152 迷宮探索強制終了
無事に転移魔法が発動しオレ達は迷宮の入口まで戻ってきた。
迷宮の入口にはアイラ姉達の姿もあった。
ちょうどアイラ姉達も探索を終えて戻ってきた所らしい。
「レイ達も戻ってき············なんだ、そのだらしない姿は」
アイラ姉がオレの格好を見るなり怪訝な表情で言う。
急いで転移したからドラゴンゾンビに服を溶かされたままの格好だ。
「な、な······何があったのレ、レイ君······!?」
「レイさん、大胆ですー······」
エイミとミウが視線を逸らしながら言う。
恥ずかしいからさっさとアイテムボックスから服を取り出し着替えた。
それにしてもあの(激強酸)をまともに浴びたけど少し熱めのお湯くらいの感覚だった。
どうやら(激強酸)ではオレの身体を傷つけることはできないみたいだ。
けど服の方は駄目だったからな············。
今度強い酸にも耐えられる素材の服を用意しよう。
「もしかして迷宮探索と偽ってリイネさん達とよからぬことをしていたのですか?」
ミールがそんなことを言い出した。
ミウやエイミ、アイラ姉まで疑いの目を向けてきた。
「いや違うぞ、レイがあんなことになったのはな······」
リイネさんが事情を説明してくれた。
誤解はすぐに解けたようだ。
「そんなことがあったのか。リイネを守ったのは立派だが許可なく未知の領域に進むのは感心しないな」
やはり無断で40階層より下に行くのはまずかったかな。
大事に至らなくてよかったがレベル200前後の魔物が大量に湧いてきたからな············。
オレのレベルなら倒すことは可能だろうけどみんなを守りながらだとかなり厳しかっただろうな。
「ユーリ殿とスミレ殿もずいぶんレベルアップしているでござるな」
「アイラさんのおかげですよ」
「·········手強いのが出てきた」
向こうではシノブとユーリとスミレがお喋りしていた。
ユーリのレベルはいつの間にか120を超えているし、スミレはもう200に迫っていた。
しかしスミレが手強いというのは珍しいな。
アイラ姉達は1~30階層を探索していたはずだからそこまで強い魔物は出ないと思ったが。
「か、隠し部屋に強い魔物がいたんだよっ······」
「結構厄介な魔物でした」
エイミとミールが言うには通常ルートではなく隠し部屋を巡っていたらしい。
隠し部屋にはその階層には場違いな高レベルの魔物がいたそうだ。
以前にケルベロス・イロードという魔物を倒したがそんな感じに強敵だったようだ。
それなりにお宝もあったらしい。
「浅い階層にもそれほどの魔物が現れたでありますか」
「やはりこの迷宮は危険ですね······」
ルナシェアとリンが言う。
二人の言う通りオレもこの迷宮は危険だと思う。
「レイ達の方は············キリシェが何かしてきたりはしなかったか?」
「いや、普通に探索していたよ」
アイラ姉が心配そうに聞いてきたが特に問題は起きていない。
「もうアイラったら~、そんなに私を心配してくれてたの~? 嬉しいわ~」
そう言いながらキリシェさんがアイラ姉に抱きついた。
心配してたと言っても別の心配だと思うが。
「······っ!? い、いきなり抱きつくなっ」
「大丈夫よ~? 一番はアイラなんだから浮気したりしないわよ~」
「そんな心配はしていない!」
アイラ姉がキリシェさんを強引に引き剥がした。
探索前は確かに心配したけどアイラ姉にしている程のスキンシップはしてこなかった。
本人の言うようにやっぱりアイラ姉が特別なのかな?
············あまり深く突っ込むのもなんだし仲が良いんだと思っておこう。
それぞれの成果を話し合い迷宮探索は終了となった。疲れを癒すために全員で学園の入浴施設に向かった。
「レイもわたし達と入らないか? 迷宮で庇ってくれた礼に背中でも流すぞ」
本気なのか冗談なのかリイネさんがそんなことを言う。
「いや······さすがに男のオレが女湯に入るのは······」
この時間帯は他の生徒が入っている可能性がある。
「今はわたし達の貸し切りにすればいいだろう。あの施設はお前達が作ったのだし文句は出ないはずだ」
確かにそうだけど······それって職権乱用ってやつじゃないのかな?
「良い案ですね。ワタシもリイネさんに賛成です。」
「ミ、ミール!? 何言ってるのっ」
ミールまでリイネさんの言葉に乗っかってきた。
エイミが慌てた声を出す。
「ですがそれだとユーリさんが一人で可哀想ですね。ユーリさんも一緒にどうですか? シノブさんに背中を洗ってもらえますよ」
「え、ええっ!? ぼ、ぼくは······その······」
ユーリまで巻き込まれた。
シノブの方をチラリと見てエイミ並みに目をグルグル回している。
「駄目に決まってるだろ、そんなこと!」
アイラ姉の一喝で結局混浴は実現しなかった。
ホッとしたような、残念なような複雑な気持ちでユーリと二人で男湯に入った。