109 北の森の遺跡
教会の手伝いをしてから数日が経った。
本当にあの日は色々あって大変だった。
いつの間にか正義の仮面の姿になっていたし、その騒動が終わってから教会に戻ったらスミレとリンにシテもらうことになるし······。
アレ············スミレへのごほうびだったんだよな?
なんかオレの方が得した気がするんだが。
まあそのことは置いておくとして。
あれから数日、学園での生活は平穏だった。
特に問題もなかったおかげで精神的に疲れもなく過ごせた。
そして今日はまた学園が休みの日だ。
そんな日に何をしているのかというと······。
「さあレイさんー! エミさん、ミルさん、張り切って行きましょうー!」
テンションの高い声が響く。
声の主はミウネーレことミウだ。
横にはエイミとミールの姿もある。
今、オレ達は四人で王都の外に出ていた。
色々忙しくなかなか時間が合わなかったミウも今日は一緒になれるということで休みに付き合うことにした。
王都の中の案内は先日エイミとミールにしてもらったのでミウにはレベル上げもかねて王都の外を案内してもらうことにした。
王都の周辺は騎士団が巡回しているので大した魔物はいない。
しかし冒険者ギルドで北の森の中にある遺跡に魔物が住み着いているので討伐してほしいという依頼があったのでそれを受けた。
遺跡は石造りの巨大な建造物なのだそうだが、いつの物か詳しいことはわかっていないらしい。
そういう遺跡には特別なお宝がありそうだと少し期待している。
エイミとミールもレベル上げに連れていってほしいとのことだったので一緒に来ている。
ミウもエイミとミールとは仲が良さそうなので問題はなさそうだ。
いつの間にか二人をあだ名で呼んでいるし。
この辺の魔物はレベル10~15くらい、高くても20くらいだ。三人ともレベル50前後あるので余裕で倒せるだろう。
予想通り途中何度か魔物と遭遇したが危なげなく倒していた。
問題の森に入ってからも同じように魔物を倒しながら進んでいった。
そして遺跡に割とすんなりたどり着いた。
「へえ、これがその遺跡か······」
聞いていた通りかなり大きく、そして古い建造物だった。探知魔法で調べると中にはかなりの数の魔物の反応がある。
依頼内容通り、この遺跡は魔物の住処になっているようだ。
「国の調査団も何度か調べたそうですけど結局何の為の建物かはわからなかったそうですー。何百年も前に建てられたってくらいですかねー、わかっているのは」
ミウが説明してくれた。
遺跡の中は国や冒険者達が探索し尽くしているのでお宝とかは残っていないだろうとのこと。
ちょっと残念だがそこまで期待していたわけでもないので問題はない。
だったら依頼を遂行するだけだ。
王都から近い場所なので放っておいて魔物が数を増やし続け、襲ってくる可能性もある。
今でもそれなりの数がいる。
ちなみにエイミとミール、そしてミウも遺跡に入ったことはないらしい。
「じゃあオレが先頭を歩くからみんな付いて来てくれ」
オレの探知魔法とMAPでどこに何があるのか、魔物の位置などもすべてわかる。
しかしこの遺跡、思ってたよりもずっと広いな。
建物が大きいからそれなりの規模だとは思ってたけど地下空間まである。
本当に調査し尽くしたのかと思う程だ。
「エイミ、その壁に罠があるから触らないで」
「ええっ!? レ、レイ君よくわかるね······」
オレならどこに罠があるのかも一目瞭然だ。
矢が飛んできたり毒ガスを噴き出すのだったり様々な罠がある。
しかも一度きりではなく何度でも発動するタイプの罠だ。
だから調査し尽くされても罠は残っているのか。
「ゲギャギャッ!」
「エアブレイドですー!」
現れた魔物をミウが「風」魔法で倒した。
結構奥まで来たし魔物も大分減ったようだ。
だが魔物の数は多いが弱いのばかりだ。
だからここまでで三人ともまだレベルは2くらいしか上がっていない。
格下ばかりだったしアイラ姉とシノブがいないから獲得経験値も10倍にしかならないからな。
まあでも魔物との戦いに慣れてない三人が実戦するだけでも経験になるかな。
「ミウネーレさんはずいぶん動きがいいですね」
「あたしはお兄様によく稽古の相手をしてもらってましたからー」
「ミウさんのお兄さんって確か王国騎士団の隊長さんだったよね」
三人のガールズトークが始まった。
本当に仲良いな。
エイミも普通に話せているし。
「ミウネーレさんはレイさんが学園に入る前から知り合いだったんですよね? レイさんについてどれくらい知っているんですか?」
「わ、わたしも聞きたいかも······レイ君って秘密が多いから」
「えーと······それなりに知ってますけどー」
ミールとエイミの質問に答えていいのか目で尋ねてきた。オレは首を横に振った。
「すみません、秘密ですー」
ミウがごめんね、といった表情で言う。
二人は少し不満そうにしていたがそれ以上は聞かなかった。
そんな感じにほのぼのと遺跡の探索を続ける。
少し時間がかかったがほぼすべてのフロアを回り魔物を倒した。
一番奥の大部屋には魔物のボスっぽい奴がいたが
レベルは35で他の魔物より少し強いくらいだったので問題なく倒せた。
やはりと言うかお宝はなかった。少し残念。
「これで依頼は終わりでよさそうですねー、大体の部屋は回りましたしー」
ミウが元気良く言う。
まったく疲れた様子はないな。
エイミとミールも同じ感じだ。
「そうだね。後は地下くらいだけど入口が見当たらないから入れないしね」
MAPで調べても地下空間への入口が見つからない。
どこかで出入口が塞がってるのかな?
「地下······ですかー?」
ミウが首を傾げて言う。
「ああ、探知魔法で見る限り結構広い地下空間があるんだけど」
「この遺跡に地下なんてあるんですかー!?」
おや? ミウは地下のことを知らないのか?
もしかして調査も地下は行われていないのか?
確かに入口らしきものはないから地下の存在が知られていなくても不思議じゃない。
けど、それならどうやって入ろうかな。
もう一度MAPで入れそうな場所を調べ······。
――――――――カチッ
············ん? 何だ今の音······。
「ひぃやあああーーっ!!?」
「姉さんっ!?」
突然エイミの足下に穴が開き下へと落ちてしまった。
ミールが手を伸ばしエイミの腕を掴むが一緒に落ちてしまう。
まさか落とし穴!?
だが罠の反応はなかったぞ!?
「エミさんっ、ミルさんっ!?」
ミウも手を伸ばそうとするがその前に二人が落ちた穴が閉じてしまう。
慌てて開けようとしたがビクともしない。
オリハルコンの剣でも斬れないぞ、この床!?
オレは探知魔法で二人の反応を追った。
「大丈夫、二人は無事だよミウ」
······今の所はだが。
あの落とし穴の中は少し急な滑り台のようになっていたようで二人は怪我なく地下に落ちたようだ。
この落とし穴、罠の反応はなかったのでどうやらただの地下への入口らしい。
だが今まで発見されなかったものが何で今開いたんだ?
まあそんなことはどうでもいい。
それよりも早くエイミとミールを助けに行かないと。
MAPを隅々まで調べてようやくわかったが地下への入口は複数あり、一度閉まると他の入口を開けないと再び開かない仕様のようだ。
つまり地下に行くには他の入口を探さなくてはならない。
幸いすぐに別のフロアで入口を見つけたので後を追う。
「もちろんあたしも行きますよー!」
ミウを連れていくか迷ったが一人残すよりは一緒の方がいいか。
地下にも魔物の反応がある。
早く二人と合流しよう!




