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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章③ 4 魔法生命体マティア

―――――――(side off)―――――――――


「············ゆうしゃ············ころす············」


 容器の中から出てきた少女がユウに向けて凄まじい殺気を放った。

 全身に魔力を集中させて完全に殺す気のようだ。


「勇者ってぼくのことかな? キミは――――――」

「ユウ! 危ないわっ!」


 少女はユウに向けて問答無用で魔力の塊を放った。テリアが強引にユウを引っ張りその攻撃を避けた。


「いきなりユウ様に何するですかぁ!」


 お返しにミリィが少女に魔法を放つが簡単に相殺されてしまった。


「じゃま············はいじょするのはゆうしゃだけ············」


 少女が無表情でテリアとミリィを見る。

 言葉は通じるようだが話し合う気はないようだ。


「何なのかわからないけど問答無用みたいね······」

「だったらミリィも手加減しませんよぉ」


 テリアとミリィも戦闘態勢に入った。

 この少女から感じる魔力量はとても手加減できるものじゃないと判断したらしい。


「てきを()()()()()します」


 少女が全身から魔力を一気に解放した。

 凄まじい魔力の波動がテリアとミリィを襲う。


「うぐ、なんて魔力······」

「このくらい、平気です············よぉ」


 二人はなんとかそれを耐えた。


「おいうちをかけます」


 少女がさらに魔力を高めた。


「そうはさせないわっ! ゲイボルグショット!!」


 少女の攻撃が来る前にテリアが強力な矢を放つ。



――――――――ドスッ!!


 テリアが放った矢は少女の胸に命中した。

 しかし少女は倒れない。

 矢は確かに刺さっているが血も流れていない。

 顔色一つ変えずにまるで効いていないようだ。


「モード、オン············ブレード」


 少女の右腕が光に包まれ変化していく。

 鋭い刃状の剣のような形になった。

 その状態でユウに斬りかかった。


「マジカルブレード!」


 ユウもスキルで剣を作り出し、少女の刃を受ける。

 少女の力は強く、ユウとほぼ互角のようだ。


「ユウ様ぁ! 今助けますよぉ!」


 ミリィがいくつもの魔力の塊を作り出し、少女に向けて放った。



――――――バアアアァァッッッ


 少女の身体が光輝き無数のコウモリのような生物に変化した。

 何十、何百にもなったコウモリがミリィを襲う。


「キャアアァーーッ!?」


 ミリィが悲鳴をあげる。

 一体一体の攻撃はたいしたことないが数が多すぎる。


「身体を自由に変化させられるの!?」


 テリアが弓矢を次々と放つがコウモリ達は怯む様子もない。



―――――――ザアアアァァァッ


 コウモリ達が一ヵ所に集まり再び元の少女の姿に戻っていく。


()っ······よくもやってくれましたねぇ!」


 ミリィは身体中に傷を負っていた。

 致命傷はないがかなり痛々しい姿だ。


「ダウンバースト」


 少女が両手を前に構えると凍てつく冷気が凄い勢いで吹き出した。


「テリア、ミリィ! ぼくの後ろに!」

「ユウ!?」

「ユウ様ぁ!?」


 ユウが前に出て(物質具現化)で壁を作り少女の攻撃を防いだ。


「大丈夫、ミリィ?」

「このくらい放っておいても治りますよぉ、ユウ様ぁ」


 ユウがミリィに中級ポーションを使った。

 ミリィの傷はすぐに治っていった。


「ユウ············アイツかなり強いわよ」

「みたいだね。でもなんでぼくを殺そうとするのかな?」

「アイツは勇者を殺すために作られた生命体みたい。だからユウの勇者のスキルに反応してるんだと思うわ」

「もしかしたらぼくのスキルはあのコに反応してたのかもしれないね」


 ユウ達がそれぞれ構える。

 少女は無表情で再び魔力を集めだした。

 ほとんど時間をかけずにとんでもない魔力が集まった。


「まずいですよぉ!? あんな魔力解放したら············」

「テリア、ミリィ! 全魔力を防御に集中させて!」


 ユウの指示で三人とも全力で防御魔法を使用する。



「デスプロージョン」


 少女が集中させた魔力を解き放った。

 その威力はあまりに凄まじく建物全体が吹き飛んだ。

 建物の周囲の木々も吹き飛び、一面が更地になっていた。





「あっぶな············なんて威力なの······」


 防御魔法を全力で展開していたため三人は無事だった。しかし今のでかなりの魔力を消費したため同じ攻撃がくれば今度は防げない。


「············つぎこそしとめます······」


 少女が再び両手に魔力を集め出した。

 ユウ達はまだ態勢を立て直せていない。


「ダウンバースト」


 少女が両手を前に構えた。

 少女の両手から凍てつく冷気が放たれ············


―――――――――ポンッ


 ることはなく、何やら間の抜けた音が響いた。


「な、なに······?」


 意味がわからずテリアが警戒する。


「············???············」


 少女自身も不思議そうに首を傾げている。


「よくわからないですけどチャンスですよぉ!」


 少女のスキをついてミリィが攻撃を仕掛ける。

 少女はその攻撃を避けたがバランスを崩し倒れた。


「············?? ······からだ············うごか······ない······」


 倒れたまま少女は動かない。

 いや、動けないようだ。

 何が起きているかわからずユウ達は顔を見合せる。


「様子がおかしい、どうしたのかな?」


 倒れている少女にユウが近付こうとする。


「待ちなさいユウ! 何か企んでいるのかもしれないわっ、危険よ!」


 テリアがユウを止めようと叫ぶ。



―――――――ぐうぅ~~~~っ


 そんな時にシリアスな空気が台無しになるような気の抜けた音が響いた。


「い············今の音って」


 ユウ達三人が再び顔を見合せる。

 今の音は少女から聞こえてきた。

 そして音の正体はあきらかにお腹の音である。


「ねえ、もしかしてあのコ、お腹空かしているんじゃないかな?」


 おそらくユウの言う通りなのだろう。

 動けない少女を見てユウ達はどうしようかと頭を悩ませた。






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