93 学園地下迷宮探索
あれから数日が経った。
オレとアイラ姉はすっかりクラスに馴染んでいた。
エイミとミールも今まではほとんど孤立していたようなものだったがもうクラスメイトと普通に接するようになっていた。
フェニアも一応登校していたがまだ話しかけていない。
まあ普通にしているようだし大丈夫なのだろう。
············そう思っておこう。
フェルケンの父親もオレの渡した薬で怪我の後遺症は完治し、エルフの戦士に復帰するらしい。
今度是非お礼をしたいとか言っていたが············。
それはまたの機会でいいと言っておいた。
この数日はただ一つを除いて平穏だった。
その例外とはオレがまた正義の仮面の姿になってしまったことだ。
とはいえ別に変なことはしていない。
純粋に人助けをしただけだ。
この学園には授業を行う校舎だけでなく他に色々な建物がある。
修練場もその一つで、あとはすでに使われていない旧校舎。
それに魔術実験棟という建物もある。
名前の通り魔法の実験などをするための建物だが、実験中に魔法が暴発したらしく大火事が起きた。
炎は凄まじく燃え上がり建物の中には何人かの生徒や教師が取り残されてしまっていた。
それを正義の仮面が救い出したのだ。
犠牲者が出なかったのはよかったがそのせいで正義の仮面の存在は学園中に知れ渡ってしまった。
正体がバレていなくてよかった。
もう二度とあの姿にはならないようにしよう。
まあそれよりも今日のこれからの予定だ。
今オレは学園の地下迷宮の入口に向かっている。
オレ以外にアイラ姉、シノブ、スミレ、そして王族のロディンさんにリイネさん、学園長のリプシースさんが来ている。
迷宮がどんな所か様子を見るためにこのメンバーで探索をするつもりだ。
そうしたら学園長のリプシースさんが直々に迷宮の案内を申し出てくれた。
「ある程度迷宮内の探索はしているからね。それにあなた達の実力をこの目で見てみたいし、私も一緒に行かせてもらうわ」
まあオレ達は別に構わないけど。
迷宮への入口の周囲は警備が万全のようだ。
見張りに何人かの騎士の姿もある。
何が起きても対応できるようにこの辺りは関係者以外は立ち入り禁止にしているようだ。
迷宮の入口は初めからそこにあったように学園と一体化していた。
迷宮というより普通に学園の地下への入口にしか見えない。
「ここから先が迷宮になるわ。魔物も出てくるから注意してね。ロディン様にリイネ様もどうかご警戒ください」
「ああ、わかっている学園長殿」
「わたしも迷宮は初めてだ。ふふっ······腕が鳴るな」
ロディンさんとリイネさんも準備万端のようだ。
しかし迷宮に入った気がしないな。
以前に入った迷宮は洞窟の中のような感じだったが、この迷宮は普通に学園の地下にしか見えない。
出現した場所によって迷宮の見た目や構造も変わるようだ。
「あれ? グラム達を召喚できない?」
学園長達もいるので護衛代わりにダンジョンコアからグラム達を召喚しようとしたのだが出せなかった。
特に不具合はないはず······。
もしかして迷宮内では使えないのか?
試しに一度迷宮から出て召喚したら普通にできた。
だがグラム達は迷宮に入ろうとすると見えない壁にぶつかるように入ることができなかった。
なんでだ? オレ達は普通に入れるのに。
迷宮の守護者やその眷属は他の迷宮には入れないということか?
まあ喚べないものは仕方無いか。
気を取り直して迷宮内に入った。
全MAPを表示してみる。
············かなり広い迷宮だ。全50階層。
以前の迷宮の30階層より深い。
アイラ姉とシノブもMAPで確認したようだ。
「すごいわね······本当に迷宮内を見通せるのね」
学園長が驚きの声をあげる。
MAPは異世界人のオレ達にしか使えない。
学園側や王宮側は地道に探索をしていたらしい。
「30階層に恐ろしく強い魔物がいるのよ。そいつが守護者でそこが最下層だと思っていたのだけど」
学園長の話だと30階層は広い大部屋があり、出てくる魔物も一体だけらしい。
「どんな魔物でござるか?」
「巨大なゾンビだという話よ。レベルもステータスも鑑定できなかったらしいから詳細はわからないのだけど」
シノブの質問に答える学園長。
探索に参加していた騎士達では歯が立たないくらいだったらしい。
やられる前に撤退したから死人は出ていないらしいが。
ゾンビか············あまりお目にかかりたくない魔物だな。
「では探索を開始しよう。皆、油断しないようにな」
アイラ姉の言葉に全員が頷いた。
さて学園迷宮がどんな所か見させてもらうか。