勇者(候補)ユウの冒険章④ 2 王都到着
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途中魔物に襲われていた女性、リーナを助けたユウ達だったがその後は特にトラブルも無く無事に王都に着くことができた。
リーナもユウ達と一緒に馬車に乗って付いて来ていた。
リーナ自身は恐縮していたがエレナの父親の許可ももらったので問題はない。
「ユ、ユウ君達って上級貴族様だったんだね······」
「貴族はエレナとおじさんでぼく達は違うよ」
ユウが笑いながら言った。
ユウとテリアも故郷のエイダスティアでは地位の高い家の出身なのだがわざわざそんなことを言う気はないようだ。
「キミはリーナと言ったね? キミのことをどこかで見た覚えがある気がするんだが············」
「い、いえいえ! 庶民のあたしが貴族様と顔を合わせたことなんてありませんよっ!?」
エレナの父親がリーナを見て言うが、リーナは全力で首を横に振った。
エレナの父親も気のせいだったとそれ以上追求はしなかった。
「ここまで送ってくれてありがとうございます! ユウ君達もありがとねー! 今度あたしの店に来てよー、お礼にたっぷりサービスするから☆」
そう言ってリーナと別れた。
そしてユウ達はエレナの実家があるという第一地区へと向かった。
たどり着いた屋敷は第一地区の建物の中でも一際立派なものだった。
「ここがエレエレの実家ですかぁ? ずいぶん大きな家ですねぇ」
「思ってたよりずっと大きな屋敷だわ············エレナってすごい大貴族だったのね」
ミリィとテリアが言う。
エイダスティアのユウとテリアの実家よりも大きな屋敷だ。
「ははっ、そんな大層なものじゃないさ。さ、遠慮なく入ってくれ」
エレナの父親が笑いながら言った。
馬車から降りてユウ達は屋敷に入っていった。
中では貴族の屋敷らしく何人ものメイドや執事が働いている。
「あなたお帰りなさい。エレナもお帰り。手紙を読んだけど本当に健康になったのよね? 一緒に暮らせるのよね? 抱きしめられるのよね? うれしいわ~!」
中に入るなり若々しい女性がエレナを強く抱きしめた。
この人がエレナの母親のようだ。
「マ、ママ······苦しいわよ······」
「あ、あら······ごめんなさいエレナ。うれしくてつい······」
苦し気な声を出して女性がエレナを放した。
「その子達がエレナの命の恩人なのね? ユウ君、テリアちゃん、ミリィちゃんね? ············あと一人は誰ちゃん?」
マティアを見て女性が首を傾げたのでエレナが改めてユウ達を紹介した。
「うふふ、歓迎するわよ。私はラクア。エレナのお母さんよ~、よろしくね」
エレナの母親、ラクアが笑顔で言った。
なかなかに軽い感じの人のようだ。
「優しそうで素敵なお母さんだね。それにすごく美人だし」
「あら、うれしいこと言ってくれるわねユウ君。あなた達からも色々話を聞きたいわ」
―――――――ぐうぅ~~~~っ
ユウとラクアが話している時に低い唸り声のような音が響いた。
マティアのお腹の音である。
「············おなかすいた······」
「あらあら、もうそんな時間だったわね。じゃあお食事しながら聞きましょうか」
ラクアの言うようにもう夕方を過ぎた時間帯だった。
燃費の悪いマティアはもう空腹のようだ。
すぐに夕飯が用意されユウ達は食事をしながら色々と話した。
「エレナが聖女様になったことにも驚いたけどユウ君まで勇者様なのね。うふふっ、勇者様に助けてもらえるなんてロマンチックね」
「ママ······私もユウもまだ候補だから······」
母親の言葉に恥ずかしそうにするエレナ。
「明日すぐにでも本殿に行って女神様の洗礼を受けるべき············と言いたいんだけど今は色々と忙しそうだししばらくは無理かもしれないわね」
「何かあったんですか?」
ラクアの言葉にテリアが問う。
「つい先日、王都の学園から魔物が大量発生したのよ。王国騎士団や神殿騎士団、聖女様まで総出で事件解決に動いていたらしいわ。今はまだその後始末に大忙しのはずよ」
「こんな町中で魔物が大量発生したんですかぁ?」
王都で魔物が大量発生と聞いてユウ達もさすがに驚いていた。
「原因調査のために学園は休校中だそうよ」
ラクアは王国軍の指示に従い避難していたから詳しいことは知らないらしい。
とんでもない事態が起きていたらしいが奇跡的に死傷者は出なかったそうだ。
食事を終えた後も色々と雑談しながらお互いのことを話していた。
その日ユウ達はエレナの屋敷に泊まることになった。