129 ミールの暴走?
また正義の仮面の姿になってしまっていた······。
オレは今、寮の部屋に戻り項垂れていた。
部屋にエイミとミールの姿はなくオレだけだ。
というか、ついさっきミールと決闘まがいのことをしていたんだよな。
正義の仮面の姿で············。
二人が部屋に戻ってきたらどうしよう。
すごく顔を合わせづらい。
それに正体がバレた可能性がある。
(神眼)のスキルのことをすっかり忘れていた。
あのスキルで鑑定されていたら、それでもう、オレだと正体がバレているかもしれない。
「おや、レイさん帰っていたんですね」
まだ心の準備ができていないところに、エイミとミールが帰ってきてしまった。
「ああ、二人こそ用事は済んだの?」
オレは平静を装い言う。
確か二人は教会に用事があると言って出掛けていたはずだ。
「ええ、それでレイさんにお願いがあるんですが······」
お願い? なんだろうか?
けど、正義の仮面のこと以外に話を逸らせるなら乗っておこうかな。
「以前、リンさんとスミレさんがしてた○○○をワタシにもやらせて下さい」
············っ!!?
いきなりミールは何を言ってるんだ!?
「ミ、ミール!? そんないきなり······」
エイミもあわあわと慌てている。
話を聞くと、教会にはリンに加護について色々聞きに行っていたらしい。
包み隠さず話したのか、リン。
「それでは失礼しますね」
ミールが躊躇なく、オレの服のベルトを外そうとする。いきなりの行動に反応が遅れた。
いやいや、ちょっと待って!?
「待った、ミール!? いきなりそれは······」
「そうでしたね。少しばかし、とばしすぎました」
オレが慌てて言うと、ミールが少し落ち着いたように手を引っ込めた。
よかった、冷静になってくれたようだ。
「まずはワタシから脱ぐべきでしたね。では······」
全然冷静になってなかった!?
オレとエイミは脱ごうとするミールを阻止した。
ミールの様子が明らかにおかしいぞ?
············やはり先程の出来事のせいだろうか。
「ミール······いきなり、なんでこんなことを?」
オレは宥めるようにミールに問いかけた。
「······レイさんは正義の仮面と名乗る、黒いマスク男をご存知ですか?」
「あ、ああ······話には聞いてるけど······」
オレです、とは言えない。
二人は正体に気付いているわけじゃないのか?
それともわかっていて、遠回しにそう言ってるだけなのだろうか?
············わからん。
「実は先程、ワタシはその男に辱しめられてしまいました。だからレイさん、慰めると思ってワタシに身を委ねて下さい」
辱しめられ············まあ、あんなことをしてしまったしな。
だが、慰めるにしてもそれはおかしいだろ?
「ミ、ミール······冷静になろうよ? レイ君も困ってるよ」
「ワタシは冷静ですよ、姉さん」
いや、絶対冷静じゃないと思うぞ。
「レイさん、リンさんやスミレさんにはやらせたのにワタシは駄目なんですか?」
駄目というわけではないが······。
なんでオレの方が責められてるのだろうか?
普通は女の子の方がやりたくないと、拒否するものじゃないの?
「リンとスミレは話の流れでつい······強引にそうなって······」
「だったらワタシが強引にするのも問題ないですね? さあレイさん、観念して下さい」
「ちょっ······ミール!? 待っ······」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結局ミールの押しの強さに負けてシテもらいました。
罪悪感があるけどとても気持ち良かったです······。
途中、エイミはそんなオレ達を直視出来ずに顔を真っ赤にして部屋から飛び出してしまった。
「やってみるとそんなに悪いものでもありませんね。スミレさんの気持ちが少しわかった気がします」
少し照れた表情をしながら口元を拭うミール。
[ミール] レベル153
〈体力〉8220/8220
〈力〉2510〈敏捷〉3190〈魔力〉6090
〈スキル〉
(詠唱破棄)(同時詠唱)(神眼)
(魔力回復速度上昇〈大〉)
(森の精霊の加護〈大〉)
(異世界人の加護〈小〉)
加護スキルが〈仮〉から〈小〉になっていた。
ステータスも大幅に上がっている。
[レイ] レベル433
〈体力〉42800/42800
〈力〉25500〈敏捷〉22950〈魔力〉43100
〈スキル〉
(全状態異常無効)(素材召喚)
(獲得経験値10倍)(同時詠唱)(暴食)
(強化再生)(各種言語習得)(神眼)
(異世界の絆〈3/5〉)
オレの(異世界の絆)の数字も1つ増えていた。
そのためオレのステータスも大幅に上がっている。
「やはり正式なものになると効果も上がっていますね。身体中から力が溢れてくるみたいです」
ミールも自分のステータスを確認したようだ。
「本当ならワタシの後に姉さんにもやってもらうつもりだったのですが············しょうのない姉さんです」
いや······あの反応が普通じゃないのかな?
顔が爆発しそうなくらい真っ赤にして出て行ったけど大丈夫だろうか?
「まあ、姉さんのことは後にするとしてレイさん、今更ですが1つ確認したいことがあります」
ミールが真剣な顔付きでオレを見る。
確認したいこと? なんだろうか?
「先程話に出た正義の仮面というマスク男、ずばり正体はレイさんですね?」
············!?
心臓が飛び跳ねそうなくらいドキリとした。
やはりバレていたのか?
いや、ここはまだ誤魔化せるかも············。
「な、なんでオレが······?」
「ワタシ達が迷宮で(神眼)のスキルを手に入れたことをお忘れですか? あのマスク男を鑑定したらばっちりレイさんと表示されていましたよ」
ああ、やっぱり鑑定されてたのか。
もう誤魔化すのは無理っぽいな。
「レイさんってあんな趣味があったんですね? 正直意外すぎます」
「ち、違う······! あの姿は断じてオレの趣味じゃない!」
「··················え」
オレの返答にミールはキョトンとした表情になった。
あれ? なんか反応がおかしいぞ?
「······もしかしたらとは思ってましたが······。本当にレイさんだったのですね」
このミールの反応、まさか······。
「すみません嘘つきました。実は(神眼)のスキルでもあのマスク男は鑑定不可だったんですよ」
ミールがそう暴露した。
ということは············カマかけられた!?
しまった、嵌められたのか!?
もう本当に弁解は出来そうにない。