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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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176 冥王の真の力

 学園の校舎が消滅し、地面をすり抜けるように冥王が姿を現した。

 全身から邪気が溢れそうな異様な雰囲気だ。



[アジュカンダス] 鑑定不能

(神眼)の効果が打ち消されました。



 駄目だ。やはり鑑定出来なくなっている。

 おそらくレベル1000を超えているだろう。

 さっきまでよりも威圧感が増している。


「あ、あれが冥王············ですか?」


 リンが冥王の姿を見て震えている。

 セーラやアルケミア、騎士達など冥王を初めて見る人達はみんな恐怖した表情だ。


「皆、下がっていろ! まともに戦って勝てる相手ではない!」


 アイラ姉が大声で叫んでみんなの恐怖を取り除く。

 シノブもアイラ姉の隣に立った。

 他の迷宮攻略組のメンバーもそれぞれ構えた。


「「「悪しき邪気を祓え·············」」」


 恐怖を振り払いセーラ、アルケミア、ルナシェア、三人の聖女が冥王の邪気を祓おうと集中する。


「この気配は······聖女か。だがその程度の女神の加護しか受けていないのでは聖女といえど我が力を抑えることなど出来ぬ」


 三人の放った「聖」なる力も冥王にはまったく効果がない。

 冥王クラスになると聖女()()では力不足なのか。


「やはり(ぬし)が関わっておったかアジュカンダス。

冥王自ら人の領域に出向くとはらしくないことをしておるのう?」


 金髪ゴスロリ少女の姿のエンジェが冥王に言う。

 長い年月を生きる古代種のエンジェは冥王と顔見知りなのか?


「その気配は············エンシェントジェリーか? 人族の真似事とは相変わらず酔狂な奴だ」


 冥王もエンジェを見て反応した。


「今はエンジェという名を受けたマスターの従僕じゃ」

「貴様が人族の軍門に下ったのか? 珍しいこともあるものだな。ただ強いだけの相手には決して屈しないお前が」

「ワシのことはよい。それよりも主ほどの者が人の領域にわざわざ来て何が目的じゃ?」


 エンジェが冥王に問う。


「我が神が必要としているものを集めている。今は我が神の大事な時期······」


 必要としているものとは邪気のことだろう。

 大事な時期ってどういうことだ?


「エンシェントジェリー、お前がこの場にいることは考えようによっては都合がいい。

陰魔の杯が壊れた今、この地を苗床にする必要がある。大量の生気と魔力をすぐにでも集めなくてはならないからな」


 冥王の全身から魔力が放たれた。


生命力吸収(ライフドレイン)


 これは············スキルを使ったのか。

 エンジェだけでなくこの場の全員から生命力を吸収しようとしている。



〈(生命力吸収)の効果を抵抗(レジスト)しました〉


 オレやアイラ姉、シノブは冥王のスキルを無効化できたが他の人達は奴に生命力を吸収されていた。

 生命力を吸収されたといっても寿命を奪われたとかではなく〈体力〉を奪われたようだ。


「くっ······」


 リイネさん達が苦し気な声をあげる。

 迷宮攻略組やセーラ、アルケミアなど加護スキルを持っている人達はなんとか耐えているが、それ以外の人達は立つこともできないくらい体力を奪われていた。

 アイラ姉とシノブが倒れた人達を介抱している。


「ここは人の領域じゃ。冥界の神がどういう状況なのかは知らぬが好き勝手はさせぬぞ」


 エンジェやグラム率いるメイド姿の眷属達も冥王のスキルを耐えたようだ。

 エンジェ達も臨戦態勢に入った。


「たとえ冥王といえどマスターの敵となるのならば排除します!」


 グラムの指示でメイド姿の眷属達が冥王を取り囲む。まずい、いくらグラム達でも冥王は相手が悪すぎる。


「我の邪魔をするのならば誰であろうと容赦はせぬ」


 冥王が武器の大鎌を振るい、メイドさん達を切り刻んでいく。

 メイドさん達も武器を手にそれぞれ立ち向かうが次々と冥王に返り討ちに合っていく。


「フレアバースト!」


 エンジェも魔法で冥王に攻撃するが容易くかき消されてしまう。

 このまま黙って見てられないな。

 オレは聖剣を手に前に出た。


「エンジェ、グラム、下がれ! そいつは勝てる相手じゃない」


 冥王の大鎌を弾いた。

 冥王は一歩下がりオレから距離を取る。


 ほとんどのメイドさん達がバラバラに切り裂かれてしまっていた。

 メイドさん達はエンジェ達の眷属のスライムとゴーレムだからダンジョンコアに戻せば回復するが·············あまりいい気分じゃないな。


「先ほどのようにはいかぬぞ、人族よ」


 冥王が大鎌で攻撃してきた。

 目で追うのがやっとの凄まじいスピードだ。

 その上、一撃一撃が重すぎる。



「マスター! マスターはディリーが守るですです!」

「マスター様には指一本触れさせませんっ!」


 オレを援護するように二人のメイドさんが間に割って入ってきた。

 セミロングの黒髪メイドのディリーとロングヘアーの茶髪メイドのアトリだ。


 二人はエンジェやグラムのように名を与えたメイドさんだ。

 まあエンジェ達のように元の名前を略しただけだが。

 二人ともレベル100を超える強さだが冥王の相手はとても無理だ!


「邪魔だ」


 冥王が大鎌で二人をなぎ払った。

 ディリーとアトリの胴体が両断される。


「そんなの効かないですです!」

「冥王、覚悟!」


 泣き別れた胴体が元通りにくっつき冥王に攻撃を仕掛ける。


「小賢しい、闇の雷(ダークボルト)


 ディリーとアトリに向けて黒い雷が落ちる。

 二人の身体に激しい電撃が走り、炭のように焼き焦げた。


「ディリー! アトリ!」


 オレはすぐに駆け寄るが、二人の〈体力〉は尽きる寸前だ。

 エンジェとグラムが冥王の足止めに走る。


「マスター······ごめんなさい······ですです······」

「······申し訳······ありません······わたし達の······力不足······です」


 二人の身体がボロボロに崩れ落ちる。


「いや、よくやった。ディリー、アトリ。ゆっくり休んでいろ」


 オレは二人をダンジョンコアに戻した。

 ダンジョンコアがある限り元迷宮の守護勢は不死の存在だ。


 ············だからと言ってあんな姿を見せられていい気分じゃないが。


「師匠、大丈夫でござるか?」


 倒れた人達を安全な場所まで運び終えたらしい。

 シノブがやってきた。


 アイラ姉もエンジェ達の助太刀に入って冥王と戦っている。


「シノブ、丁度良い所に来てくれた。()()()()()()()()()()()()()


 オレはシノブにスキルの付与を頼む。

 付与してもらうスキルは(限界突破)だ。

 グラムが持っているスキルで必要ないと思って今まで付与しなかったものだ。



(限界突破)

体力および生命力を犠牲にして自身のステータスを一時的に大幅に高める。



 リスクがあり、もともとステータスの高いオレには使う機会なんてないと思ってたが。

 自惚れていたな。

 自分より強い相手なんて居て当たり前だろうに。


 それにディリーとアトリのあんな姿を見て冷静でいられるほどオレは冷めてはいなかったようだ。

 必ず仇は取ってやる。(死んでないけど)


「了解でござる、師匠」


 シノブが言われた通りオレにスキルを付与した。

 さっそくスキルを使用する。



 覚悟しておけ············冥王!





新たに出てきたキャラのディリーとアトリについては今度投稿予定の閑話で紹介します。

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