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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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閑話⑥ ディリーとアトリ

今回は単発です。

冥王と戦う前の話になります。

「マスター! 起きるですです!」

「起床の時間です、マスター様」


 活発な声と冷静な声が聞こえて意識が覚醒する。

 重い瞼を開けようとしたところで············。



―――――――ドンッ


 お腹の辺りに強い衝撃が走った。


「お目覚めですます? マスター!」


 目を開けると黒髪セミロングのメイドさんと目が合った。

 まぶしいくらいの笑顔だ。

 どうやらこの子がオレの身体にダイブしてきたらしい。


「おはよう、とりあえずどいてくれないかな?

ディリー」


 重くはないんだが寝起きにこの衝撃は少しキツい。



「ディリー、マスター様を困らすようならば溶かしますよ?」


 それを見ていた茶髪ロングヘアーのメイドさんが目を尖らせて言う。


「わかりましたですですアトリ。マスター、ごめんなさいですです」


 すぐに謝ってオレの上からどいてくれた。

 まあ別に怒ってはいないんだけど。



 二人のメイドさん、黒髪セミロングはディリー、茶髪ロングヘアーはアトリという名だ。

 名付けたのはオレだけど。


 今日は二人がオレを起こしに来たようだ。

 エイミとミールはとっくに起きたようで部屋に姿はない。


 ディリーとアトリは可愛らしいメイド服を着た少女の姿だがエンジェとグラムと同じくダンジョンコアから召喚した魔物である。



[ディリー] レベル195

〈体力〉31200/31200

〈力〉3800〈敏捷〉2690〈魔力〉3360


〈スキル〉

(物理耐性〈中〉)(魔法耐性〈中〉)

(形状変化)(擬態)(自己再生)

(騎士の剣術〈レベル7〉)(発声)



[アトリ] レベル171

〈体力〉24800/24800

〈力〉2680〈敏捷〉1990〈魔力〉3020


〈スキル〉

(物理耐性〈大〉)(魔法耐性〈中〉)

(自己再生)(分裂)(強酸)(発声)

(形状変化)




 ガー()()アンジェ()()のディリーと

ジャイ()()()ーのアトリだ。

 以前遺跡の迷宮で戦ったエンジェの眷属のスライム騎士とビッグスライムだ。


 メイドさんの姿だとスライムだとはとても思えない。二人とも(発声)スキルを手に入れて日が浅いため、特にディリーは言葉遣いが少しおかしい。


「マスターと初めてお会いした衝撃は今でも忘れられませんですます! ビビビッとシビレたですです!」

「わたしもマスター様直々のあの熱い衝撃は忘れられません」


 初めて(発声)スキルを得た時に二人はそんなことを言っていた。

 確かにガーディアンジェリーは「雷」で倒し、ジャイアントゼリーは「炎」で倒した記憶はあるが。


 二人の中ではかなり美化されているようだ。




「さあマスター、お着替え手伝いしますですます!」


 ディリーが躊躇することなくオレの寝間着を脱がしていく。

 いや、手伝わなくていい。


「ずるいですよディリー、わたしもお手伝い致しますマスター様」


 アトリまで加わってきた。


「ふ、二人とも······着替えは自分でやるから······」

「遠慮することないですです。ディリーにお任せあれ。エンジェ様とグラム様にちゃんと教わったですです」

「はい、お任せください、マスター様」


 一体どんなことを教わったんだ!?

 ちょっと待って、下まで脱がさなくていいから!


「レイ君、そろそろ起き············」


 最悪のタイミングで先に起きていたエイミが部屋に戻ってきた。

 後ろにはミールの姿もある。


「ひぃやああーーっ!!?」


 ()()()()()()()()()オレを見てエイミが真っ赤になって悲鳴をあげた。


「おや······レイさん、朝から元気ですね」


 ミールが少し顔を赤らめながらそんなことを言った。

 ············()()()()元気なんだよ。






 ディリーとアトリは基本的に二人一緒に行動している。

 活発で猪突猛進的なディリーに冷静沈着なアトリと相性はいいようだ。


 普段は学園内の雑用をこなしていて、一般生徒や教師達にも顔を覚えられている。


「おっはようごさいますです!」

「おはようございます、皆さま」


 ディリーが元気よく、アトリが丁寧にペコリと登校中の生徒に挨拶している。


「ディリーちゃんの笑顔には癒されるよな」

「アトリさんの冷たい眼差しも結構いいかも······」


 特に男子生徒に人気があるようだ。

 ちなみにディリーとアトリがスライムの魔物であることは学園関係者ならみんな知っている。


 だがそのことを悪く思う者はいないようだ。

 というより中には魔物だと信じていない様子の人もいるくらいだ。

 まあオレも本当にスライムなのかと思うからな。

 気持ちは理解できる。


 他にも何人ものメイドさんが働いているが二人のように(発声)スキルで喋れる者は少ない。

 名を与えたのも今の所この二人だけだ。


 どうも名を得ることは大変名誉なことだとかで、エンジェに他の者に無闇に与えないように言われている。

 名を与えた時の二人の喜び様は相当なものだった。


 ············元の名を略しただけなので罪悪感を感じる。






 この日は朝の出来事はともかくとして、特に問題も無く一日を終えることができそうだ。

 オレは学園内の入浴施設で一日の疲れを癒す。

 出来るだけ人の少ない時間帯を狙ったが、それでも利用している生徒が何人かいる。


 まあそれだけここを気に入ってくれてるってことだよな。

 建てた身としては嬉しい限りだ。

 そう考えながらのんびり湯船に浸かっていたら······。


「マスター! お背中流しますですです!」

「マスター様、わたしもお手伝いします」


 ディリーとアトリが浴室に入ってきた。

 二人ともメイド服を脱ぎ、バスタオルを巻いただけの格好だ。


 ちなみにディリーの胸は標準サイズくらいでアトリは少し大きめだ。


 浴室にいた男子生徒は突然の二人の乱入に驚いている。というかオレも驚いているが······。


「二人とも、こっちは男湯だよ」


 といっても二人はスライムであり正確には性別はないんだったな。

 とはいえ今は見た目は少女の姿だ。

 (形状変化)のスキルは身体の細部まで再現出来るらしく、つまりは人間の女性と何ら変わりはない。


 だがこの二人は······エンジェとグラムもだが羞恥心がまるでない。


「エンジェ様から教わったですです! マスターへのご奉仕はメイドの基本ですます!」

「わたし達にご奉仕させてください、マスター様」


 本当に何を教えたんだエンジェ!?

 また先代勇者の知識か!?

 浴室内の男子生徒達から嫉妬のような視線を感じる。


 いや、確かにメイドさんにご奉仕されるって男としては心くすぐるシチュエーションだが······。


「さあマスター! 遠慮することないですです! ご奉仕するですます!」

「いえディリー、まずはわたしからマスター様にご奉仕します」


 二人が強引にオレを湯船から出そうと腕を引っ張る。

 って二人とも!? バスタオルがずれてる!

 色々と見えそうになってるから!



 二人を制止しようとしたが行動がどんどんエスカレートしていくだけだった。

 かなりの騒ぎになり()()()を冒す一歩手前までいきそうになったが、たまたま隣の女湯で入浴中だったアイラ姉が騒ぎを聞きつけ事なきを得た。



 ディリーとアトリ、ついでにオレもアイラ姉にたっぷりお説教を受けることになった。



 二人の教育についてはエンジェとグラムとよく話し合う必要がありそうだ。






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