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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章④ 1 王都に向けて

番外編です。

――――――――(side off)―――――――――


 ユウ達は王都レイルゼードに向けてヴィーラルの町を発った。

 徒歩ではなくエレナの父親が用意した専用の馬車に乗っての出発だ。


 貴族専用の馬車のようだが、あまり装飾は施されていなく、一見普通の馬車に見える。

 だが乗り心地が良く、上等な素材で作られているようだ。


 馬車にはユウとテリアとミリィ、新たに加わった仲間のマティア。

 そしてエレナとエレナの父親が乗っている。


「王都ってどんな所だろう。楽しみだなー」


 ユウが楽しそうに言う。


「ヴィーラルと違って人がいっぱいいるわよ。私は人混みは苦手なのよね」


 エレナが簡単に王都の町並みについて話した。

 この国最大の都市なのでヴィーラルやアルネージュ、そして故郷のエイダスティアよりも広いようだ。


 楽しくお喋りをしながら、ユウ達を乗せて馬車は進む。エレナの父親は、そんなユウ達を微笑ましく見ていた。




「············zzz」


 マティアは景色を見るのに飽きたのか、馬車の壁に寄りかかり眠っていた。


「こうして見ると普通におとなしいコよね。あんな魔力を秘めてるとは思えないわ」

「そーですねぇ。ただの人族にしか見えませんねぇ」


 テリアとミリィが眠っているマティアを見て言う。

 当初はマティアを警戒していた二人だが、マティアのあまりの無防備ぶりに、警戒するのもバカらしくなってきているようだ。


「ユウ達が見つけたレーデの森にあった、謎の建物の中で眠っていたのよね?」

「うん、そうだよ。なんであそこにいたのか、覚えてないみたいだけどね」


 エレナにもマティアを仲間にした経緯を説明している。

 当時の魔王軍が建てた施設だったらしいが、マティアが跡形もなく吹き飛ばしてしまったため、もう証拠も手掛かりもないが。







「きゃああああっ!!!」


 平和に進んでいた所に突然叫び声が響いた。


「なにかな?」

「ユウ、あそこよ!」


 ユウが馬車の外を確認して、エレナが声の方向を指差す。

 そこには魔物に追われている女性の姿が見えた。


「だ、誰かっ······たーすーけーてぇーっ!!」


 女性はすごいスピードで魔物から逃げている。

 見たところ、ユウ達より、ほんの少し年上くらいの女性だ。


「きゃあっ!!?」


 女性が足元につまずき、豪快に転んだ。

 そして勢い余って、街道に生えていた大木に突っ込んだ。


「い、いたたっ······ジェットブーツの出力(エネルギー)が············」


 頭をさすりながら女性が言う。

 派手に突っ込んだが、たいした怪我もないようだ。


「グウウッ······」


 だが、そんなことをしている内に魔物に追い付かれた。岩でできた熊のような魔物だ。


「いやあっ!? あ、あたし食べても美味しくないよーっ!」


 女性はそう言うが、魔物がそんなこと聞くはずもない。


「ガアアアッ!!」

「きゃああーっ!!!」


 魔物が女性に襲いかかった。

 女性は悲鳴をあげて、頭を抑えながら座り込んだ。



―――――――――ドッ!!


「グアアッ!!?」

「············え?」


 襲いかかっていた魔物が突然吹っ飛んだ。

 何が起きたかわからず、女性はキョトンとしている。


「大丈夫?」


 ユウが馬車から降りて、女性を助けたのだ。


「気をつけて、ユウ! その魔物はロックグリズリーっていう、結構強力な魔物なのよ!」


 エレナが馬車から顔を出し言う。

 テリアとミリィも馬車から降りて、ユウの隣に立った。


「ガアアアッ!!」


 今のユウの不意打ちでは、たいしたダメージは与えられなかったようだ。

 魔物がユウ達に矛先を変えた。


「スピアシュート!」

「フレアブレイズですぅ!」


 テリアが魔法の矢を放ち、ミリィが「炎」魔法で攻撃する。

 魔物の岩のような皮膚がボロボロと崩れる。


「とどめだよ! ソード・インパク············」

「まって············ユウ······」


 魔物にとどめを刺そうとしたユウを、目を覚ましたらしいマティアが止めた。

 マティアは躊躇することなく、魔物に近付いていく。


「マティア、あぶないよ」

「だいじょうぶ······」


 ユウが止めようとするが、マティアが首を横に振る。


「グウウッ······!」


 魔物は近付いて来るマティアを、唸って威嚇している。だが、マティアはお構いなしだ。


「······こわくない······いかりをおさめて、かえりなさい······」

「クウウ············」


 マティアが軽く撫でると魔物はおとなしくなり、そのまま去っていった。


「ど、どうなったのよ?」


 テリアが問う。


「あのこは、すみかをあらされておこっていただけ············わるいのはそっち」


 マティアが女性を指差す。

 突然の事態に呆けている女性にユウ達が声をかけた。


「あ、ありがとうっ············キミ達、すっごく強いんだね!」


 助けられたことを理解した女性が、ユウ達にお礼を言う。


「なんでロックグリズリーになんて追われていたの? あの魔物は、今の時期は洞窟とかで冬眠してるはずだけど」

「あー······いやー············それはその······」


 エレナが女性に問う。

 女性がその問いに、しどろもどろになる。


「魔道具作りにどうしても必要だったから、魔鉱石を取りに洞窟に入ったんだけど、ずいぶん久しぶりに入ったら、そこが魔物の巣になってたみたいで············あたし驚いて、持ってた魔道具を手当たり次第投げたら、もうズズーンッの、バリリリィッの、ドドーンってなって······」


 女性が大袈裟なジェスチャーで説明する。

 要約すると、女性は魔物を追い払おうとしたが、逆に怒らせてしまい、追われていたようだ。


「魔道具作りに必要って、魔道具が作れるの?」


 ユウが女性の言う、魔道具という言葉に反応した。


「そう! 何を隠そう、あたしは王都で有名な魔道具専門店〝トゥラヴィス〟の天才魔道具職人姉妹の姉、リーナなんだから! よろしくね☆」


 女性、リーナがウインクして笑顔でそう言った。



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