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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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111 危機一髪

(エイミside)


 蜘蛛とコウモリの魔物を倒した後、今度は巨大な蛇の魔物が現れた。

 レベル94············とても勝てる相手じゃない。



「逃げますよっ、姉さん!」

「う、うん!」


 ミールも勝ち目が無いと判断したみたい。

 急いで部屋の出入口の方へ走る。

 狭い通路ならあの巨大蛇じゃ通れないはず。


「シャアアーーッ!!」


 巨大蛇が追いかけてくる。

 大きいのにすごく速い!?

 これじゃあ逃げ切れない。


「姉さん、もう一度複合魔法を!」

「わ、わかった! 任せて······」


 走りながらミールと魔力を集中する。


「「エクスプロード!!」」


 巨大蛇に向けてわたし達は火の球を放った。

 火の球は巨大蛇に直撃して大爆発を起こした。

 あれならいくらレベル94の魔物でも······。


「シャアアーーッ!!」


 全然効いてない!?

 爆煙から姿を現した巨大蛇は大きく口を開けてわたしに向かってきた。


「姉さんっ!!」


 とっさにミールがわたしを押し退けた。


「うっ、······ああーーっ!!」

「ミ、ミール!!?」


 ミールが右腕を巨大蛇に咬み付かれた!?

 わたしを庇ったせいでミールが············。

 ミールの右腕には巨大蛇の牙が喰い込み血がいっぱい流れてる。

 巨大蛇は咬み付いた口を離そうとしない。



―――――――グチグチグチッ······ギリリッ


「うぐっ············ああーーっ!!?」


 巨大蛇はミールの腕を咬み千切ろうとしてる。

 ミールは苦痛で表情を歪ませている。


「ミールを離せっ!! クリムゾンフレイム!!!」


 わたしは「炎」の上級魔法を撃って巨大蛇の注意を逸らす。

 さすがに至近距離から撃ったから少しは効いたみたい。

 口が少し開いたからミールの右腕を引き抜く。


「大丈夫!? ミール······!」

「······なんとか······平気です」


 ············平気なはずないよ。

 咬み千切られはしなかったけどミールの腕からすごい量の血が流れてる。

 これじゃあ出血だけでミールが死んじゃうよ!



「ミールだけでも逃げて······わたしが囮になるから」

「······なにを······言ってるんですか······姉さんっ」


 わたしは一歩前に出た。

 巨大蛇はさっきの「炎」魔法を警戒しているようで唸りをあげて睨んでくるだけで近付いてこない。


 怖いとか······そんなこと言ってる場合じゃない。

 わたしがしっかりしないと············ミールは絶対に死なせない。


「大丈夫、あいつから逃げ切ればレイ君達が助けに来てくれるから············だからミールは早く逃げて!」

「············いやですっ······姉さんを囮にするなんて······約束を忘れたんですかっ!? 父様の汚名を晴らすまで二人で一緒に生きると······」

「ミールが生きてくれれば······お父さんの汚名はきっと晴らせるよ。だからここで二人とも死ぬわけにはいかないよ」

「············姉さんっ!!」

「頼りないわたしだったけど············最後くらい、お姉ちゃんらしくさせてよ」


 わたしは魔力を込めて巨大蛇に放った。

 巨大蛇の注意は完全にわたしに向いた。


「シャアアーーッ!!!」


 巨大蛇は大きく口を開けてわたしに向かってきた。

 今度は逃げられそうにない。

 わたしは魔力を最大まで込めた。

 どうせ食べられるなら······あいつの中に特大の炎を放ってやる!


「いやっ············姉さんーーっ!!」


 ミールの悲痛の叫びが聞こえた。

 ············ごめんね、ミール。



――――――――ゴッ!!!



 巨大蛇がわたしを飲み込む············寸前で吹き飛んだ。

 え? 何が起きたの······?


「間に合った!」

「レ、レイ君······!?」


 レイ君だ。レイ君が「風」魔法で巨大蛇を吹き飛ばしたらしい。


「シャアアーーッ!!!」


 巨大蛇はレイ君に攻撃対象を移した。

 レイ君は慌てた様子もなく剣を構えた。

 ······あれ? レイ君の持ってる剣、さっきまで使ってたミスリル剣じゃない。

 あの神々しい輝きはもしかして············オリハルコン?


「はあっ!!」

「ギシャアアーーッ!!?」


 まさに一刀両断。

 巨大蛇は真っ二つになって倒れた。

 すごい············レイ君ってここまで強かったんだ。


「エミさんっ、ミルさんっ、大丈夫ですかー!?」


 レイ君の後ろからミウさんが姿を見せた。


「レイさん······ミウネーレさんも来てくれたんですか············」

「うわわっ······ミルさんっ、すごい血!?

すぐにこれを使ってくださいー!」


 ミウさんは薬を取り出すとミールの傷口にかけた。

 ミールの傷は何事もなかったように治った。

 も、もしかして上級······違う、特級ポーション?


 わたしはすぐにミールに駆け寄った。


「ミ、ミール······! よかった············」


―――――――――!!!



 そんなわたしの頬をミールが叩いた。

 ············痛いよ、ミール。


「姉さんのばかっ!! 何であんな無茶したんですかっ!?」

「ミ······ミール······」


 いつもはほとんど表情を変えないミールが涙を溜めて怒ってる。

 それだけわたしのことを心配してくれてたみたい······。


「······お願いですから······自分が犠牲になるようなマネはやめてくださいっ······」

「············うん、······ごめんねミール······」


 わたしも緊張が解けたためか涙が溢れてきた。


「でも······ミールだってわたしを庇って大怪我しちゃったじゃんっ!わたしだって······ミールが死んじゃうと思ったんだから······」

「あ、あれは······とっさのことだったのでつい体が······」

「ミールだって······わたしのこと言えないじゃんっ!」


 ダメ······もう涙を止められない。

 それはミールも同じみたい。

 わたしとミールは揃って声をあげて泣いた。





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