155 ミール達からの報告
「ということみたいですよ、レイさん」
寮の自室でミールからそんな報告を受けた。
なんでもリンが謎の仮面男を捕らえるためにアイラ姉に協力を要請して、迷宮探索組全員で捕らえようという話になったらしい。
「レ、レイ君も協力してほしいってリンさんとアイラさんが言ってたよ······」
エイミが言う。
とは言ってもオレがどうやって協力すればいいんだ?
その仮面男の正体はオレなんだし············。
そんなこと言うわけにもいかずオレは頷くしかない。
しかし、アイラ姉が動くのか············。
まずいことになったが解決策が浮かばない。
―――――レイさん、それでどうするつもりですか?
ミールが念話で問いかけてきた。
ミールとは毎日じゃないけど色々シテいるため加護が〈中〉になり、リンと同じように念話で話せるようになった。
ミールは仮面男の正体をオレだと知っているがエイミは知らないからな。
聞かれると困る会話は念話でしている。
―――――どうすると言われても、なるべくあの姿にならないようにするくらいしか解決策は······。
―――――ですがあのマスクはレイさんの意志に関係無く装備してしまうんですよね?
そうなんだよな············。
オレだってあんな姿になりたくてなっているわけじゃない。
オレの意志に関係無くいつの間にか被ってしまうんだ。
自分で被ることもできるけど············。
―――――いっそあの姿でアイラさん達と決闘してはいかがですか? レイさんが勝てば、もう正体を探らないよう約束させてしまえばいいのでは?
決闘か············。
―――――けど正体不明の相手との決闘なんて認めてもらえるの?
―――――相手が犯罪者ならば無理でしょうけど
レイさん·········いえ、あの仮面男は犯罪行為は行っていませんからね。アイラさん達が了承すれば成立するはずです
状況次第だけどアイラ姉なら決闘を受け入れそうだな。
けどあのアイラ姉に勝つ?
··················無理じゃないかな?
魔力こそ上回っているけどそれ以外のステータスも戦闘技術もオレはアイラ姉には及ばない。
それに相手はアイラ姉だけじゃない。
迷宮探索組全員だ。
正体を知っているミール、シノブ、スミレは除外するとしても残りのメンバー全員レベル150近くになっている。
いくらなんでも厳しすぎるだろう。
―――――別に全員を相手にする必要はないんじゃないですか? マスクを装備したレイさんが学園内に現れたらワタシとシノブさんとスミレさんでうまくみなさんを誘導しますよ
ミール達が協力してくれるのは助かるがそんなにうまくいくだろうか?
「ねえミール、レイ君············念話で何を話してるの?」
エイミが言う。
端から見たらオレ達は黙っているように見えるだろうけどエイミは念話のことを知っている。
オレ達が何か話していたことを察したようだ。
「あの仮面男をどうするかという相談ですよ。姉さんももちろん手伝うんですよね?」
ミールが淡々と言う。
まあ嘘はついていないか。
「て、手伝うつもりだけど············」
「姉さんも念話を使えるようになれば簡単に連絡取れていいんですけどね。どうです姉さん? そろそろ覚悟は決まりましたか?」
ミールの言葉を聞いてエイミは顔を真っ赤にしながらオレを見た。
「も、もう少し待って············ま、まだちょっと······こ、心の準備が······」
あれ、今までのような断固拒否の反応じゃない?
ミールもエイミの反応が意外だったようで少し驚いた表情になっている。
―――――レイさん、姉さんの反応が今までと違いますね。もう一押し行けば頷きそうですよ?
―――――いや············無理矢理させるのはオレが嫌だよ
ミールが念話でそう言ってきた。
だからといって強引にそんなことをさせたくはない。
「姉さん、そんなことを言っていると先を越されてしまいますよ? 迷宮探索組の中だけでもミウネーレさんはもちろん、リイネさんにキリシェさん、ルナシェアさんも怪しいんですからね」
リイネさんにはそれらしいことを言われたが本気なのかはいまいちわからなかった。
キリシェさんはアイラ姉が本命(?)だろうし。
ルナシェアは仲の良い友達くらいの感覚だろう。
ミウは·········確かに好意的だが。
結局この日は何もしなかったが、この様子だとエイミが正式な加護を得るのも近いかもしれない。