164 学園地下迷宮の異変
学園地下迷宮に異変が起き、決闘は中止となった。
あの場を去ったオレは元の姿に戻りアイラ姉達と合流し、迷宮の入口まで向かった。
迷宮の入口からは禍々しい邪気が今にも溢れそうな状態だった。
とても放っておける状態ではない。
オレとアイラ姉はロディン、リイネさん、そして学園長と共に王城まで国王にそのことを報告しに向かった。
「父上、このまま迷宮を放置しておくのは危険です」
リイネさんが言う。
ロディンとリイネさんの口添えであっさりと国王と対面できた。
国王も迷宮の現状報告を受けて思案している。
「うむ、やはり迷宮の管理は諦めるしかないか············レイ、アイラよ。余から正式に迷宮の攻略を依頼したい。引き受けてくれるか?」
国王はそう判断したようだ。
オレもあの迷宮は危険だと思っていたのでその判断に異論はない。
「私からもお願いするわ。溢れ出している邪気は私も感じたことのない程強大だったわ············。このままだと何が起きるか予測がつかないわ」
学園長もそう言ってきた。
オレとアイラ姉はお互いに頷いた。
「わかりました。すぐにでも攻略に向かいます。
レイ、行けるな?」
「ああ、もちろん。アイラ姉」
転移魔法を使えば41階層まで行ける。
学園の地下迷宮は全50階層だから攻略にはそんなに時間はかからないはずだ。
「アイラ、レイ。もちろんわたしも行くぞ」
「俺もだ。足手まといになるつもりはない」
リイネさんとロディンが言う。
二人ともレベルもステータスもそれなりに高いから問題ないだろう。
国王も異論を挟まなかった。
当然シノブやスミレなど迷宮攻略組にも声をかけるつもりだ。
「へ、陛下!」
そんな時に伝令の騎士がやってきた。
どうやら突然の来客のようだ。こんな時に誰が?
やってきたのはよく知っている人物だった。
「突然の来訪ですみません」
「国王様、ご報告があるのですわ」
「失礼するであります」
セーラ、アルケミア、そしてルナシェアだった。
三人の聖女が揃っての来訪だ。
「レイさん、アイラさんもいらしたのですか」
「お二人ともお久しぶりですわね」
セーラとアルケミアがオレ達を見て挨拶したので、オレとアイラ姉も挨拶を返す。
聖女三人は国王の前に跪いた。
「聖女殿が揃っての報告とは?」
国王が口を開く。
国王も聖女三人の来訪は予想外だったようで少し驚いているように見えるな。
「つい先程、試練の神託が下りました」
「それも私達三人揃ってですわ」
「神託の内容もまったく同じだったであります」
三人揃って試練の神託とやらを受けたのか。
わざわざ国王に報告に来るのはそれだけ重要な内容だということか?
「試練の内容は〝王都を襲う未曾有の危機を皆で協力し乗り切れ〟とのことでしたわ」
アルケミアが代表して試練の内容を答えた。
王都を襲う未曾有の危機············ついさっき学園迷宮に異変が起きたばかりだ。
関係が無いとは思えないな············。
三人の聖女に揃って神託が下ったのは、それだけヤバイ事態に陥る可能性があるのか?
「未曾有の危機······とは?」
「申し訳ありません、私達も詳しくは············しかし何か良くない事が起きるのは間違いありませんわ。ですから報告に来ました」
アルケミア達も詳しい内容まではわからないのか。
「おそらく学園の迷宮が関係していると思うであります」
ルナシェアが言う。
ルナシェアは学園の異変を知っているからな。
その直後に神託を受けたのだからそのことを結びつけるのは当然だろう。
その時、ミールから念話が入った。
―――――レイさん、今大丈夫ですか? こちらで大変な事態が起きました。
冷静な口調だが緊迫感を感じる。
学園で何か起きたようだ。
―――――迷宮から大量のアンデッドが出てきました。シノブさん達と撃退していますが数が多すぎます。
ついに想定していた最悪の事態が起きたらしい。
この日、王都全体が未曾有の危機に陥ることになった。