114 中層の門番
さあ、遺跡の地下迷宮の攻略開始だ。
この迷宮は上層、中層、下層、最下層の全4階層に分かれている。
オレ達が今いるのは中層だ。
魔物のレベルは上層は10~20くらいだったのだが、中層は50~90くらいと一気に強くなっている。
さっきまでのエイミ、ミール、ミウには厳しい相手だったが、キスしたことで加護が付き、もはや中層の魔物は敵ではなくなっていた。
「グランサイクロンですー!!」
ミウの「風」魔法で魔物の群れが倒されていく。
レベル50くらいのが数十体いたのだが一瞬で全滅していた。
「やったですー! レイさんの愛の力はすごいですー」
愛の力ではなく加護なのだが······。
まあ似たようなものかな?
ミウは「風」属性が得意のようで加護を与えてからはさらに磨きがかかったようだ。
ちなみにエイミは「炎」、ミールは「氷」属性が得意魔法だ。
攻略は順調に進んでいく。
魔物も問題なく倒していき、罠も回避しながら進む。いくつか宝箱も見つけた。
(力の指輪)
身に付けると力が200上昇する。
(解毒のチョーカー)
身に付けると毒に対する耐性がつく。
(結界陣)
およそ6時間魔物を寄せ付けない結界を張る。
消耗品。
中身はこんな感じだった。
正直オレから見たら微妙な効果だが、一般的にはそこそこの品らしい。
「······下に進む道があります」
ミールが通路の先を見て言う。
MAPでもあの先は下層への道だ。
これで中層は終わりみたいだな。
最短距離で進んだからすべてのフロアを回ったわけじゃないけど、攻略して迷宮からの脱出が最優先だからな。
いよいよ下層か。
下層は中層よりも攻略が難しくなるはず。
より慎重に行かないとな。
などと考えて道を進もうとしたら魔物の反応が現れた。
「レ、レイ君っ······あの壁動いてるよっ」
エイミが指差す先では壁の中から巨大な影が現れる。
体長は5~6メートルくらいか?
全身が石で出来た人型······翼のようなのも付いてるから悪魔型の魔物かな。
[ガーディアン・ガーゴイル] レベル120
〈体力〉15000/15000
〈力〉1750〈敏捷〉2200〈魔力〉0
〈スキル〉
(敏捷増加〈中〉)(硬質化)(石化の瞳)
レベル120······ステータスもかなり高い。
魔力は0だが防御力は高そうだ。
魔物の名前からして下層への道の門番みたいな奴か?
「みんな気を付けろ、コイツかなり強いぞっ」
オレの言葉に全員が頷く。
みんなも鑑定魔法でコイツのステータスを確認したようだ。
加護を手に入れて中層攻略で三人はレベル80をすでに超えているが油断できない相手だ。
だが勝てない相手でもない。
「レイさんは手を出さないでもらえますか? この魔物はワタシ達だけで倒します」
ミールがそんなことを言い出した。
危険な相手ではあるが過保護に守りながら先に進んでいったらいざというときに本当に危険なことになるかもしれない。
ミール達だけで戦わせてみるのもいいか。
「大丈夫なのか?」
「心配ないですよレイさんー! あたし達に任せてくださいー」
「が、がんばるよっ!」
ミールだけでなくミウとエイミもやる気のようだ。
やらせてみるか。
ヤバそうになったら助けよう。
「ギギ······」
魔物、ガーディアンがその巨大な腕を振り下ろした。
武器らしい物は持っていないが石で出来たその腕は充分凶悪な凶器だ。
「フリーズミスト!」
ガーディアンの攻撃を避け、ミールが「氷」魔法を放つ。
ガーディアンの身体が徐々に凍り付いていく。
「グランドテンペストー!」
ミウが「風」の上級魔法で追い打ちをかける。
ガーディアンの頑丈な石の身体が削られていく。
「クリムゾンフレイム!」
そしてエイミが「炎」の上級魔法を放った。
クリムゾンフレイムは一点集中の単体攻撃みたいだな。その分威力が高い。
それに三人はオレの渡したヒヒイロカネとオリハルコンの合金杖を持っているため、魔力がかなり上乗せされている。
「グ······ギギ············」
ガーディアンの身体はもうボロボロだ。
動く度に石の破片が崩れている。
「姉さん、ミウネーレさんっ、攻撃が来ます!」
ガーディアンの眼が光る。
おそらくスキルの(石化の瞳)ってやつだな。
光がレーザー光線のように放たれた。
ミールの言葉に反応して三人ともなんとかかわした。
光が当たった場所はピキピキと石化している。
三人とも加護で状態異常にある程度耐性は付いてるだろうけどまともに当たったらどうなるかわからない。
要注意の攻撃だな。
「エミさんっ、ミルさんっ! トドメを行きますよー!」
「う、うんっ、ミウさん!」
「任せてくださいミウネーレさん!」
三人がそれぞれ魔力を集中させる。
そして同時に放った。
「「「ゴッドブレス!!!」」」
三人の協力魔法だ。
これは「風」の上級魔法だな。
目に見えない圧力がガーディアンを押し潰していく。
「ギ············ガガッ······」
圧力に耐えきれずガーディアンが砕け散った。
倒せたようだ。
砕けた破片の中にガーディアンの魔石がある。
回収しておくか。
「やりましたー、勝利ですー!」
「か、勝てたよ······!」
「今のワタシ達なら当然です」
三人が手を取り合い喜んだ。
格上の相手だったけど、危なげなく倒した。
三人とも思っていた以上に強くなったみたいだ。