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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章② 8 レーデの森

―――――――――(side off)―――――――――


 夜になり、普段ならもうそろそろ寝る時間帯となった。ユウとエレナはこっそり病院を抜け出して外に出た。

 バレにくくするためにエレナのベッドにはそっくりの人形を(物質具現化)スキルで作り出して擬装している。


「こういうのって、何かドキドキするわね」

「あはははっ、見つかったら怒られるけどね」




 外に出てテリアとミリィとも合流し、四人はレーデの森へと向かった。


「明るい時と違って、結構不気味ね」


 レーデの森に入り、周囲を見回しながらテリアが言う。


「魔物じゃなくて、オバケとか出そうですねぇ?」

「や、やめてよミリィ······そういうこと言うの」


 ミリィの言葉にエレナが身体を震わせる。


「レーデの森はその昔、魔王軍との戦いを繰り広げられた場所と言われているのよ。勇者が強力な魔物を封印したという話もあるし······。明るい内はともかく、夜に近寄る人なんて普通いないわよ」


 エレナが言う。


「魔王軍かあ、ぼく達の町も、その侵攻から逃れるために結界を張っていたし、この辺も被害にあっていたんだね」


 ユウが無邪気に言った。



――――――ザッ、ザッ、ザッ······



「さっそく魔物が現れたわよ」


 テリアが言い、全員が戦闘態勢に入る。

 エレナを守るためにユウ達が陣を組む。


「グルルッ」「ガルルッ······」「ガウウッ······」


 ユウ達の周囲を狼の魔物の群れが囲んでいた。

 ざっと見て数十匹はいる。


「レーデウルフ······! こいつら、群れなら格上の相手にも襲いかかる危険な魔物よ······!」


 エレナが怯えた声で言う。


「ミリィって魔物の言葉がある程度わかるんだよね? こいつらが何て言ってるかわかる?」

「ん~、言葉はわかりませんけどぉ、今夜はごちそうだ~って言ってそうですねぇ」

「あはははっ、ぼくにもそう見えるよ」


 怯えているのはエレナだけで、ユウとミリィ、そしてテリアは緊張感の欠片もない。

 魔物の群れに囲まれているのに、まったく動揺していないようだ。


「安心して、エレナには指一本触れさせないからね」


 ユウが一歩前に出た。


「「「ガアアアッ!!!」」」


 レーデウルフ達が一斉に襲いかかってきた。


「くらいなよっ! ソード・レイン!!」


 ユウが(物質具現化)で無数の剣を作り出し、雨のようにレーデウルフ達に放った。


「クラッシュアロー!!」


 テリアも弓矢を作り出して次々と放った。


「ブラッディ・レイン!!」


 ミリィは自らの血液に魔力を送り放った。

 鋭い刃と化した血の雨が、レーデウルフ達に降りそそぐ。


「ガアアッ」「ギィアッ」「ガグゥッ」


 ユウ達の魔法でレーデウルフを次々と倒していく。

 レーデウルフのレベルは20~25なので、ユウ達の敵ではない。


「す、すごい······。ユウ達、本当に強かったんだ······」


 話には聞いていたが、あまりに圧倒的な強さにエレナが驚く。

 ちなみにエレナのレベルは8である。


「グルルッ······!!」


 ユウ達の強さに警戒してレーデウルフ達が後ずさる。

 しかし、逃げる気はないようだ。


「まだ半分以上残ってるみたいだね」


 ユウが再び魔力を込める。


「アオーーーーンッ!!」


 レーデウルフの一匹が遠吠えをあげると、他の魔物は陣を組むように態勢を変えた。


「今、吠えたのがこいつらのボスのようね」


 テリアが油断なく構える。


「あ、そうだ。ミリィ、あいつの血を吸える?」

「あんまり美味しそうじゃないですけど、やってみますかぁ?」


 ユウが何か思い付いたようで、ミリィに指示を出している。


「テリア!」

「わかってるわ、ユウ!」


 ユウとテリアが雑魚の足止めをして、ボスへの道を拓いていく。

 二人とも息がピッタリだ。

 そしてミリィがレーデウルフのボスに飛び付く。


「それじゃあ、いただきま~す」


 ミリィがボスの首筋に噛み付き、血を吸う。


「ん~、思ったよりは不味くないですねぇ」


 血を吸ったミリィが口元を拭う。

 そんなミリィにボス以外のレーデウルフが襲いかかる。


「ミリィ、あぶない!」


 エレナが叫ぶ。

 しかし、当のミリィは余裕顔だ。


「もう大丈夫ですよ、エレエレ~。はいっ」

「アオーーーンッ!!」


 ミリィが命令するとボスが遠吠えをあげた。

 すると残ったレーデウルフ達がどこかに去っていった。その後を追うようにボスも走り去っていった。


「な、なに······? どうなったの?」


 エレナは状況を理解できていない。


「ミリィは血を吸った相手を自在に操れるんだよ。だからボスを操って、ここから去るように命令させたんだ」


 ユウがわかりやすく説明する。

 倒すことも可能だが、別にユウ達は無駄に魔物を殺そうとも思っていない。

 避けられる戦いなら避けるべきだと思っている。


「さ、また魔物が出る前に先に急ぎましょ」


 テリアが言い、ユウ達は再び歩き出した。





 途中、何度か魔物に襲われながらも、すべて撃退して目的の丘までたどり着いた。

 空には3つの月が浮かび、2つは立派な満月だった。


「種は植え終わったよ。後は満月の光をもう少し浴びれば芽を出すはずだよ」


 ユウは丘の一番良い場所に種を植えた。


「気持ちいい風ね。魔物さえ現れなければいい所なんだけど」


 テリアが適当な場所に座る。


「············すごい星空」


 空を見上げエレナが言う。

 見渡しの良いこの場所は星空も絶景だった。


「町で見る空よりもよっぽど綺麗ですねぇ」


 ミリィが普段は仕舞っている翼を広げて、気持ち良さそうに飛んでいた。


「こんな星空初めて············本当にすごい」


 病気のエレナは、普段こんな場所に来ることはないだろう。

 町の外で見る初めての星空に感動していた。


「ぼくもすごいと思うよ。本当にキレイだね」

「私これが見れただけでも、ここに来てよかったと思うわ」


 ユウが自然にエレナの隣に座った。

 魔物が現れる様子もなく和やかな雰囲気だ。

 ユウ達はルナリーフが発芽するまで、この幻想的な光景を楽しんだ。





 そうこうして時間は過ぎ、夜が深くなってくる頃、変化が起きた。


「見て、ユウが種を植えた場所が光ってるわよ」


 テリアが指差す。

 そこからは満月や星空の光とは別に、光輝いていた。


「ようやく充分な光が集まったみたいだね。もうすぐ芽を出すはずだよ」


 ユウ達が光っている所に集まる。


「あ、出てきましたよぉ」


 ミリィが声をあげる。

 土の中からルナリーフの芽が出てきた。

 そしてそれはみるみる内に成長していき、あざやかな花を咲かせた。


「きれい······これが······」

「うん、間違いないね。これがルナリーフだよ」


 エレナが思わずつぶやき、ユウが答えた。


「後はこれを調合して薬を作るだけだよ」


 ここまでは順調だ。

 後は町に戻り薬を作れば、エレナの病気を治せるはず。


「じゃあそろそろ町に戻りましょう。早く戻らないと病院を抜け出したことがバレるかもしれないし」


 テリアが言い、ユウがルナリーフを採取しようとするが······。




―――――ゴゴゴッ、ゴゴッ······


 突然地鳴りが響き、周囲が揺れる。


「······地震かな?」

「······違います、ユウ様ぁ······。何かが地面の下にいるみたいですよぉ?」


 ユウ達が周囲を警戒する。



――――――ドッ!! バババッ!!!



 地面から飛び出すように何かが現れた。

 小さな植物と思われたが、それはあっという間に成長して大樹となった。

 大樹はルナリーフの真下から現れ、そのままルナリーフを呑み込んでしまった。


「ああっ!? ルナリーフが!」


 ユウが声をあげる。


「な、なんなの、この樹!?」

「魔物みたいですよぉ!」


 予想外の事態にテリアとミリィも慌てた様子を見せる。



「ガアアアッ!!!!!」


 ミリィが指摘したように、この大樹は魔物の一種のようだ。

 大樹の幹の部分から口を開き、凄まじい唸り声をあげた。






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