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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章④ 6 リーナとリーア

もう少しだけ番外編が続きます。

本編再開はもう少しだけお待ちください。

――――――――(side off)―――――――――


 王都に来てからしばらく経ち、ユウ達は冒険者ギルドの依頼をこなすなどして生活していた。

 エレナは聖女としての活動の取り決めなどで忙しそうにしていた。

 ユウは堅苦しいのはイヤだと自由に動いているが。



 ユウ達は主に魔道具専門店〝トゥラヴィス〟の姉妹の依頼を受けていた。

 魔道具作りのための材料の調達や護衛などだ。

 そのため姉妹のリーナとリーアとはすっかり親しくなっていた。


「ふう、完成しましたわ」


 姉妹の妹、リーアが一息つく。

 今日は店はお休みで魔道具作りに専念しているようだ。


「新作の魔道具が出来たのー?」

「ええお姉様、これですわ」


 姉のリーナが言う。

 リーアが見せたのは黒のフレームに二つのレンズが付いた所謂何の変哲もない眼鏡だった。


「なんなのコレ? 普通の眼鏡に見えるけど」

「名付けて〝スケルトンスコープ〟ですわね。とりあえず着けて見てくれますか、お姉様」


 リーアに言われるままにリーナが眼鏡をかけた。

 意外に似合っている。


「スケルトンってもしかして人を見ると骨が見えちゃうとかそんな感じなの?」

「まずはわたしを見てもらえますか? お姉様」


 そう言われてリーナがリーアの全身を見る。


「······? 別になんともないよ。骨とか見えないし、これ度が入ってないでしょ? 眼鏡としても機能してないけど」


 リーナが首を傾げる。

 そこに店の手伝いをしていたテリアとミリィがやってきた。


「リーナさん、注文してたっていう魔道具の材料が届いたらしいんだけどどこに置いたらいいの?」

「あ、テリア、それなら奥の部屋······に······!?」


 リーナが振り向いて二人の姿を見た途端言葉が止まる。


「テ、テテテリア、ミリィ!? なんて格好してるのっ!?」


 取り乱したようにリーナが言う。


「······格好?」

「別に普通の格好ですけどぉ?」


 テリアとミリィは意味がわからず首を傾げた。

 二人の格好はいつも通りで何もおかしくはない。


「リ、リーア!? こ、これ······この眼鏡って」

「ええ、その通りですわお姉様。残念ながら骨までは見えませんが服くらいならバッチリ透けますわ」


 どうやら魔道具の効果でリーナには二人が裸に見えるらしい。


「で、でもリーアの服は透けてないよ!?」

「わたしの服はしっかり対策を施していますから」


 しれっと答えるリーアだった。


「売り出せば大ヒット間違いなしなんですけど、問題は販売の許可が下りるかですわね」

「下りるわけないよ! こんなのただの犯罪アイテムじゃん!?」

「だったら裏でこっそり売りましょうか?」

「そんなのバレたら営業停止になるよ!」


 漫才のようなやりとりをする姉妹だった。


「お姉さん、荷物どうするの?」


 さらにそこにユウもやってきた。

 リーナは慌ててユウの方から目を逸らした。

 さすがに年下でも男の子の裸を見るのは抵抗あるようだ。

 ······眼鏡を外せばいいだけなのだが。


「そそそ、そっちの奥の部屋に置いておいて······」

「······? 顔が真っ赤だけど大丈夫、お姉さん?」

「きゃっ······ユ、ユウ君! い、今はこっちに来ないでっ」


 恥ずかしさに耐えられなくなったようでリーナは慌てて部屋から出ようとする。

 しかしそこにさらに来客が登場する。


「おう、リーナちゃん。頼まれてた素材を持ってきたぜ」

「これもついでに持ってきたんだが」


 常連の男性冒険者グループだった。

 依頼していた素材を持ってきたようである。


「リーナさん、顔が赤いけど熱でもあるの?」


 リーナに好意を寄せている青年スウォンが心配そうに言う。

 だがリーナにはその言葉に応える余裕はない。

 リーナの視線には男性冒険者達の姿がバッチリ映っていた。



「きゃああああっ!!!???」


 リーナの悲鳴が響いた。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな感じに平和(?)なドタバタな日常を過ごして姉妹と交流を深めていた。

 ユウは魔道具作りに興味津々でリーアに色々と作り方を教わっていた。


 姉妹と交流していてわかったことだがリーナは魔道具作りは壊滅的······個性的だったが()()()()は完璧にこなす有能な人物だった。


 家事全般······掃除、洗濯はもちろん、料理の腕はプロ顔負けと言っていいほどだ。

 それに対してリーアは家事は苦手なようだ。

 あまりに酷いというわけではないが失敗が目立っていた。

 魔道具作りをしている時とは別人のようである。




「リーアのバカァッ!! もう知らないからね!」


 そんなふうに過ごしていたある日、リーナが大声をあげて店から飛び出していった。


「な、何があったの?」


 テリアが問う。

 リーナは何かに怒っているようだったが。


「······少し悪ふざけが過ぎたようですわ」


 どうやらリーアのからかいが原因のようだ。

 魔道具の実験台にしたりと色々と見てきたのでテリア達はすぐに納得した。


「けどあんなに怒るなんて珍しいですねぇ」


 ミリィが言う。

 確かに何度か酷い目に合って文句を言うことはあったが怒ることはなかった。

 まあはっきり言ってしまえば今まで怒らなかったのが不思議なくらいだったが。


「お姉様だって人間ですから虫の居所が悪い時もあるでしょう。それを見抜けなかったわたしが悪いのですわ」


 リーアが淡々と言う。


「まあその内帰ってくるでしょう。機嫌を取るためにお姉様の好きな果物でも用意しておきますわ」


 あまり気にしていないように見えたが内心では気にしているようだ。

 少し落ち着きがないように見える。


「リーア達ってケンカしたことはないの?」


 ユウが好奇心から聞いてみた。

 確かに二人がケンカする所はあまり想像できない。


「お姉様はああいう性格ですから憎しみ合ってのケンカなんてしたことありませんわ。ああやって怒るのも珍しいですわね」

「もしかしてお姉さんが怒ったのって今日が初めて?」


 ユウの言葉にリーアが一瞬黙る。

 しかしすぐに言葉を返した。


「三年くらい前に一度ありましたわ。その時も今日と同じような理由でしたわ······」

「その時はどうやって仲直りしたの?」

「仲直り······というよりもその後ケンカどころではなくなりましたから······」

「え、何があったの?」


 ユウが続けて問う。

 少し間をあけてリーアが答えた。


「······お姉様が生死の境を彷徨いました」










 その頃、店を飛び出したリーナは勢いのあまり王都の町の外まで来てしまっていた。


「はあ~······あたしなんであんなこと言っちゃったんだろ。こんなのあたしらしくないよね······」


 リーナがため息をついて言う。

 どうやら先ほどの自分の行動を少し後悔しているようだ。


「ちゃんと後で謝っておかないと············あたしは本気で怒ってないって」


 勢いで出てきただけでそこまでの怒りはないようだ。



――――――ゴロゴロゴロ······


 その時、空が低く唸った。


「ひゃあっ······か、雷? 一雨来そうだよー······」


 リーナが空を見上げて言う。

 空は黒い雲に覆われていた。


「そういえば三年くらい前にもリーアに怒ったことあったんだっけ······その時もこんなことがあったような······」


 リーナが何かを思い出し、身体を一瞬ブルッと震わせた。


「もうあんなことにはならないだろうけど気を付けないと······うん、今日の所はすぐに帰ろう!」


 そう言って引き返そうとしたリーナだが何かを見つけた。

 見つけてしまった。


「あれ? あれは······」






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