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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章② 4 エレナの病気

―――――――――(side off)―――――――――


 ユウがヴィーラルの病院に来てから五日が過ぎた。もうユウの体調は大分回復していた。


「ユウ、外に買い物に行きたいから付き合ってくれない?」


 エレナとユウはもうずいぶんと仲良くなっていた。エレナの方から何かしようと誘って来るくらいだ。


「いいよ! ぼくもこの町を見たかったし」

「ちょっと待ちなさいユウ、アンタ病人なんだからおとなしくしてないと駄目でしょ」


 あっさり頷くユウだがテリアが待ったをかける。


「もうだいぶ体調良くなってきたんでしょ? それなら派手な運動さえしなきゃ病室にこもっているより外に出た方が身体にもいいわよ」

「うん、ぼくも久しぶりに外に出たい!」


 エレナとユウが言う。


「でも············エレナの方は大丈夫なの? アナタも

病人でしょ?」

「そうよ。だから私は一人での外出は禁止されてるの。普通はお医者さんの誰かに付き添いをお願いするんだけど今は忙しくて誰も手が空かないんだって」

「ユウだって病人よ。病人二人で出かけさせるわけにはいかないわよ」


 テリアの言うことは正論だった。

 体調が万全ではない二人だけで外出させるわけにはいかない。


「じゃああなたかミリィさんも付き添ってよ。それならいいでしょ? パパやお医者さん達には私から言っておくから」

「はいはいは~い! それじゃあミリィが行きま~す!」


 エレナの提案にミリィが元気良く手を挙げた。

 もちろんそれを黙って了承するテリアではない。

 結局ユウ、エレナ、テリア、ミリィの四人で外出することになった。







 医者の許可ももらい、四人は外に出た。

 夕暮れ前には必ず戻るように厳命されたが外出はできるようだ。


 ずっと病院にいたためユウにとってヴィーラルの町を回るのは今日が初めてになる。

 ヴィーラルはそれほど大きい町ではないが商店街などはそれなりに賑わっていた。


「お、エレナちゃん今日は外に出れるのかい? 何か買っていかないか?」

「今日は他に用事があるの。また今度にするわ」


 店の人がエレナを見ると笑顔で声をかけてくる。

 エレナは無表情で素っ気なく、それを断っていく。


「エレナ人気あるんだね。みんな声をかけてきてるよ」


 ユウが言う。

 エレナとは対称的にユウは笑顔で店の人達に応えていた。


「······珍しいだけよ。私が外に出るなんて滅多にないもの」

「滅多に······?」


 エレナの言葉に違和感を感じるテリア。


「そーですかねぇ? みんなエレエレに対してやさしさを感じますけどぉ」


 ミリィが素直な感想を言う。


「······ねえ、そのエレエレって呼び方なんとかならない? できれば普通に呼んでほしいんだけど」

「え~、いいと思うんですけどねぇ? ん~······じゃあツンエレなんてどうですかぁ?」

「ツン············何それ······?」

「ツンツンしてるからツンエレですよぉ?これなら可愛くないですかぁ?」

「············やっぱりエレエレでいいわ」


 諦めたようにエレナが言う。

 ミリィはテリアをテリっちと呼んだりと人にあだ名を付けたがる。


「ところでエレナ、何か買いたい物があるの?」

「ええ、まずはここよ」


 そう言ってエレナが入ったのはいわゆる書店のような店だ。

 辞書やレシピ本といった専門書から子供向けの絵本、娯楽書など様々なものがある。


「そういえばエレナ、恋愛ストーリーの書物を色々持ってたね」


 この五日間ユウはエレナから色々な書物を借りて読んでいた。


「今日は新作の発売日なの。あ、あったわ!」


 目当ての書物を見つけたらしくエレナは年相応にはしゃいだ。

 色々と選んでいたがどれも男女の恋愛モノだ。

 ちなみにユウは冒険活劇が好みのようでいくつか興味を示していた。


「続きが気になっていたのよ。手に入ってよかったわ」


 欲しかった書物が手に入って上機嫌に言う。

 この無邪気な表情が素のエレナのようだ。


「あ、可愛い! これも新しいの出てたんだ!」


 次に向かったのはぬいぐるみ屋だった。

 色々な動物のぬいぐるみや人形が置かれている。


「ねえユウ、どれがいいと思う?」

「ん~、どれも可愛いと思うけど」

「あ、ユウ様、エレエレこれなんてどうですかぁ?」


 そう言ってミリィが持ってきたのは黒い歪な形をしたモノに目玉が付いたとても可愛いとは言えないものだった。


「············それは······ちょっと······」


 エレナが少し引いていた。

 引きつった笑みで応える。

 テリアも同様の表情だ。


「ぼくは可愛いと思うよ、ミリィ」

「ですよね~、ユウ様ぁ♡」


 ユウが笑顔で言いミリィは上機嫌だ。


「私はこっちの方が可愛いと思うわ」


 エレナが手にしたのは少し大きめのネコのような動物のぬいぐるみだ。


「うん、そっちも可愛いね」


 ミリィが手にしたものと同じような反応をするユウ。


「え~、ユウ様ぁ、そんなのとミリィが選んだのを一緒にしないでくださいよぉ」

「それは私のセリフよ! どう見てもこっちの方が可愛いでしょ!?」

「え~、絶対ミリィが選んだ方が可愛いですよぉ?」


 いつもテリアとやっているような言い合いをエレナとするミリィ。


「············端から見たらわたしとミリィってこんな感じなのね」


 第三者の目線から見たことでテリアがもう少し気を付けようと決意していた。


「二人ともケンカはやめなよ」


 いつものようにユウが言い合いを止めた。

 そんな感じに四人は買い物を楽しんでいた。

 色々と好みの問題で衝突していたが本気のケンカというわけでもないので心配はなさそうだ。


 エレナはユウだけでなくテリアとミリィともそれなりに仲良くなっていた。


「そういえば朝から何も食べてなかったからお腹すいたね」


 ある程度店を回ったところでユウが言う。

 もうすでに昼をとっくに過ぎている時間だった。


「じゃああっちに定食屋があるからそこで何か食べましょう」


 エレナが店の場所を案内してユウ達は定食屋に入った。

 四人はそれぞれ軽い定食を頼んだ。


「うん、病院の食事も不味くはなかったけどやっぱりこういうお店の食事の方が美味しいね」


 ユウが美味しそうに食事をしている。

 テリアとミリィも食が進んでいるようだ。

 だがエレナはあまり食事に手を付けていない。


「あれ? エレナ、ひょっとしてお腹すいてなかったの?」


 それに気付いたユウが声をかける。


「ううん、お腹はすいてるんだけど············」


 エレナはゆっくりと食事を口に運ぶ。

 緊張した様子でモゴモゴと口の中の物を飲み込んだ。


「大丈夫エレナ? 何か無理してない?」

「そんなことないわ············大丈夫よ、なんでもな············う″っ」


 ユウの問いにエレナが答えようとするが突然口元を押さえた。


「うぐっ············う、ああ······!!」


 口だけでなくお腹も押さえ、苦しそうにうずくまった。


「エレナ!?」


 尋常ではない様子のエレナにユウ達が慌てて駆け寄る。


「う············こんな、ときに······発作······が············ああ······っ!?」


 エレナの苦しみ方は普通ではなかった。


「すぐにお医者さんのところに連れて行こう! テリア、ミリィも手伝って!」

「わかってるわ!」

「はいっ、ユウ様ぁ!!」


 三人はなるべくエレナに負担がかからないように気を付けながら、それでも急いで病院へと戻った。


「すぐに特別治療室へ!!」


 病院に戻ってすぐにエレナを医者に引き渡した。

 特別治療室にエレナが入ってしばらくすると医者が出てきて今日はこの部屋で安静にさせるために面会謝絶だと告げられた。


「············エレナ」


 ユウも急に走ったため熱がぶり返してきていた。


「ユウ、アンタも病室に戻るわよ」

「ユウ様も部屋で休みましょうっ」


 テリアとミリィに支えられてユウも元の自分の病室に戻った。








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