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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章② 11 決着

――――――――(side off)―――――――――


 エレナは一人、食獣(ルナティック・)植物(プラント)の本体のもとに来ていた。

 エレナの身体からは「聖」の光が放たれているため、枝や根を寄せ付けていなかった。



「グウウッ······」


 食獣(ルナティック・)植物(プラント)の成長は凄まじい。

 もうすでに最初に見た時よりも数倍の大きさにまでなっていた。

 見上げても頂上が見えない程に。


「私の魔力······「聖」の力、全部使っても構わない············目の前の敵を討ち滅ぼして······女神様······私に力を!」


 エレナが魔力を集中させる。

 自分の中のすべての魔力を集めるように。


「ガアアアッ!!!」


 当然それを黙って見ているわけなかった。

 食獣(ルナティック・)植物(プラント)は無数の枝をすべてエレナに向けて伸ばした。



――――――――バシュウウッ


 しかしエレナは「聖」なる光をさらに強めて向かってきた枝を消滅させた。

 エレナはユウ達と共にレーデの森の魔物と戦っていたため今のレベルは12まで上がっている。

 だが今のエレナの魔力はとてもレベル12のものとは思えない程だ。


「邪悪なる者を浄化させる············

ホーリーリュオーラ!!!」


 エレナが両手から「聖」なる光を放った。

 これは最上級クラスの「聖」魔法だ。


「ギュアアアーーッ!!?」


 「聖」なる力によって食獣(ルナティック・)植物(プラント)が叫び声をあげながら消滅していく。

 「聖」属性の力を浴びた魔物は再生も成長もしないようだ。


「く······ううっ······」


 しかしエレナの表情も苦し気だ。

 最上級クラスの魔法はやはりエレナには負担が大きすぎる。


「グ······アアアッ······」


 食獣(ルナティック・)植物(プラント)も簡単には完全消滅はしない。

 エレナの「聖」なる力が消えれば再び再生と成長が始まるだろう。

 エレナは一瞬たりとも力を緩められない。


「う″っ······こん······な時に······発作が······」


 そんな状況でエレナは病気の発作に襲われる。

 通常であれば軽めの発作だったがこの状況では致命的だ。魔力を解放する力が緩んでしまう。


「ガアアアッ!!!」


 そのスキを食獣(ルナティック・)植物(プラント)は見逃さなかった。

 すべての枝や根をエレナに向けて伸ばした。



―――――――ドスッ!!!


 真っ赤な鮮血が散った。

 しかしそれはエレナの血ではない。


「よかった······なんとか間に合ったよ」

「ユ、ユウ······!?」


 エレナが驚きの声をあげる。

 ユウがエレナの前に立ち、向かってきた枝や根を防いでいた。

 だが撃退出来なかったいくつかがユウの身体を貫いている。


「ギガントシュート!!」

「ブラッドニードルですぅ!!」


 テリアとミリィも現れ、魔法で食獣(ルナティック・)植物(プラント)に攻撃する。


「ユウ······どうして、逃げなかったのよ······!?」

「エレナを置いて逃げられるはずないよ」


 エレナが傷付いたユウの身体を回復させた。


「エレナのバカ······。一人で犠牲になるようなこと言わないでよ」

「だって············それよりも何があったのよ? ······ユウの魔力············さっきまでよりも強くなってない?」


 エレナの指摘したようにユウの魔力は格段に上がっていた。


「ついさっきぼくの勇者のスキルレベルが上がったんだよ。そのおかげでここまですぐに来れたんだ」

「勇者······? ユウって······勇者だったの······?」

「ぼくは勇者なんてやるつもりはないんだけどね」


 驚くエレナにユウは笑いかける。


「ウガアアアーーッ!!!」


 食獣(ルナティック・)植物(プラント)が怒りの込められたような唸り声をあげる。

 ユウの勇者のスキルと()()()()()()()に強い敵意を感じているようだ。


「でも今は別だよ。ルナティック・プラント············ぼくは勇者としてお前を倒す」


 ユウはそんな食獣(ルナティック・)植物(プラント)に恐れも怯えも感じていない。


「テリア、ミリィ! 準備はいい?」

「いつでもいいわよ、ユウ!」

「オッケーですぅ! ユウ様ぁ!」


 テリアとミリィが枝や根を撃退しながらユウに魔力を送った。


「エレナも力を貸して。ぼく達四人が力を合わせたらあんな魔物、敵じゃないよ!」


 ユウがエレナに右手を差し出した。

 ユウの笑顔にエレナは安心したように手を取った。


「ガアアアッ!!!」


 食獣(ルナティック・)植物(プラント)が再び唸り声をあげる。

 残るすべての枝や根をユウ達に向けた。


「いくよ、エレナ!」

「わかったわ、ユウ! ······「聖」なる力よ!」


 ユウとエレナが手を繋ぎながら魔力を高める。


「「敵を斬り裂け!!」」


 ユウが(物質具現化)で超巨大な剣を作り出す。

 食獣(ルナティック・)植物(プラント)に匹敵する大きさの剣だ。

 そしてその剣にエレナの「聖」属性の力が加わる。


「「ホーリーブレード!!!」」



―――――――ズバァァアアアッ!!!


「ギャオオオーッ!!!??」


 巨大な「聖」なる剣が食獣(ルナティック・)植物(プラント)を斬り裂いた。

 食獣(ルナティック・)植物(プラント)は叫び声をあげて消滅していく。

 伝説の魔物もユウ、テリア、ミリィ、そしてエレナの協力魔法をまともに受けてはひとたまりもない。

 今度こそ完全に消滅した。



 丘やレーデの森を埋め尽くした根も、

 食獣(ルナティック・)植物(プラント)本体もすべて消滅した。


「勝った······私達、伝説の魔物を倒したんだ······」


 エレナが静かに勝利を喜んだ。

 もうまもなく太陽が昇り、長い夜は終わろうとしていた。






 伝説の食獣植物を倒し、周囲は元の景色に戻っていった。

 ルナティック・プラントの本体があった場所では何かが光っている。


「ねえ、あれルナリーフじゃない?」


 テリアが言う。

 ユウ達はすぐにその光の元を調べる。


「よかった! 無事だったんだ、しかも花が結晶化してる!」


 ユウが喜びの声をあげる。

 光っていた所にはルナリーフの花の結晶と1つの植物の種、そして大きな魔石があった。


「これなら薬を作るのに充分だよ、エレナ! エレナの病気もこれで治せるよ!」


 ユウはまるで自分のことのように喜んでいた。

 食獣(ルナティック・)植物(プラント)は「聖」属性の力で倒した。

 悪しき者を滅し、正しき者に祝福を与える「聖」なる力のおかげでルナリーフは無事だったのかもしれない。


「ルナリーフの隣にある種は何かしら? ルナリーフの種とは違うみたいだけど······もしかしてあの魔物の種?」

「危険ですよぉ! そんな種燃やしちゃいましょうよぉ!」


 テリアの言葉にミリィが言う。


「いや、とっておこうかな。何かに使えるかも。満月の光と魔力が無ければ発芽しないはずだし」


 ユウが種をビンに入れて収納袋に仕舞った。

 ルナリーフと魔石も回収してユウ達はヴィーラルの町に戻った。

 ちなみに病院を抜け出したことはすでにバレていたようで戻ったユウ達はこってり叱られることとなった。






 その後ユウはルナリーフの花から薬を作り、エレナに飲ませた。

 薬を飲んでからのエレナの体調は日を追うごとに良くなっていき医者の診断でも病気の完治を告げられた。

 15年もの間エレナの身体を蝕んでいた病気のため完治したと言ってもリハビリも必要だが。

 エレナの父親には涙を流す程に感謝された。



 こうして、ユウ達との出会いが死の運命にあった一人の少女を救い出した。

 死の運命から逃れたエレナは今後ユウ達と深く関わっていくことになる。

 それは()()()()()だったのかもしれない。




[ユウ] レベル245

〈体力〉18200/18200

〈力〉4550〈敏捷〉4050〈魔力〉8800


〈スキル〉

(物質具現化)(詠唱破棄)

(魔力回復速度上昇〈大〉)

(勇者の資格〈2/7〉)




[エレナ] レベル25

〈体力〉200/200

〈力〉60〈敏捷〉190〈魔力〉550


〈スキル〉

(魔力増加〈小〉)(限界突破)(詠唱短縮)

(聖女の資格〈1/9〉〈NEW〉)



 ()()()の聖女候補が誕生したのだった。






今回で番外編は終わりになります。

次回からは本編に戻ります。


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