと誤魔化そうにもルナシェアはオレの前では使ったことはない。
使ったのは正義の仮面に対してだ。
············どうやらルナシェアはオレと正義の仮面が
同一人物ではと疑っているようだ。
ヤバい、どうやって誤魔化そう?
「実はワタシがレイさんに話したんですよ、ルナシェアさん。あの時仮面の男に対してルナシェアさんの放った剣技についてレイさんと色々話しましたから」
ミールが助け船を出してくれた。
実際はそんな話をした覚えはない。
正体がバレないようにミールがフォローしてくれている。
確かにあの時の現場にミールがいたから不自然ではない············かな?
「は、話しに聞いただけであの奥義を覚えたでありますか?」
少し、いや······かなり苦しかったか?
だがそう誤魔化すしかない。
ミールには正体を知られているがこれ以上広めたくはないからな。
ルナシェアも正体を確信しているわけではなく、違和感を感じているだけみたいだし。
ここを誤魔化せばなんとかなるはず。
「············では単刀直入に聞くであります。レイ殿はあの仮面の男の正体をご存知でありますか?」
本当に単刀直入に聞いてきたな。
「いや、知らないけど······」
「本当でありますか······?」
そう答えるしかない。
ルナシェアはまだ納得いっていないのか、疑惑の目で迫ってきた。
「あの仮面の男の身体とレイ殿の身体、とてもよく似ているであります」
「まあ、オレは特別な身体つきをしているわけじゃないと思うし」
「し、下の方はどうなのでありましょうか······」
ルナシェアの視線がオレの下半身に向く。
······何をどう比べるつもりなんだルナシェア?
「もしかしてルナシェアさん、なんだかんだ理由をつけてレイさんのをもう一度したいんですか?」
「そ、そそそ、そんなことは······」
「前回はリンさんもいたため少ししか出来ませんでしたからね」
ミールの言葉にルナシェアが目をぐるぐるさせて混乱している。
なんか話の方向がおかしくなってきたな······。
「ルナシェアさんがやらないならワタシがやりますよ」
「ちょっ······待つでありますミール殿! や、やらないとは言ってないであります!」
何故することを前提に話が進んでいるのかな?
そりゃあ男としてはやってくれるのはうれしいんだけど······。
だけどこのまま流されるままにしてもらうのは何かまずい気がする。
二人が口論している内にオレはこっそり出口の扉に向かった。
「ああ!? レイ殿、逃げるのはズルいであります!」
ルナシェアが気付き声をあげた。
オレは素早く扉を開けて風呂場から出ようとしたが············。
「ひゃあっ!?」
「うわっ!?」
扉を開けた目の前にエイミがいた。
こっそり覗いていたのか、決心がついて中へ入ろうとしていたのかはわからないが。
避けきれずに勢いよくエイミとぶつかった。
咄嗟に倒れそうになったエイミの腕を掴んだが、そのまま一緒に倒れ込んでしまった。
―――――――ムニョンッ
オレの顔面に柔らかい感触が覆い被さった。
倒れ込む時にエイミを庇う体勢を取ったので、オレが床に転がりエイミが上に覆い被さる形となっていた。
この感触はどうやらエイミのふっくらとした胸のようだ。
ミールと違いクッション代わりになる大きさだ。
視界が開けるとエイミが羞恥の表情をうかべていた。バスタオルははだけてしまい、生まれたままの姿のエイミが見えた。
「ひぃやあーーっ!? み、見ないでレイく············
きゃっ!?」
慌てて立ち上がろうとしたエイミが足を滑らせて再び倒れ込んできた。
「はうっ!?」
思わずおかしな声をあげてしまった。
エイミは足を滑らせてオレの下半身部分に顔面から突っ込んできた。
「ふぇっ、何この感触············え?」
タオルを巻いていたおかげで直接触れてはいないけど、エイミの鼻先にオレの······が触れていた。
その事実を理解したエイミの表情がさらに羞恥に染まっていく。
「エ、エイミ殿······」
「姉さん、意外に大胆ですね······」
ルナシェアとミールが息を呑むように見ていた。
「ひ······ひぃやあーーっっっ!!!?」
エイミが大きな悲鳴をあげた後、糸が切れたように気を失ってしまった。
恥ずかしさが限界に達したようだ。
ルナシェアとミールが気絶したエイミを浴室の外まで運んだ。
エイミの犠牲(?)のおかげでルナシェアの疑惑はうやむやにすることができた。
ただ完全には納得いっていない様子だったからな······。
どうにかしないといずれバレる可能性があるな。