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14 蜂の巣退治

 この先にキラービーの巣がある。

 そう言ったらリンが慌てたように言う。


「ほ、本当ですかそれは!? キラービーの巣なんて一大事です! ランクCに相当する危険度ですよ!」


 ランクCというと町の危機レベルの危険度だったかな?

 ランクB相当のサイクロプスよりは低めだが、あんな人間サイズの蜂が大量に現れたらサイクロプスより厄介そうだ。


「よし、なら倒しに行くか」

「賛成でござる」

「えっと············ランクCと言えば領主様や神殿に軍を要請して討伐を行うくらい大事(おおごと)なんですけど············そんなついでみたいに」


 大事か。

 確かに今のレベルのリンを連れて行くには危険かもしれないな。


「それじゃあリンは先に町に戻ってて。オレとシノブで倒してくるよ」

「え、ちょっ······!?」

「拙者達に任せるでござるよ!」

「ま、待ってください! わたしも行きますっ、行きますから!」


 結局リンも付いて来ることになった。

 まあ、いざとなったらシノブの薬か回復魔法でなんとかできるかな。


 魔物の反応の場所まで行くと巨大な蜂の巣があった。でかい、でかすぎる。

 蜂の巣というより巨大なドームだ。


「そんな、町の近くにこんな巨大な巣ができていたなんて······」


 リンが驚きの声をあげる。

 普通のキラービーの巣はもう少し小さいものらしい。巣の中に入って戦うのは面倒そうだ。



「シノブ、素材を渡すから薬を作ってくれ」

「了解でござる」


 シノブに素材を渡して薬を作ってもらう。

 殺虫剤である。スプレータイプのだ。

 こちらの世界にはそういうものはなかった。

 さて、問題は人間サイズの蜂に効くかどうか。


「なんですか、それは?」

「こうやって使うものだよ、えいっ!」


 巣の中に向けて殺虫剤を投げ込んだ。

 巣がでかいので特大サイズのを10本以上投げた。



――――プシュウウウッ!!!!!



 モクモクと巣から殺虫剤の煙が上がっていく。


「ギ、ギギ············」


 巣から何匹ものキラービーが出てきてバタバタ倒れていく。うん、効いているな。



〈レベルが上がりました。各種ステータスが上がります〉



 お、レベルアップした。

 殺虫剤を投げ入れただけなんだが、ちゃんと倒したことになるようだ。

 探知魔法で確認すると巣の中の蜂も全滅していた。

 ん? なんかでっかい反応がこっちに向かってきてる。


「な、何を投げたんですか!? キラービーを巣ごと一気に倒すなん――――」

「リン、あぶないっ!!」


 とっさにリンを抱き寄せる。

 巣から巨大な蜂が出てきた。



[グレートクイーンビー] レベル58

〈体力〉1220/1480

〈力〉510〈敏捷〉730〈魔力〉0


〈スキル〉

(猛毒)(腐蝕)



 普通のキラービーより一回りどころかそれ以上に大きい。

 名前からして女王蜂だ。

 しかもグレートとか付いてるし。

 キラービーにも(毒)のスキルはあったがこいつは(猛毒)。

 そして(腐蝕)まである。かなり厄介そうだ。


「ギシャアアアッ!!」


 すげえ怒ってる。

 手下を全滅させられたんだし当然か。

 こいつにも殺虫剤は効いているっぽいが、体力が少ししか減っていない。


「女王、しかも上位種ですか!?」


 リンが大剣を構える。

 しかし、リンのレベルではコイツの相手は厳しそうだ。


「ギアアッ!!!」


 女王蜂が猛毒の針を無差別に撒き散らす。

 ジュワアアッと針の刺さった木が腐っていってるんだがこれ本当に当たっても平気だろうか?

 全状態異常無効スキルがあっても食らいたくないな。


「とう! でござる」


 シノブが小太刀を振るうが、女王蜂はブーンと羽を鳴らして上空に回避する。


「くらえぇーーっ!!」


 リンが上空の女王蜂に向けて魔法を放つ。

 「光」の中級魔法か。小さい光の玉を弾丸のように撃ち出している。

 しかし女王蜂には当たらない。動きが素早い。

 しかもその攻撃でリンを敵と認識したようだ。

 リンに向けて猛毒の針を飛ばす。


「ギシャアアアッ!!」

「リンッ!!」


 オレはリンの盾となって女王蜂の針をくらった。

 さらに女王蜂はこちらに向かってくる。


「レイさんっ!!?」

「このっ!!」


 カウンターで女王蜂を殴り飛ばした。

 それなりに硬いな。一撃じゃ死ななかったか。

 だが、もう瀕死だ。


「リン、今だトドメを!」

「え、は······はい! 砕けろーーっ!!」


 リンが大剣を振り下ろして女王蜂を倒した。

 うん、完全に死んだな。


〈パーティーメンバー(リン)がレベルアップしました〉


 お、格上の魔物を倒したからかリンのレベルが一気に上がった。



[リン]  レベル54

〈体力〉1450/1520

〈力〉610〈敏捷〉420〈魔力〉390


〈スキル〉

(雄叫び)(獣化)(覚醒)(聖なる守り)



 かなり強くなったな。


「レイさんっ、体は······毒は大丈夫なんですか!?」


 リンが慌てて駆け寄ってくる。

 もしかして心配してくれてる?


「リン殿、師匠なら大丈夫でござるよ」

「で、でもクイーンビーの上位種の毒は微量でも即死しかねない程強力なものなんですよ!?」


 ああ、確かに周囲の木や地面を見ればわかるよ。

 かなり危険な毒だ。

 でもオレの体にはまったく効果はなかった。

 さすが全状態異常無効。

 ちゃんと仕事してくれてる。


「大丈夫だよ、ほらなんともない」


 オレは軽く動いて平気だとアピールする。


「ほ、本当ですか······? なんで、でもよかった······」


 リンがへなへなと座り込む。

 本気で心配してくれてたみたいだ。

 よかった、嫌われていたけど死んでほしい程嫌われてはいなかったみたいだな。


「とりあえず一度町に戻ろう。冒険者ギルドにも報告しないといけないし」


 町の危機レベルの魔物が現れたんだし、報告しないわけにはいかないだろう。

 そんなわけで、この日のリンのレベル上げは終わりにしよう。

 リンはかなり疲労していたのでシノブと一緒に先に帰らした。




 オレ一人で冒険者ギルドに向かう。

 受付のミャオさんに事情を話すとすごく驚かれた。

 信じられない話かもしれないがちゃんとギルドカードに載っているし、証拠の女王蜂の死骸も持ってきた。




 おかげでギルドは色々と慌ただしくなったがオレも疲れたので帰らせてもらおう。


「ただいま」

「おかえりでござる、師匠」


 家に帰るとシノブが出迎えてくれた。

 アイラ姉はまだ帰ってないのか。

 ん? シノブから少し湯気が上がっているな。

 さっきまで風呂に入っていたようだ。



 オレも疲れを流したいし入ってくるか。

 効かなかったとはいえ女王蜂の毒針をくらったしね。


「オレもちょっと風呂に入ってくるよ」

「え、あ······師匠、風呂場にはまだ······」


 シノブの言葉を最後まで聞かずに風呂へと向かう。今シノブ何て言おうとしたんだ?

 まあいいか。オレも結構疲れているみたいだ。



 そのまま何も考えずに風呂のある建物の入り口を開け、脱衣場に入る。


「「え?」」


 二つの声が重なる。脱衣場にはリンがいた。

 今風呂から上がったらしく湯気を纏っているが、服はまだ着ていない。

 つまり裸だ。


 頭には獣人族らしい獣耳を生やし、スラッと女性らしいスタイルで可愛らしいシッポも見えた。

 胸はシノブと同じくらいで少しさびしいが···············ってそうじゃない。



 リンの驚きの表情がだんだん羞恥に染まっていく。


「こ······の痴れ者がぁーーっ!!」


 リンが周囲の物を無差別に投げてくる。

 なんか女王蜂の攻撃より怖いんだが······。


「ご、ごめんっ」

「謝ってすますかぁっ!!」


 すぐに外に出たオレだが、リンは素早く服を着て追いかけてきた。


「ちょっと見直したわたしがバカだったですかっ、やはり白黒はっきりつけておくべきですね、尋常に勝負しろーーっ!!」


 言っている意味はよくわからないが物凄く怒っているのはわかる。

 リンは大剣を振りかざしてきた。

 うおっ、ステータス上くらっても死なないと思うけど殺す気か!?

 話を聞いてくれそうにない。ひとまず逃げよう。


「逃がすかぁーーっ!!」


 リンとの追いかけっこが始まった。

 リンはかなり足が速いがステータス上オレの方が素早いのでだんだん距離が離れていく。

 しかし逃げてるだけではリンの怒りは鎮まりそうにない。


 なんとかする方法はないものか······。

 ん? 服のポケットに何か入っている、げっ!?

 これは······。



 最悪なことにオレは異世界に来てまで()()姿()になってしまうのだった。





次回、作品タイトルにもある変態キャラが登場します。

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