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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
102/735

90 フェニアの暴走?(※)

※(注)変態男が登場します。

(ミールside)


 フェルケンとの決闘にどうにか勝利したワタシですが、魔力を限界近くまで消費してしまい、まともに動けません。

 保健室まで運んでもらったところで、ワタシの意識は途切れました。





 どれくらい時間が経ったのでしょうか?

 保健室で眠っていたはずのワタシが目を覚ますと、そこは修練場でした。

 そこにはワタシの他に姉さん、それにフェルケンの妹のフェニア。

 そしてその取り巻きのエルフの三人娘がいました。

 ······他に人の姿はありません。



 どういう状況でしょうか?

 ワタシが目を覚ましたことに、姉さんやフェニア達が気付きました。


「あら、目覚めましたのね? なら、ちょうどいいですわ。どんな禁術を使ったのか白状しなさい!」


 フェニアがそんなことを言い出しました。

 ············禁術? 一体何の話ですか?


「あなた達の異常なレベルアップのことですわ! どんな禁術を使いどんな代償を払ったのですか!? まさか、父親同様に学園に混乱を招くつもりなのでは!?」


 今の言葉でなんとなく言いたいことがわかりました。

 確かにワタシはたった一日でレベル30以上上がりました。呪われた禁術に手を出したと見られても不思議ではないかもしれません。


「だ、だからわたし達、禁術なんか使ってないよ······」

「そんな言葉が信じられますか!? どうしても白状しないつもりですわね!」


 姉さんの言葉をまったく聞くつもりはないみたいですね。


「まあいいですわ。素直に話すなんて思っていませんし············なら、無理矢理にでも口を割らせてみせますわよ」


 実力行使ですか············。

 どうやらそのために、わざわざワタシと姉さんを修練場まで連れてきたみたいですね。

 ワタシはまだ魔力切れの反動が残っているのでまともに動けませんが、姉さんはレベル46もあります。

 レベル22のフェニアでは勝ち目はないはずですよ?


「あ、あれ······? 魔法が使え······」


 と思っていたら、姉さんの様子がおかしいです。

 魔法が使えないのですか? 一体何故······。

 ん? あれは······。


「姉さん、その腕輪はなんですか?」

「え、い······いつの間に!?」


 姉さんの右腕に見覚えのない腕輪がついています。

 姉さんも今、気付いたようです。



(魔封じの腕輪)

これを装備している内は魔法が使えなくなる拘束用のアイテム。



「ウフフ、それはアタクシが作ったオリジナルの魔道具ですわよ」


 フェニアが得意気に言います。

 そういえばフェニアは魔道具作りが得意でしたっけ。

 姉さんの腕にがっしりと嵌められているらしく、簡単には外せないようです。


「さらには、こんな魔道具もありますのよ」


 フェニアの手には小さな球がいくつか握られていました。



魔力球(マジックチャージ)

魔力を貯めることができる球。

貯めた魔力は自身の魔力に上乗せできる。



 これもフェニアのオリジナル魔道具ですか。

 魔力球に貯め込んでいたと思われる魔力を解放したら、フェニアの魔力がはね上がりました。

 おそらく一時的なものでしょうが、今のフェニアの魔力は少なくともフェルケンを上回っています。


「さあ、大怪我しないうちに白状した方がいいですわよ!」


 フェニアが魔力を集中させて、姉さんに向けて放った。

 まともに受けた姉さんが壁に叩きつけられる。


「うっ············あ!?」

「姉さん!」


 ワタシは無理矢理に身体を動かして、姉さんに駆け寄ります。

 幸いにも大した怪我は負っていません。


「邪魔ですわね。あなた達、妹の方を押さえておきなさい」

「「「はい、フェニア様」」」


 フェニアの指示で三人娘が、姉さんからワタシを引き剥がします。

 魔力が回復しきれていないワタシは、まともに抵抗できません。


「やめてください。こんなことをして、いくらあなたでも、ただでは済みませんよ」


 修練場に無理矢理連れてきた上での暴行。

 学園を退学になってもおかしくない暴挙ですよ。


「あなた達が悪いのですわよ。フェルお兄様を嵌めるなんて許せませんことよ! アタクシは正当な制裁を加えているだけですわ」


 どうやらフェニアの中では正しいことをしているつもりみたいです。

 禁術など使っていないと、本当のことを言っても聞き入れるとは思えませんね······。


 フェニアは思い込みが激しいところがありますから。

 兄のフェルケンは嫌味な言い方などはしますが、なんだかんだでまともな人なんですけど。


「く······ううっ」


 姉さんが立ち上がりました。

 レベル46もあるおかげで、身体もある程度頑丈になっているみたいです。

 ですが、魔法を封じる腕輪をまだ外せていないようです。


「なかなかしぶといですわね。ならこれは耐えられるかしら?」


 フェニアがさらに魔力を集中させています。

 先程よりも大きな魔力が溜まっているようです。

 あれは、いくらなんでもまともに受ければ怪我では済みませんよ!


「さあ、受けてみなさい!」

「姉さん!」


 ワタシが叫びますが、フェニアが魔力の塊を放ってしまいました。



――――――――!!!!!



 フェニアの放った魔法が姉さんに直撃しました。

 爆煙が上がり、姉さんの姿が見えません。

 まさか姉さんが死んだなんてことは············。


「ケホッ······ケホッ······」


 煙でむせている姉さんの声が聞こえました。

 最悪な想像をしてしまいましたが、どうやら無事みたいです。

 姉さんの前に人影が見えます。

 誰かが姉さんを庇ってくれたようです。


 ですが、一体誰が············?


「だ、誰ですの!? この修練場には結界を張っていたから誰も入れないはず············」


 フェニアが驚きの声をあげています。

 煙が薄れて人影がはっきり見えてきました。


「大丈夫でしたか? お嬢さん」

「「!!?」」


 ワタシと姉さん······いえ、この場にいる全員が驚愕しました。



 姉さんを庇っていたのは黒いマスクで顔を隠し、下着一枚姿のほとんど裸の格好をした男だったからです。



 何者ですか、この変質者は?









次回久々の変態男の登場です。

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