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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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勇者(候補)ユウの冒険章② 3 エレナとの交流

―――――――――(side off)――――――――


「エレナ、見舞いに来たよ」


 テリア、ミリィ、エレナが騒がしくしている病室に一人の男性が入ってきた。

 優しそうな年配の男性だ。


「············パパ」


 男性を見てエレナが言う。

 どうやらこの男性はエレナの父親らしい。

 手には見舞いの品らしき物を持っていた。


「······お仕事忙しいんでしょ? 私の見舞いに来るより少しは休めばいいのに······」


 エレナが複雑そうな表情で言う。

 だが内心では見舞いに来てくれてうれしく思っているようだ。


「ははっ、心配いらないよエレナ。しばらくすれば仕事も落ち着くからエレナとの時間をもっと作れるさ」


 男性はそう言いながら笑顔でエレナの頭を撫でた。


「あなたは昨日の?」

「あ~、昨日助けた貴族の人ですねぇ」


 テリアとミリィが言う。

 さっき話に出ていた魔物に襲われていた貴族とはこの人らしい。


「おや? 君たちは昨日の············そうか、友達の入院費を稼ぐと言っていたがエレナと同じ病室だったのか」


 男性が二人を見て言う。


「君がユウ君だね? 二人からある程度話は聞いているよ。高熱で倒れたと聞いていたが思ったよりも元気そうだね」

「うん、ぼくはユウ。ユウ=ロードテインです。

よろしく」


 男性が笑顔で言い、ユウも笑顔で返した。


「同じ病室だから、というのもなんだがエレナと仲良くしてあげてほしい。病院ということもあってここにエレナと同じくらいの年の子が来るのは珍しいんだ」

「ちょっ············パパ! 余計なこと言わなくていいわよ」


 父親の言葉を恥ずかしそうに遮ろうとするエレナ。


「大丈夫だよおじさん。ぼくとエレナはもう友達だから! テリアとミリィとだってこれから仲良くなる所だったんだから」


 ユウが屈託のない笑顔で言った。


「そう言ってくれるとうれしいよ」

「おじさんって貴族なんだよね? ということはエレナも貴族なんだ?」

「ははっ、そんなにたいした地位の貴族じゃないけどね。家名はフィルワークと言うよ」


 エレナの父親が謙遜しながら言った。

 腰が低くあまり貴族らしくないように見える。


「エレナ=フィルワーク······うん、いい名前だね!」

「あ、ありがとう······」


 改めて名前を呼ばれて恥ずかしそうにするエレナ。

 そんなエレナの様子を見て男性はうれしそうに頬を緩めていた。





「今度君たちの話に聞いたエイダスティアに赴くつもりだよ。交流を持つのだから挨拶をしておかないとね」


 エレナの父親が言う。

 謙遜していたがフィルワーク家は貴族としてそれなりに地位は高そうな感じだ。

テリアの両親はエイダスティアの事実上のトップのため、今後の交流の話をしている。


「まあこの通り私もラクアも忙しくてなかなか

エレナとの時間を作れなくて寂しい思いをさせてしまっている。だからユウ君、退院するまででいいからエレナと遊んであげてほしい」


 エレナの父親がユウ達に頼んだ。

 娘のエレナを大切に思っているのは間違いなさそうだ。ちなみにラクアとはエレナの母親のことらしい。


「おっと、もう時間だ。それじゃあエレナまた今度な。テリア君にミリィ君もエレナのことよろしく頼むよ」

「はい、わかりました」

「任せてくださ~い」


 テリアとミリィが笑顔で答えた。

 エレナの父親は満足そうに病室から出ていった。


「それじゃあユウ、わたし達もまた冒険者ギルドに行ってくるわね。ちゃんとおとなしく身体を治すのよ」

「行ってきますねぇ、ユウ様ぁ♡」


 二人もお金を稼ぎに出ていった。


 


「いいお父さんだね。きっとエレナのことすごく大切に想ってくれてる」


 ユウが素直な気持ちで言う。

 今病室にはユウとエレナの二人だけだ。


「仕事が忙しくて疲れてるはずなのに休みの日や休憩の合間に私の所に来てくれるのよ············私のために来てくれるのはうれしいけど······少しは休んでほしいわ」

「エレナの風邪が治れば退院できるんでしょ? それならもっと一緒にいられるんじゃないかな」

「············」


 ユウの言葉にエレナが俯き黙ってしまう。


「エレナ?」

「あ、うん······そうね。治ればね······」


 エレナの言葉はどこか歯切れが悪い。


「ユウの両親はどんな人なの?」


 話題を変えるためのようにエレナが質問する。


「優しくて、でも時には厳しくてすごく強い人達だったよ。今でもぼくの憧れの存在なんだ」

()()()って······どういうこと?」

「少し前に魔物からぼくとテリアを庇って二人とも······ね」

「············そうだったの」


 エレナは聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い口を紡ぐ。

 対してユウは悲しい思い出のはずなのに表情にあまり変化がないことに違和感を感じた。


「······ユウは悲しくはないの?」

「悲しいよ、すごく。でも泣いてるだけじゃ何にもならないからね」


 エレナの言葉にユウは笑顔で答えた。


「だからぼくは旅に出たんだ。エイダスティアを出て色々な物を見て強くなりたいと思ってね。二人に負けないくらいに」

「············自分に目標があるってすごいわね」


 エレナは素直に感心していた。



 その日ユウとエレナはお互いに色々なことを話した。

 最初は素っ気ない態度だったエレナもずいぶんユウに心を開いたようだ。



 次の日はユウの(物質具現化)スキルで作り出した物で色々と遊び楽しんでいた。

 時にはエレナの趣味は読書らしく、色々な物語の書物を持っていたため、ユウもエレナの持っている書物を借りて読み、その内容を語り合った。




 そしてユウが入院してから五日が過ぎた。







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