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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章④ 8 嫌な予感

少しバイオレンスな表現があります。

苦手な方はご注意ください。

(リーナside)


「ガアアアッ!!」


 戦う覚悟を決めたあたしに魔物が襲いかかってきた。

 魔物はドロドロに溶けたような見た目のアンデッドの竜だ。

 翼がないから地竜かな?

 こんな巨体だというのに動きが速い。


「もう一度······爆裂符!!」


 あたしは魔物に魔道具を投げつけた。

 爆裂符は魔物の身体に貼り付き、爆発するけどあんまり効果がないみたい。

 でも、そんなの想定内。


「本命はこっち! 痺れナイフ!」


 麻痺効果を付与してあるナイフを投げた。

 このナイフの麻痺効果は強力で、たとえ竜でも効果はあるはず。

 ドロドロの皮膚にナイフが突き刺さる。


「ウガアアッ!!」


 全然効果がない!?

 魔物は大きく口を開いて襲いかかってきた。


 動きが速すぎて反応できなかった。

 避けきれず、あたしの右腕に咬みつかれた。


「うっ!? ······あ、ああーーっ!!」


 叫び声をあげても魔物は離れない。

 魔物の鋭い牙が右腕に突き刺さる。


 い······痛い、痛い、痛い······っ!!

 血がにじみ服が真っ赤になっていく。


「グウルルルッ!!!」


 魔物がギチギチとあたしの右腕を喰い千切ろうとする。


「うっ······こ、このっ!!」


 咄嗟に魔物の顔面に爆裂符を貼り付けた。

 さすがに顔面への衝撃は効いたみたい。

 爆裂符の衝撃で魔物が口を放した。



――――――――ビチャッ


 雨で出来た地面の水溜まりに何かが落ちた。

 水溜まりは一瞬で真っ赤に染まっていった。


「······あ······ああっ······!!」


 あまりの激痛に声すらうまく出せない。

 水溜まりに落ちた物を見て自分の目が信じられない。


 ············あれは人の腕。あたしの右腕だ。

 あたしの右腕は肘の辺りから喰い千切られてしまった。


「う······うぐっ······う」


 痛みとショックで吐き気がしてきた。

 でもあたしは懸命に堪える。

 痛がってる場合じゃない。泣いてる場合でもない。考えてるヒマもない。

 千切られた腕の先からはすごい量の血が流れる。


「くぅっ······」


 魔物は倒れていない。

 顔面への爆裂符の衝撃もダメージはないみたい。

 なんとかコイツを倒さないと······。


「ガアアアッ!!!」


 あたしは確実に殺される。







(リーアside)


 本格的に雨が降りだしてきましたわ······。

 三年前と同じように。

 まだお姉様が帰ってくる様子はありません。

 先ほどの話でユウさん達も心配していますけど、三年前の時のようにはならないでしょう。


 考え無しのように見えますがお姉様は決して愚かではありません。

 同じ失敗は繰り返しませんわ。

 ············魔道具作り以外ではですけど。



 お姉様は完璧超人です。

 料理、洗濯など家事はもちろん身体能力も高く、さらには礼儀作法も完璧にこなします。


 普段の言動がああなのでそんな印象は受けないかもしれませんが、それも周りの人達にそう見えるようにあえてああやって振る舞っているだけだと思いますわ。

 ············わたしのために。


 わたしはお姉様とは逆に魔道具作り以外はまるでダメです。

 落ちこぼれと言われたわたしが唯一、人並み以上に出来たのが魔道具を作ることです。


 お姉様はそんなわたしに気を使ってわざと失敗しているのではないでしょうか?


 わたしはお姉様が大好きです。

 お姉様もわたしを好きでいてくれていると思いますわ。それは嬉しいのですけどお姉様はわたしのために自分を犠牲にしすぎている。


 わたしさえいなければお姉様は()()()()で上流階級の人間として恵まれた生活を送っていたはずです。

 わたしはもう両親にも前の生活にも未練はありません。


 でも······お姉様はどうなのでしょうか?



 わたしとお姉様はある国の貴族の令嬢として生まれました。

 しかし厳しい教育に耐えられず、落ちこぼれと罵られたわたしは家出を決意しました。


 一人で家を出るつもりだったのですがお姉様に見つかり連れ戻されそうになったのです。

 ですがわたしが頑なに拒むとお姉様まで一緒に家出すると言い出しました。


 その後、色々あって有名魔道具職人の親方に拾われ、こうして親方の店を引き継ぎました。

 家出をしたのはもう四年も前のことです。

 お姉様は家を出たことを後悔していないのでしょうか?


「すごい雨になってきたわね······」

「うん、お姉さんまだ帰ってこないね」


 窓の外を見てテリアさんとユウさんが言います。

 外は雨が激しさを増し、雷も鳴っています。

 三年前のあの日······お姉様が生死の境を彷徨った時、わたしは頭の中が真っ白になりました。


 無事にお姉様が意識を取り戻した時は本当に安堵しました。



 三年前と似たような状況ですわ。

 もうあんなことにはならない。

 そう言い聞かせても胸の中に不安がよぎります。


「リーアちゃんっ!!」


 そんな時、店の扉が勢いよく開きました。

 入ってきたのは常連客の男性冒険者の一人です。

 息を切らし、尋常じゃない様子です。

 よく見たら身体中傷だらけですわ。


「どうしたのですか? そんなに慌てまして······」


 嫌な予感がしますわ······。

 わたしは内心の想いを隠して普段通りの口調で問いました。


「た、大変なんだ! 見たことない魔物が現れて、リーナちゃんがそれを追って······」

「············え?」


 わたしの表情が凍り付きました。

 わたしの嫌な予感はよく当たるのです············。






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