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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章④ 7 リーナの無謀な行動

――――――――(side off)―――――――――


「生死の境を彷徨ったって······一体何があったのよ?」


 テリアがリーアに問う。


「······特別なことではありませんわ。以前にもお姉様が怒って飛び出していったことがあったのです。町の外まで出て、高い木の下で気分を落ち着けていたのでしょう。······その木に雷が落ちたのですわ」


 リーアの口調はいつも通りだが、心なしか少し震えているように聞こえる。


「じゃあリーナさんはその雷に······?」

「はい······直撃こそしませんでしたが木を伝ってお姉様はその雷を受けてしまいました。幸い、たまたま仕事帰りで通りかかった親方が見つけ、すぐに手当てされたので命は助かりましたが······それでも三日間は意識不明で生死の境を彷徨っていました」





――――――――(回想)―――――――――



「お姉様!?」

「あ······れ······? リアン······じゃなくて······リーア?」


 三日ぶりに目を覚まし、虚ろな表情のリーナ。

 そして姉の目覚めに心底喜ぶリーア。


「あ······そっか······あたし、雷に······」

「お姉様······よかった······本当に······」


 リーナにしがみつき涙を流すリーア。


「まったくこのバカヤロウが! 雷が鳴ってる時は木の下が一番危険なんだぞ!」


 その二人の後ろからガタイの良い男が叫んだ。


「ごめん······親方······あたしリーアとケンカしちゃってて」

「そんなことはいいからまだ寝てろ! 今度同じことがあったら本当に死んじまうぞ」


 口調は荒いが男はリーナを心配しているようだった。





――――――――(回想終了)―――――――――



「だ、大丈夫かしら······空が曇ってきたけど」


 今の話を聞いてテリアが不安そうに言う。

 外を見ると黒い雲がかかり、空は何やらゴロゴロ鳴っている。


「お姉様だって同じことを繰り返したりしませんわ。すぐに帰ってくると思いますわよ」


 リーアが言う。

 口ではそう言っているが窓の外を見て不安そうにしているように見えた。








(リーナside)


 リーアに怒って町の外まで飛び出したあたしの目に映ったのはボロボロになって倒れている冒険者だった。

 見覚えのある顔だ。

 あれはウチの常連の男性冒険者達だ。


「な、何があったの!?」


 すぐにあたしは駆け寄った。

 みんなあちこち怪我をしている。

 命にかかわるほどじゃないけど重傷だ。


「リーナちゃんか······? す、すぐに町に戻った方がいい! 見たことない強力な魔物が現れたんだ!」


 冒険者の一人が言う。

 この人達は四人組の男性冒険者のはずだけど、ここには三人しかいない。

 もう一人······スウォンの姿がない。


「スウォンは······? 一緒じゃないの?」

「スウォンは······あいつは俺達から魔物を遠ざけるために囮になって······」


 冒険者の話だとスウォンは囮になって魔物を惹き付けて行ったらしい。

 この人達はランクCの冒険者で腕は立つ。

 そんな人達でも見たことのないという強力な魔物を惹き付けるなんて無謀だよ!


「スウォンは······あっちに行ったんだね!?」


 聞くまでもなく魔物の足跡が残っていた。

 かなり大型の魔物みたい。

 あたしはジェットブーツを使って足跡を追った。


「よせ! リーナちゃんっ」


 そんな言葉が聞こえたけどあたしは構うことなく先に進んだ。

 魔物の足跡や破壊痕を頼りに進んでいく。

 すぐにスウォンと魔物の姿を見つけた。



 魔物は大型の············竜!?

 それも全身が溶けたようなアンデッドみたいな見た目だ。

 スウォンは魔物にやられる寸前だった。


「リ、リーナさん!?」

「このっ······爆裂符!!」


 あたしは魔道具の爆裂符を魔物に向けてばらまいた。魔物に貼り付いた爆裂符が次々と爆発していく。



〈爆裂符〉

魔力を込めると数秒後に破裂する攻撃用の魔道具。



 倒せはしなかったけど注意を惹くことには成功した。魔物がスウォンから離れる。


「リーナさん、ど、どうしてここに······?」


 スウォンは身体のあちこちを怪我している。

 結構深い傷もあるようで動くことも厳しそうだ。


「あたしのことはいいから! 話は聞いたよ、あんな魔物相手に無茶して······」

「グウウウ······」


 魔物があたしの方に目を向けた。

 鑑定できないくらい高レベルの魔物だ。

 まともに戦っても勝ち目はない。


「逃げるのだったら得意なんだから!」

「リーナさんっ!?」


 スウォンの心配する声が聞こえたけどあたしは構わず走り出した。

 狙い通り魔物はあたしを追ってきた。

 あたしはジェットブーツの出力を最大にする。


 これで少なくともスウォン達は安心だ。

 後はあたしが逃げ切ればいい。

 振り返って見ると、魔物が地を這うようにすごいスピードで迫ってきていた。


 ジェットブーツの出力を最大にしてるのに魔物のスピードはそれ以上だ。

 そしてついに追いつき············追い抜かれた。


「きゃああああっ!!?」


 魔物に追い抜かれた勢いでバランスを崩した。

 そのまま大きな木に激突した。


「いたた······っ······」


 衝撃を緩和してくれる魔道具のおかげでたいした怪我はない。

 かなり痛いけど······


「······っ!? そんな、ジェットブーツが······」


 今の衝撃でジェットブーツが壊れた。

 これじゃただのブーツと変わらない。


「グウウウッ······」


 魔物がゆっくりと近付いてくる。

 ジェットブーツが壊れたため、もう逃げ切るのは無理だ。

 あのスピードを考えたら壊れてなくても逃げ切れなかったかもしれないけど。


「うう······た、戦うしかないかな······」


 もう覚悟を決めるしかない。

 大丈夫······攻撃用の魔道具も結構持っている。

 本気を出せばこんな魔物倒せるはず······!


――――――ツ······ツツ······ザアアアアッ


 ついに雨が降りだした。

 雷も鳴り、かなりの土砂降りだ。


「グルルルッ······」


 魔物は雨に構うことなく唸っている。

 うう······怖い。

 でも怖がってる場合じゃない。



 リーアとケンカしたまま死んでたまるか!





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