117 ラッキーハプニング?
「それじゃあ攻略再開と行こうか」
まだまだ先は長い。下層の攻略は続く。
とは言っても三人とも絶好調で強力な魔物も次々と倒していく。
眠っている内にレベルアップしたステータスが完全に馴染んだのかな?
おかげで今までよりもサクサク進めている。
「すごい調子良いですー! 今ならどんな魔物でも倒せそうですー」
ミウのテンションがいつも以上に高い。
「さっきまでより魔法が撃ちやすくなってるよ」
「ええ、魔力を込めやすくなっていますね」
エイミとミールも身体が軽そうだ。
そのままの勢いで進み、ついに最下層への道までたどり着いた。
「ここを進めば迷宮最下層だ。いよいよ大詰めだな」
オレの言葉に頷く三人。
だが中層と同じならここにも門番がいる可能性がある。
「あっ、見て! 天井に何かいるよっ」
エイミが上を指差す。
それを合図にしたように天井から巨大なモノが落ちてきた。
[ジャイアントゼリー] レベル150
〈体力〉21000/21000
〈力〉1950〈敏捷〉1080〈魔力〉2200
〈スキル〉
(物理耐性〈大〉)(魔法耐性〈中〉)
(自己再生)(分裂)(強酸)
直径20メートルくらいありそうな巨大なスライムだった。
レベルは150。ステータスもなかなか高い。
こいつが最下層への道の門番か。
(物理耐性〈大〉)
物理ダメージを大幅に軽減する。
(魔法耐性〈中〉)
魔法ダメージを軽減する。
物理攻撃にも魔法攻撃にも耐性を持っているのか。
どちらかと言えば魔法の方がダメージは通りそうだが。
「············ッ!!」
巨大スライムが震えたと思ったら巨大な火の球が飛んできた。
スライムは声を出すことはできないのかな?
「エアリアルシールドですー!」
ミウが「風」のシールドを張って防いだ。
「フレイムスピアッ!」
エイミが「炎」の槍を放つ。
巨大スライムの身体を焼き貫くが、すぐに元通りに再生してしまう。
耐性が高い上に(自己再生)スキル持ちか。
厄介だな。
「······ッッッ!!」
巨大スライムがぷるぷる震えたと思うと今度は(分裂)した。
一体一体の大きさは小さくなっているが、全部で30体くらいに増えた。
分裂したスライムがそれぞれ魔法を放ってくる。
「炎」「水」「風」············様々な属性魔法が入り乱れるように飛んでくる。
エイミ、ミール、ミウがそれぞれシールドを張って防いでいるが数が多すぎる。
このままだとまずいな······一気に決めるか。
「エンドレスフレイム!!」
オレは「炎」の最上級魔法を放った。
分裂スライム達の魔法をかき消して焼き尽くす。
「やった、レイ君すごい······」
「っ!? 姉さん、後ろです!」
ほとんど焼き尽くしたと思っていたがエイミの後ろに一体逃れていた。
スライムは体液のようなものをエイミに向かって吐き出した。
「きゃっ!?」
咄嗟に避けるエイミだが完全には避け切れなかった。
「エイミ!」
オレは最後のスライムを魔法で倒し、エイミの容態を確認する。
この液体は············。
――――――ジュワアアアッッ
液体のかかった部分が溶け出した。
··················主にエイミの服が。
「ひぃやああーーっ!!?」
エイミが悲鳴をあげる。
特に胸の部分にかかったらしく、エイミの胸が露になる。
これは漫画やアニメによくある衣服のみを溶かす体液··················などあるわけなくおそらくスライムのスキル(強酸)だろう。
服だけが溶けたのはかかったのが少量だったのと加護のおかげで耐性が上がっていたためだろう。
もっと大量に浴びていたら服だけでは済まなかったはずだ。
「姉さん、これを」
「レ、レイさんは見ちゃダメですー!」
ミールが大きめのハンカチを渡しエイミの胸を隠す。だがそれくらいではエイミの胸は少しはみ出している。
ミウはオレの目を両手で覆った。
オレのアイテムボックスに一応替えの服はあるが当然オレ用············つまり男物だ。
とりあえずオレの上着をエイミに渡した。
少しサイズは大きいがこれで我慢してくれ。
「うううっ············ありがとうレイ君······」
エイミが羞恥の表情で言う。
とんだハプニングがあったが巨大スライムは倒せたので最下層への道は開けた。
そういえば巨大スライムの魔石が見当たらないけど(分裂)で細かくなりすぎたせいかな?
まあそんなことどうでもいいか。
迷宮攻略もいよいよ大詰めだ。




