165 学園迷宮攻略開始
突如として学園の地下迷宮から大量の魔物が湧き出してきた。
もはや迷宮を管理するとか言っている状況じゃないため攻略が最優先事項だ。
湧き出てきたのはレベル50~80のアンデッド系の魔物だ。
普通なら絶望的状況だがこの学園、いや王都には戦える人がたくさんいる。
学園の一般生徒でも平均レベル50~60くらいになっている。
王国騎士団もアイラ姉がたまに鍛えていたようでレベルが高い。
学園長のリプシースさんが教師や生徒達をうまくまとめているようだ。
学園に迷宮が出現していたことは一般生徒も薄々気が付いていたようで大きな混乱は起きていない。
こんな時のために鍛えてきた甲斐があった。
············こんな状況にならないのが一番だったんだが。
「民の安全を第一に! 戦える者を全力でサポートしますわよ!」
聖女アルケミアが騎士達に指示を出している。
この事態に王国騎士団だけでなくリヴィア教の神殿騎士も参戦している。
「行きましょう、セーラ様!」
「ええ、絶対に犠牲者を出さないようにしますよ、リン!」
リンと聖女セーラも一緒に魔物と戦っている。
リンは今回はセーラの護衛に専念するようだ。
二人ともレベル100を超えているし加護スキルも持っている。
アンデッドなんてまったく問題なく蹴散らしていた。
エンジェとグラム率いる迷宮の守護勢も人々を守るために戦っている。
メイド姿のグラム達がアンデッドを排除している。
外は皆に任せて大丈夫そうだ。
ならオレ達もやることをやろう。
「急いで迷宮を攻略しに行こう!」
オレの言葉に皆が頷く。
すでに主要メンバーは揃っている。
アイラ姉、シノブにスミレにユーリ、ロディンにリイネさん。
エイミにミール、ミウにキリシェさん。
全員がレベル150を超えている。
おそらくこの国最強のパーティーだと言ってもいいだろう。
「小生も迷宮攻略に連れていってほしいであります! 足手まといにはならないでありますよ!」
そう言ってきたのは聖女ルナシェアだ。
ルナシェアも迷宮に潜るのは初めてじゃないし、連れていくのは問題ない。
聖女の力で魔物を弱体化させることも出来るし、頼りになる。
だが、護衛役のリンはセーラと共に魔物と戦っている。護衛無しでいいんだろうか?
「小生の本来の専属護衛はいるでありますが、迷宮攻略にはついて来れないと思うであります」
確かにレベル200前後の魔物が出る迷宮に並みの騎士では言っては悪いが足手まといにしかならないかもしれない。
それに対してルナシェアは高レベルで加護スキルも持っている。
「わかった。一緒に行こう」
今は問答している時間はない。
ルナシェアなら大丈夫だろう。
ルナシェアも入れて総勢12人のパーティーで迷宮攻略だ。
五人以下のパーティーで攻略しないとダンジョンコアの入手条件を満たせないが、アンデッドの召喚が出来るダンジョンコアなんて別にいらないから問題ない。
「転移!」
オレは転移魔法を使い、学園迷宮の地下41階層まで移動した。
迷宮の中は以前よりも禍々しさを増していた。
「ここが············とても学園の地下とは思えんな」
アイラ姉やこの階層に初めて来た面々が周囲を驚きながら見回している。
上の方の階層とは違い過ぎるからな。
「グウウッ」「ウウウッ」「ゴルルゥッ」
オレ達を待ち受けていたように前回現れた地竜の群れが姿を現した。
レベル150~200の個体がおよそ15体か。
「現れたでありますな!」
「存分に相手をしてやるぞ」
ルナシェアとリイネさんが武器を抜いた。
他のみんなもそれぞれ武器を構える。
「レイ、シノブ。時間をかけている暇はない。手加減は一切無用だ、全力で行くぞ」
「ああ、わかってるアイラ姉」
「承知したでござる」
オレも聖剣エルセヴィオを構えた。
アイラ姉の言う通り手加減している場合じゃない。
自重無しで全力で行こう。
「はあっ!!」
オレは全力で目の前の地竜達を斬っていった。
オレのステータスと聖剣の力が加われば強靭な耐久力を持つ地竜の肉体も豆腐のように斬れる。
シノブも素早い動きで地竜を切り刻んでいる。
「百花繚乱············桜花無双撃!!」
そしてアイラ姉も奥義で次々と地竜を倒していった。
本気を出せばこの程度の魔物は問題ない。
「ホーリーブレス!!」
最後にオレは「聖」魔法で地竜達の肉体を滅した。
アンデッドとして復活する可能性があるからな。
さすがに完全消滅すれば復活しないようだ。
「し、小生達の出番が無いであります······」
「さすがだな············本気を出せばここまですごいとは」
ルナシェアとリイネさんが言う。
他のみんなも似たような反応だ。
「さあ先を急ぐぞ! 皆の力でこの迷宮を完全攻略するのだ!」
アイラ姉の言葉に全員が頷いた。
ようやく学園の地下迷宮を完全攻略する時が来た。