103 王都でリンと再会
商業地区を見て回った後、オレ達は第四地区に来ていた。
この地区には冒険者ギルドがあった。
王都の冒険者ギルドは、アルネージュの町のものよりさらに大きな建物だった。
「エイミとミールも冒険者ギルドに登録してたんだね」
二人がギルドカードを持っていたのは正直、意外だった。
「そんなに珍しい話じゃありませんよ。学園の生徒は大体登録しているはずです。主に平民の生徒ですけど」
「う、うん、簡単な依頼をこなして、おこづかいを稼いでいるんだよ」
ああ、そうやってお金のやり繰りをしていたのか。王都の冒険者ギルドには学園の生徒用の依頼があるらしい。
討伐依頼とかではなく、雑用がほとんどだそうだが。王都は広いため、そういった依頼が多いようだ。
「レイさんも登録しているんですよね? ランクはいくつなんですか?」
ミールが問いかけてきた。
ランクくらいなら正直に言ってもいいかな。
「······ご主人様はランクC。ちなみにボクはD······」
オレが言う前にスミレが暴露してしまった。
まあいいか。
「ランクC······ですか?」
「すす、すごいよレイ君! そんなに高ランクだったなんて」
エイミが驚いている。
ランクCというのは、ベテランのさらに上のランクだからな。
「いえ······確かにすごいですが、英雄と言われているにしては、寧ろ低いのではないですか?」
本当は国王に特例で、ランクAまで上げられそうになったんだが、断ったんだよな。
いきなりランクAなんて目立ちすぎるし、やっぱりこういうランクってのは地道に上げていくから面白いんだと思う。
「というか、スミレちゃんはランクDなの?」
エイミがスミレに視線を向ける。
スミレはコクりと頷く。
「わたし達はまだFなのに······」
ランクFというと新人と同レベルだな。
まあ、学生は簡単な依頼しか受けないだろうし、仕方無いと思う。
「せっかくだし、何か受けてみるか」
というわけで、みんなで依頼の掲示板を確認する。
王都のギルドでは、どんな依頼があるのかな?
それなりに冒険者の姿があるが、学生がいるのは珍しくないようで、絡んでくるような輩はいない。
「では、これなんてどうでしょうか?」
ミールが一つの依頼を選ぶ。
依頼内容は············教会の手伝い?
人数は何人でも可と書いてある。
「第三地区にある教会で、身寄りのない子供がいっぱいいるんだよ。手伝いってのは大体子供の相手かな? 子供が多いから、いつも人手不足なんだって」
「ワタシ達もたまに、この依頼を受けていますから」
つまり、アルネージュにあったような孤児院みたいな感じか。
王都は広いため、教会が三ヵ所あるらしい。依頼はその内の一つだ。
ちなみに第一地区にはリヴィア教の本殿があるようだ。
本殿は一般人は立ち入り禁止なため、お祈りなどはその三ヵ所の教会で行われるらしい。
「いいんじゃないかな? その依頼で」
アルネージュの孤児院で子供の相手には慣れてる。
報酬は少ない気はするが、学生ならこんなものかな。
エイミとミールも初めてじゃないみたいだし、いいだろう。
依頼書を持って受付に行く。
受付の人は若い女性だが、猫耳はなく普通の人族だった。
失礼だが、ちょっと残念に思ってしまった。
何事もなく受付を済ませて、第三地区の教会へ向かう。
道中、仕事の内容を二人に聞いてみた。
「さっきも言ったけど、大体は子供の遊び相手になってあげたりとかだよ。後は部屋の掃除とかかな」
「それと、必要な物の買い出しとかですね」
やはり雑用みたいだな。
学生用の依頼って感じだな。
この内容で、この報酬では普通の冒険者はよほど金に困ってないと受けないだろう。
「見えました、あそこです」
ミールが建物を指差した。
思ったより大きくキレイな建物だ。
アルネージュの孤児院のように、生活難ということはなさそうだ。
さっそく中に入ると、年配の女性に迎えられた。
この人がシスターの長らしい。
「エイミさんにミールさん、今日も依頼を受けてくれたのですね」
どうやら二人はシスター長と顔見知りらしい。
まあ、たまにこの依頼を受けていると言っていたしな。
「そちらの方は初めてですね?」
「レイです。二人とは同学年なんです」
「············ボクはスミレ······」
オレとスミレは軽く挨拶する。
さっそく仕事の説明を受ける。
といっても内容は、エイミとミールから聞いていた通りのものだった。
この教会、アルネージュの町の孤児院よりも大きいためか子供の数も多い。
それに対して教会側の人手は、確かに少ない気がする。
「今日は本殿から手伝いの方々がいらしているので、人手は多い方なんですよ」
これでも普段よりは多い方だったのか。
まあいいか。さっそく仕事に取り掛かろう。
「すみません、シスター長。子供服はありますか? 今そこで、この子が汚してしまって······」
外から人が入ってきて、シスター長に言う。
ん? 何か聞き覚えのある声だな。
そう思って振り返ったら、その人物と目が合った。
「え······レ、レイさん!?」
「······リン?」
その人物は、聖女セーラの専属護衛騎士のリンだった。
本殿からの手伝いって、リンのことだったのか。