133 ゴスロリ金髪少女エンジェ
「フ~ム、今代の勇者だけでなく従者達も強者ばかりじゃのう」
守護者がそんなことを言った。
従者とはオレ以外のメンバーのことかな?
「従者とはワタシ達のことですか?」
ミールが守護者に問う。
勇者の従者と言われて少し嬉しそうな感じだ。
(表情は変わってないけど、そう見えた)
「くかかっ、主は勇者の愛人かの? 今代の勇者との匂いの交わりを強く感じるが」
「············!?」
そう言われてミールの表情が少し崩れた。
驚いているのか恥ずかしがっているのかといった表情が見えた。
「まあそれはよいわ。それよりもどうやらこの姿だと話しづらいようじゃの? ならばワシも人の姿になるとしよう」
そう言って守護者は身体の形状を変えていく。
そうか、竜や狼になれるんだから人の姿にもなれるか。
確かにスライム姿だと話しにくいし姿を変えてくれた方がいいかな。
「どうじゃ、この姿なら話しやすかろう?」
スライムの姿から人の形になった。
長い金の髪に金色の瞳のシノブやスミレと同じくらいの少女の姿になった。
「レイ、見るな! シノブ、スミレもユーリの目を隠せ!」
アイラ姉がオレと守護者の間に入り言う。
守護者は少女の姿になった············全裸の。
ちなみにロディンもリイネさんに目隠しされている。
「ん? おお、そうかそういえば人の姿だと着物が必要だったのう。うっかりしておったわ。ではこれでどうじゃ?」
慌てた様子も見せずに守護者がそう言うと目の前の空間に手を入れて服を取り出した。
アイテムボックス······とは違うな。
収納魔法ってやつかな?
守護者は取り出した服を身に付けた。
全身を黒のヒラヒラした感じで統一した所謂ゴスロリファッションだ。
············何故ゴスロリ?
「というか、あんた女だったのか?」
「いや、ワシに性別は基本ないぞ? 男の姿にもなれるが先代の勇者はこの姿を気に入っておったからのう。人の姿をとる時はこれにしておる」
「気に入っていたって······その服装もか?」
「そうじゃぞ? 先代勇者はロリのじゃ姫にはゴスロリファッションがてっぱんだ、とか訳のわからんことを言っておったが、これは違うのか?」
············なんだろう、先代勇者のイメージがおかしくなっていく。
まあ鉄板かどうかは知らないが似合ってはいる格好だが。
というか勇者ってオレと同じ異世界人らしいが何百年も前の人物だよな?
なんか発言が現代人っぽいんだが。
「そうじゃ今代の勇者よ。ワシに名前をつけてくれぬか?」
「名前······? なんで」
守護者がいきなりそんなことを言い出した。
「召喚主に名を与えてもらえば魔力と身体が安定し、いちいちダンジョンコアに戻る必要がなくなるのじゃ。もう一方の守護者には名を与えておるじゃろ? だからワシにも頼む」
名前をつけるとそんな効果があるのか?
もう一方の守護者ってグラムのことだよな。
何故名前をつけたことを知ってる?
守護者同士情報の共有でも出来るのか?
とはいえグラムは別に名付けた訳じゃないんだが。
グラトニーゴーレムを略して呼んでいたらいつの間にか名前の表示が変わっていただけだ。
名付けるのは構わないがはっきり言ってオレにセンスはないぞ。
「じゃあ············エンジェでどうかな?」
エンシェントジェリーだからエンジェ。
グラムと同じだがさすがに安易すぎたか?
「おお、良い名じゃ。ではワシは今よりエンジェと名乗ろう。今後もよろしく頼むぞ、我がマスターよ」
どうやら気に入ってくれたようだ。
ステータス画面の名前もエンジェに変わっていた。
エンジェの話だとこれでいちいちダンジョンコアに戻す必要もなくなるんだったな。
召喚の度に魔力を消費していたからそれなら多少楽ではある。
グラムも戻す必要はなかったのかな?
けどエンジェと違ってグラムはでかいからな。
やはりダンジョンコアに戻した方が安心かな。
それよりもエンジェのオレの呼び方が変わらなかったか?
今代の勇者からマスターになってたぞ。
そういやグラムもオレをマスターと呼ぶようになったのは名付けてからだったような······。
「名付けをした者は主人となりワシらはその者に従うことになる。良き主であることを期待するぞ我がマスターよ」
詳しく聞くとダンジョンコアからの召喚は魔力を込めれば誰でも出来るが命令に従うのはマスターと認めた者だけらしい。
名付けをすればマスターになれるが実力がなければ拒否されるそうだ。
知らなかったぞ、そんなこと。
初めからグラムや他のゴーレム達はオレに従ってくれてたから召喚した者に無条件で従うものだと思ってたよ。
「さて、マスターより名ももらったことじゃし本題に入るかの? ワシを召喚した理由があるのじゃろ」
そういやそうだった。
まあ理由といっても国王に言われたから召喚しただけなんだが。
とはいえ聞きたいこともあったしな。
悠久の時を生きる古代種らしいし元の世界に帰る方法とか何か有益な情報が手に入ることを期待しよう。