135 王都でミウネーレとデート?
学園の授業が終わり放課後。
今日はミウと一緒に王都の町を回っていた。
王都はアルネージュ以上に広く一日二日ではすべては回り切れない。
エイミとミールは学園の用事があり来れなかった。
「町の案内ならお任せくださいですー」
ミウが自信満々に言うので任せよう。
長く王都にいるらしいので色々な穴場とかも知ってるようだ。
ミウの案内で様々な店を回りショッピングを楽しむ。
こうして二人でいるとまるでデートみたいだな。
······いや、まるでじゃなくてデートじゃないか?
そう考えたらなんかドキドキしてきたな。
ミールに告白されてまだ返事を先送りにしているのにミウとデートって············最低じゃないかオレ?
ミウは楽しそうにしているけどなるべく意識しないようにしとくべきか。
いや、それはそれでミウに失礼かな。
さすがは王都と言うべきか色々な店があり見るだけでも楽しめる。
そんな時一軒の店が目に入った。武具屋だ。
かなり大きな店で入口には色々な武具が並べられている。
そういえばミウの武器の杖も王都の店で作ったと言っていたっけ。
「この店であたしの杖を作ってもらったんですよー。ドワーフ工房の技師さんが何人か働いているはずですー」
やっぱりこの店のことだったか。
ドワーフ工房はアルネージュの町にもあったが王都にもあるらしい。
ちょっと見てみたいので覗いて見ることにした。
中へ入ると武具を打つ金属音が響いていた。
武具屋、兼鍛冶工房って感じかな。
「なんとかならないでありますか?」
「そう言われても材料がないんじゃどうしようもねえんですよ」
女性客とドワーフの店員が何かもめているみたいだな。リンのような立派な鎧を着込んだ女騎士だ。
神殿騎士の人かな?
「あれー? もしかしてルナ様ですかー?」
「おや、ミウ殿でありますか? こんなところで会うとは奇遇でありますな」
ミウが声をかけて女騎士が応えた。
どうやらミウの知り合いみたいだな。
リンと同じくらい、つまりオレ達と同じくらいの年っぽい人だ。
「ミウの知り合い?」
「そうですよー、というかレイさんは会ったことなかったんですか?」
「ああ、初対面だよ」
もしかしたらすれ違ったくらいならあるかもしれないが少なくとも話したことはないはずだ。
「おおミウ殿、もしかしてデート中でありましたか? なかなか男前な方でありますな」
オレを見て女騎士さんが言う。
お世辞······だとは思うが男前と言われると照れるな。ミウもデート中だと言われて照れていた。
「どうも、オレはレイ。ミウに王都の案内してもらってたんだけど」
「レイ······? どこかで聞いたような············ああ、そうであります! セーラ殿とアルケミア殿が言っていた異世界の人でありますな!」
え? オレが異世界人だと知ってる!?
セーラとアルケミアに聞いたと言っているけどあの二人がそんなに口が軽いとは思えないんだけど。
「なんでそのことを? セーラとアルケミアは神殿関係者でも一部の人にしか話してないって言ってたはずだけど」
もしかしてリンと同じように聖女の専属護衛騎士だろうか?それなら知っているかもしれない。
「そうでありますな! まずは自己紹介からするであります」
そう言うと女騎士さんは礼儀正しい動きで敬礼した。
「小生の名はルナシェア=スウェーゲル。セーラ殿とアルケミア殿と同じく聖女候補であります!」
··········································································································え!?
聖女候補!? 護衛騎士じゃなくて?
············そういえば前にリンが言っていたな。
聖女ルナシェアは聖女らしくない人だと。
なるほどこういう意味か。
初めて会った時に聖女だとわからずに馴れ馴れしい態度を取ったと言っていたけど、神殿騎士の同僚と勘違いしたということか。
確かにオレも聖女とは思わなかった。
[ルナシェア] レベル32
〈体力〉450/450
〈力〉390〈敏捷〉330〈魔力〉740
〈スキル〉
(聖女の資格〈3/9〉)(聖なる守り)
(浄化の息吹)(聖剣術〈レベル8〉)
(身体強化〈中〉)(魔力増加〈小〉)
セーラとアルケミアと同じ(聖女の資格)のスキルを持っているな。
二人が魔法主体ならルナシェアは武闘派と言ったステータスとスキルだな。
年齢は17でオレとミウと同じだそうだ。
セーラとアルケミアは19だったので聖女候補の中では最年少のようだ。
「ルナ様はここで何をしてたんですかー? さっき店員の人ともめてましたけどー」
ミウがルナシェアに問う。
聖女のルナシェアがわざわざ武具店に注文に来たのかな? そういえば護衛の姿もないが。
「実は先日愛用の剣を失ってしまったのであります。同等の武器を探していたのでありますが王都でもなかなか見付からず困っていたのであります」
ルナシェアの話によると何日か前に魔物との戦いによって武器を失ったらしい。
なんでも魔物の強力な酸のようなものを浴びて完全に溶けてしまったようだ。
よく生きて帰ってこれたものだ。
この店にはミスリルの武器などそれなりに強い物はある。
だが、ルナシェアはそれ以上を求めているようだ。
「レイ殿! セーラ殿達から聞いたであります!
オリハルコンの武器を持っていると。どうか小生に譲ってほしいであります!」
オリハルコンのことも聞いていたのか。
確かに持っているが············。
素材ならいくらでも出せるし惜しくはないんだが渡して大丈夫だろうか?
分不相応な実力で強力な武器を手にしたために無謀なことをして命を落とすという話もある。
「ここのミスリル剣とかじゃ駄目なの?」
ミスリルだってそれなりに強いはずだ。
レベル32のステータスならそれくらいがちょうどいいと思うが。
「ミスリル剣だと小生の(聖剣術)スキルと相性が悪いのであります。それ以外の素材の武器となるとどうしても威力不足になるであります」
確かにこの店にはミスリル以上の武器はないな。
(聖剣術)がどういうスキルかは知らないけどミスリルは魔法を通しにくい素材らしいからそれで相性が悪いのかな?
「う~ん······譲るのは構わないと言えば構わないんだけど······」
「本当でありますか!? 後生であります! お願いであります!」
やけに必死になっているような············。
何か急ぐ理由でもあるのか?
そう思い聞いてみると······。
「聖女の試練なのであります! 一月以内にとある魔物を討伐せよという············もう期限はあと3日に迫ってるのであります!」
という答えだった。
魔物を討伐って············。
セーラやアルケミアの試練とは大分違う気がするんだが。
魔物の討伐が聖女としての試練なのか?
まあ神託とやらを受けたらしいので試練なのは間違いないようだが。
討伐する魔物はアーマードアシッドフロッグという巨大なカエルの魔物らしい。
「討伐の期限が過ぎたらどうなるの?」
「わからないであります。ひょっとしたら聖女の資格そのものを失うかもしれないのであります」
だから焦っていたのか。
まあ聖女の資格を失うかはわからないが何かしらのペナルティはあるかもしれないな。
「レイ殿お願いであります! どうか小生にオリハルコンの剣を! 対価は出来る限り用意するでありますから!」
ここまで言われると断りづらいな。
まあ断る理由は特にないんだけど。
············けどやっぱり心配だよな。そのカエルの魔物がどれくらい強いのかわからないし返り討ちにあって死なれでもしたら後味が悪すぎる。
明日は学園は休みだったな。
ならその討伐にオレも付き合わせてもらうかな。
「オレもその魔物の討伐に付き合ってもいいかな? ルナシェアの戦い方を見たいんだけど」
「小生は構わないでありますが······むしろ良いのでありますか? 件の魔物はそれなりに強いでありますよ」
「ああ、大丈夫だよ」
強いというなら尚更心配だ。
というわけで明日の昼頃にその魔物の討伐に向かうという約束をした。
「はいはーい! あたしも一緒に行きたいですー!」
どうやらミウも同行したいようだ。
まあミウのレベルは以前の遺跡の迷宮で大幅に上がったから多少強力な魔物相手でも大丈夫だろう。
その日は王都のショッピングは終わりにしてミウとルナシェアと別れた。
三人目の聖女ルナシェアの登場です。
本当ならもっと早く登場させるつもりだったのですが、なかなか登場させるタイミングが出来ずに少し遅れた登場になりました。