閑話⑤ 3 夢の人物との再会 (※)
※(注)変態男が現れます。
(セーラside)
「おや? セーラ殿にリン殿も一緒でありますか」
犯罪組織の人達を騎士団の方々に受け渡したところにルナシェアさんに声をかけられました。
学園に通っている時はリンが護衛を務めていますが、今日は本来の専属護衛が一緒に居るようです。
しかし、ルナシェアさんが何故ここに?
「小生も騎士団の方々に協力して悪人を捕らえていたであります!」
どうやらルナシェアさんは学園の生徒という身分で冒険者ギルドに登録したようです。
そして冒険者としてギルドの依頼を受けて今回の犯罪組織の一斉摘発に協力していると。
シノブさん達とは別の拠点を摘発していたようです。
そのために今朝から出かけていたんですね。
ルナシェアさんのレベルがいつの間にか70を超えていました。
学園に通ってレイさんやアイラさん達にレベルを上げてもらっているようです。
私と同じくレイさんから加護も受けているそうなので犯罪者相手でも遅れは取らないでしょう。
加護を受けたといってもレイさんとキスをしたわけではなくルナシェアさんが学園の入浴施設で誤って男性用の方に入ってしまい、その時のドタバタでレイさんと裸で抱き合ってしまったと聞きましたが············どんな状況だったのでしょうか?
「シノブ殿にスミレ殿、エンジェ殿も協力感謝するであります!」
「それほどでもないでござるよ、ルナシェア殿」
「············簡単だった」
「くかかっ、往生際が悪かったがのう」
みなさんの活躍でかなりの犯罪者を捕らえられたようです。
「後は犯罪組織と関わっていた貴族がいたのでその者の事情聴取をするだけでありますな」
犯罪組織に貴族が関わっていたのですか?
ルナシェアさんの話によると貴族の令嬢が犯罪組織に協力していたらしいので詳しく話を聞きに行くそうです。
ここまで関わったので私もその事情聴取に立ち合わせてもらいましょう。
というわけで問題の貴族の屋敷に向かいます。
シノブさん、スミレさん、エンジェさんは別の犯罪者の拠点を制圧するとかで別行動です。
············大丈夫でしょうか?
主に犯罪者さん達が············。
「聖女セーラ様!? ル、ルナシェア様まで······一体何事でしょうか······」
問題の貴族の屋敷に着くと当主自ら出迎えてくれました。
私とルナシェアさんを見て驚かれています。
この方の貴族としての階級は中級貴族の部類です。
あまり悪い噂を聞くような人ではなかったはずですが。
「貴方の娘に犯罪組織との関わりの疑いがかけられている」
ルナシェアさんに代わって護衛騎士の方が言います。それを聞いて貴族の当主は驚愕の表情をうかべました。
「わ、私の娘が!? な、何かの間違いでは······」
「その真偽を確かめに来たのであります」
どうやら本当に驚いているようですね。
心当たりもないそうです。
当主の方はルナシェアさんの護衛騎士さんに事情聴取を任せて、私達は屋敷に入り問題の娘さんの部屋に向かいました。
部屋の前まで着くと何やら中が騒がしいような······?
問題の娘さん以外にも誰かいるようです。
「キャアアアアッ!!!???」
部屋の中から尋常じゃない叫び声が響いてきました。一体何が!?
「何事でありますか!?」
すぐにルナシェアさんを先頭に部屋の中に入りました。部屋の中には問題の娘さんと一人の男性がいました。
「これはちょうど良いところに。たった今、彼女から話を聞き終えたところです」
私達に向かって男性がそう言いました。
「な、な······なんでありますか!? この珍妙な姿をした人物は!?」
「あ、現れましたね! 変態男!」
ルナシェアさんは困惑の表情で。
リンは憤怒の表情で言います。
そう、部屋にいた男性は黒いマスクを被った下着一枚の姿の男性·········正義の仮面さんでした。
問題の令嬢と思われる人物は気を失って倒れています。
「えっと············これはどういう状況ですか? 正義の仮面さん」
私は彼に問いかけました。
「彼女が犯罪者との関わりがあるという情報を掴みまして事情を聞きに来たのです」
どうやら私達と目的は同じだったようです。
どこから掴んだ情報か気になりますが、それは今はいいでしょう。
それよりも············。
「何故、彼女は気を失っているのですか?」
「彼女にはお仕置きを兼ねた尋問を行いました故に。手荒なことはしていないのでご安心ください」
お仕置き············ですか。
どんなことをしたのか聞くのが怖いのでそこは目を瞑りましょう。
見たところ、特に怪我などはされていないようですし······。
それよりも彼女を尋問して聞いた話によると犯罪組織と関わりを持っていたといっても騙され、いいように利用されていただけのようです。
悪意のある行動ではなかったようですね。
とはいえ犯罪組織に協力してしまったのは事実。
軽めではあるでしょうが罰は受けることになるでしょう。
当主と令嬢は詳しい事情聴取のため騎士団の方々に連れて行かれました。
「あの······セーラ殿。こ、この珍妙な方は知り合いでありますか?」
ルナシェアさんが正義の仮面さんを指差し言います。
私も初めて彼を見た時は驚いたので気持ちはわかりますよ。
「そうでした、貴女とは初対面でしたな。私の名は正義の仮面。貴女は聖女ルナシェア殿ですね?」
「せ、正義の仮面············でありますか······?」
ルナシェアさんはかなり困惑しているようです。
やはり下着一枚姿の彼を直視できないみたいですね。
「変態男! ここであったが百年目······今日こそ引っ捕らえてやります!」
リンがいつの間にか大剣を構えて臨戦態勢に入っていました。
「申し訳ないですが、私には果たすべき使命があるのでここで失礼します。では!」
「あ、コラァーーッ!! 待ちなさいっ!!」
あっという間に正義の仮面さんは走り去っていきました。
リンは私の護衛を放棄するわけにはいかずに悔しそうに唸っています。
「ぬぐぐ······あの男、今度学園内に現れた時が最期です! 覚えておくことですね!」
リン、もう聞こえていないと思いますよ?
それにしてもまさか夢に出てきたその日に会うことになるとは思いませんでした。
相変わらず目のやり場に困る格好でしたね············。
「セーラ殿、リン殿······あの男は何者でありますか?」
ルナシェアさんがそう聞いてきたので彼について知っていることを話しました。
オークの軍勢や聖女の試練でお世話になったことなど。
「············なるほど、珍妙な姿ではありましたが、なかなか立派な方なのでありますな」
「いえ、ルナシェア様、騙されてはいけません。あの男はただの女の敵です!」
男性嫌いのリンが彼を受け入れることは難しそうです。
その後はルナシェアさんと別れてリンと二人で再び王都を回り、日が暮れてきた頃に本殿へ戻りました。
色々ありましたがとても有意義な一日でした。