101 学園の休日
次の日、今日も学園が休日のためエイミとミールに王都を案内してもらうことにした。
なんだかんだでまだ王都を見て回ってなかったからな。
最初はミウに頼もうとしたんだけど用事があるらしく不在だった。
まあ貴族は学業以外にも色々と忙しいらしいから仕方無いか。
寮から外に出ようとしたら部屋の前にスミレが立っていた。
「スミレ、なにやってるんだこんな所で? シノブはどうしたんだ?」
大体いつもはシノブと一緒にいるから一人なんて珍しい。
「ユーリと二人で出掛けた············ユーリはシノブと二人で行きたそうにしてたからボクは遠慮した······」
ユーリはミウの弟でシノブと同じ年の男の子だ。
つまりデートか?
それでスミレは気を遣ったのか。
スミレもそんな気遣いができるようになったのか。
「だから今日はご主人様と一緒がいい······ダメ?」
まあ別に駄目な理由なんてないが。
「王都の案内、スミレも一緒でいいかな?」
「ワタシは構いませんよ」
「わ、わたしも大丈夫だよ」
エイミとミールも問題ないと言うので四人で王都を回ることにした。
ちなみに服装はオレとスミレはアルネージュにいた時のような普段着でエイミとミールは学園の制服だ。
普段着を持っていないのかな?
「王都の中なら学園の制服の方が変な人に絡まれる心配も少ないですから」
そう思って聞いたらミールからそんな答えが返ってきた。
王立エルスタン学園は結構な名門らしく、そんな学園の生徒に絡む者は少数らしい。
オレも制服姿の方がよかったかな?
でもああいうピシッとした格好は苦手なんだよな。
まあ今更いいか。そんなわけで王都を見て回る。
特に目的があるわけでもないのでエイミとミールにお任せにする。
王都はアルネージュの町よりさらに広い。
アルネージュの町のように地区ごとに分けられていて第一地区から第十地区まであるようだ。
貴族が住むのが第一、第二地区とアルネージュと同じ感じだ。
ちなみに学園があるのは第二地区だ。
まずは商店が並ぶ第五地区に向かった。
この地区には色々な店がある。
スミレは食材を売っている店を熱心に見ていた。
「······ご主人様、あれ······」
そう言ってスミレが指差したのは果物屋だ。
色々な果実があると思って見てみたら一つだけ特別扱いのように置かれている果実が目に入った。
············リンゴだった。
しかもこれ〝アルネージュ産〟と書かれている。
オレ達が作ったやつじゃないか。
多分アルネージュの町の商業ギルドに流したやつが王都に来たのだろう。
アルネージュの町で育てた果実は特別な魔法をかけているので腐ることはなく、いつでも新鮮な状態を保っている。
「アルネージュ産の果実ですね。店に残ってるなんて珍しいです。いつもは貴族などが買い占めてしまうためすぐに売り切れているはずですが」
ミールがそう説明してくれた。
ちなみに値段はリンゴ1個で銀貨45枚になっていた。
銀貨1枚で大体千円くらいの価値だからつまり45000円ってことか。高っ!?
他のアルネージュ産ではない果実は銅貨20~30枚(200~300円)くらいなのに飛び抜けて高いな。
しかもその値段ですぐに売り切れるのかよ。
「ね、ねえレイ君······あの果実ってアルネージュで英雄って呼ばれている人が作ったらしいんだけど······何か知らない?」
エイミの質問にどう答えようか······。
多分二人ともなんとなく察してる気がするんだよな。というか以前にアルネージュに連れて行った時に食べさせたし。今更隠しても仕方無いか。
「ああ、オレやアイラ姉達が作ったものだよ。何故か英雄とも呼ばれてる」
予想はしていたんだろうけど二人は驚いていた。
「··················」
スミレはリンゴをジーーッと見ていた。
スミレは何でも食べるがリンゴは特に好物なんだよな。
さすがに買うつもりはないからガマンしなさい。
未練がましい様子のスミレを強引に連れて次は雑貨屋の建物に入った。
結構大きな店で色々な物が売っている。
宝石、アクセサリー、それに魔道具なんかも売っていた。
「さすが王都って感じだな。何でも置いてあるな」
「ここは複数の商人が商売していますからね。大抵の物は揃いますよ」
客もそれなりに多い。
「でもお金がないから来てもあんまり買えないんだよね······」
エイミが苦笑いしながら言う。
日用品はともかく魔道具は金貨が必要な値段だ。
学生の身では手の出ないものだろうな。
······そういえばエイミとミールってお金はどうしてるのかな?
学園長がおこづかいをくれるとかかな?
「ちょっとどうなっているんですの!? ここで買った魔道具まともに動かなかったのですのよ!」
店先で店員に文句を言っている客の声が響いた。
客は女性でエイミ達と同じ学生服を着ている。
茶色の長めの髪に少々キツい目付きだがそれなりに可愛い女の子だ。
年はオレと同じくらいかな?
「ワタシ達と同じ学園の生徒ですね。特別クラスではない方のようですが」
ミールが言う。
確かにオレ達のクラスでは見ていない顔だ。
何をもめているのか耳を傾けて話を聞いていると不良品を買わされたわけではなく、どうやらこの女生徒が使い方を間違えたのが原因らしい。
「まあっ! 私が悪いと言うんですの!?」
そう説明されても納得しない女生徒。
はっきり言ってただの迷惑なクレーマーだな。
喋り方から見て貴族なのかな?
店員も無下にするわけにもいかずに困っている。
「見苦しいですわよサラーナさん。ご自分の実力の無さを魔道具のせいにするなんて」
そんな店員に助け船を出すように別の女生徒が現れた。
どこかで見た顔だと思ったらオレ達と同じ特別クラスのフェルケンの妹フェニアだった。




