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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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88 学園決闘~ミールVSフェルケン~

 そして今日の授業も終わり放課後。

 ミールとフェルケンの決闘が始まる。

 決闘は外のグラウンドか修練場(体育館みたいな建物)でやるらしい。



 今回は外のグラウンドで行うようだ。

 ミールとフェルケンの決闘の話はかなり広まっていたらしく見学に多くの生徒が集まっていた。


「ケ、ケガしないようにね、ミール······」

「大丈夫ですよ姉さん、絶対に勝ちます」


 エイミは心配そうに言うがミールは冷静だな。

 フェルケンの方はどうかな。



「フェルお兄様、あのハーフエルフに身の程を思い知らせてあげてください!」

「ああ、わかっているさ、フェニア」


 エルフの女の子と話しているな。

 あの子も特別クラスの生徒だったな。

 髪はフェルケンよりも少し長い金髪。

 顔付きも似ているし兄妹かな。





「さあ始めるわよ。審判は私が行うわ」


 学園長が審判をすると言ったら周囲がどよめき出した。


「学園長自ら············ですか?」


 フェルケンも意外そうな表情だ。


「そうよ、今回の決闘はエルフの問題でもあるみたいだしね」

「それはいいですが公平な審判をお願いしますよ? 学園長はなにかとそのハーフエルフの肩を持ちますから」

「それはもちろんよ。公正に審判するわ。そしてどちらが勝っても文句はないし、言わせないわ」


 学園長の言葉にフェルケンも納得したようだ。

 ミールとフェルケンがグラウンドの中心に立つ。

 その周囲を囲むように多くの人が見学する。

 生徒だけでなく教師の姿もあるな。


「さて、たった一日の特訓とやらでどこまでできるようになったのか見させてもらおうか」

「その余裕の顔、すぐに崩してあげますよ」


 フェルケンは不敵な笑みをうかべている。

 ミールは無表情だ。

 昨日のように興奮はしていない。


「ではミール、フェルケン! お互い満足するまで闘いなさい!」


 学園長の合図で二人の決闘が始まった。








 ケンカではなく決闘なので色々とルールがある。

 例えば戦い方など。

 剣のみの勝負だったり、肉弾戦のみだったりとあらかじめ決められる。


 今回のは魔法での勝負だ。

 お互いの魔法を全力でぶつけ合い、相手に負けを認めさせればいい。

 どうしても決着が着かない場合は審判と周囲の見学者が判断する。



「ではまずは小手調べからいこうか。ファイアボール!」

「アクアシールド!」


 フェルケンが「炎」魔法の火球を放ち、ミールが「水」の盾でそれを防いだ。


「ほう、ならばエアーカッター!」

「アイスウォール!」


 今度はフェルケンが「風」魔法を放ち、ミールは「氷」の壁を作り防いだ。


「少し強めにいくか。ヘルフレア!!」

「ヘルフレア!!」


 フェルケンの「炎」にミールも「炎」で対抗した。


「ぐっ······」


 お互いに同じ魔法だったがミールの方がわずかに上回ったようだ。

 フェルケンの余裕の表情が崩れる。



[ミール] レベル53

〈体力〉650/650

〈力〉170〈敏捷〉320〈魔力〉610


〈スキル〉

(魔力増加〈中〉)(詠唱破棄)(同時詠唱)

(魔力回復速度上昇〈小〉)

(森の精霊の加護〈小〉)



 これが今のミールのステータスだ。

 レベルも魔力もフェルケンを上回っている。

 いくつか増えているスキルはレベルアップした時に獲得したり、シノブの(魔法・スキル付与)で与えたものだ。

 (詠唱破棄)と(同時詠唱)のスキルは相性がとてもいい。


 (同時詠唱)は複数の魔法の詠唱を同時にでき、(詠唱破棄)は詠唱を必要としなくなるため、ほぼ自由自在に魔法を撃てるのだ。


「············なるほど、面白い······!」


 フェルケンの雰囲気が変わった。

 今までのミールを甘く見ていたような気配がなくなった。

 どうやら本気になったようだ。


「全力で相手をしよう、()()()!!」

「望む所です!」


 フェルケンとミールの魔法が次々と炸裂する。

 ていうか危ないな······二人の魔法の威力が強くて見学者が巻き添えを喰いそうだ。

 その辺は学園長が防いでいるようだが。



 本気になったフェルケンはかなり強い。

 ステータス的にはミールが上回っていても魔法の扱いなどはフェルケンの方が上だ。

 ミールも必死に対抗している。


 フェルケンのレベルは31。ミールは53。

 これだけレベル差があるのに互角か············。

 フェルケンを少し甘く見ていたようだ。



「驚いたぞ、どんな特訓をすればそこまで強くなる?」

「ワタシ自身驚いていますよ、うまく説明できませんねっ」


 魔法を撃ち合いながら言葉を交わす二人。

 なんか昨日の険悪な雰囲気がなくなっている感じがする。


「だが私は負けるつもりはないぞ。次の一撃で決めさせてもらう!」


 フェルケンが魔力を両手に集中させる。

 どうやら強力な魔法を使うつもりのようだ。


「ワタシも全力で迎え撃ちます!」


 ミールも同じように魔力を集中している。

 時間にしておよそ十数秒魔力を溜めた所で二人とも魔力を解放した。


「グランドテンペスト!!」


 フェルケンが放ったのは「風」の上級魔法だ。

 凄まじい暴風が巻き起こる。


「ハイブリザード!!」


 ミールは「風」と「氷」の複合魔法で迎え撃った。

 昨日シノブに(同時詠唱)を付与してもらったばかりなのにもう使いこなしているな。


――――――――!!!!!


 お互いの魔法がぶつかり合う。すごい威力だ。

 学園長だけでなく他の教師や一部の生徒も全力で結界を張り見学者への被害を防いでいる。


―――――――――――ブワァアアッ!!!


 二つの魔法が相殺され合い消し飛んだ。

 その反動でフェルケンとミールはそれぞれ吹き飛ばされる。


「ぐっ············う······」


 倒れたフェルケンが一度起き上がるが力尽きたように再び倒れた。

 大きな怪我はない。

 どうやら魔力切れの反動で気を失ったようだ。


「············うくっ」


 ミールもフラフラになりながらも立ち上がった。

 こちらも魔力切れ寸前だがギリギリ残ったようだ。


「フェルケン戦闘続行不可能によりミールの勝利とする!」


 学園長が判定を下した。


「「「おおおーーーっ!!?」」」


 見学者から驚きの声があがる。

 信じられないとか、あのフェルケンがとか色々聞こえるが大半はミールを称賛する声だ。

 この反応を見る限りミール達ってそこまで悪い印象は受けてないんじゃないかな?


「ちょっ、ちょっと待ってください! フェルお兄様が負けるはずありませんわ! そのハーフエルフが反則をしたのですわ、きっと······」


 そんな中物言いをする者が現れた。

 決闘前にフェルケンと話していたエルフの女の子だ。


「反則はないわ。私が断言するわよ。お互いに正々堂々全力で闘った結果よ」

「そ、そんなはず······フェルお兄様が負けるなんてありえな······」

「フェルケンは立派に闘ったわ。負けたと言ってもそれを恥じる必要はない良い闘いだったわよ。それに文句を言うのは貴女自身がフェルケンの顔にドロを塗る行為なのよ?」


 学園長の言葉にエルフの女の子は押し黙る。

 学園長の言う通り負けたフェルケンを悪く言う者は見当たらない。


「~~~っ!! アタクシはそのハーフエルフを認めませんからねっ!!」


 女の子がそう言うと他の何人かのエルフの生徒に指示を出して気を失っているフェルケンを連れていった。


「まったく············フェニアにも困ったものね」

「学園長、今の女の子は?」


 オレは学園長に聞いてみた。


「彼女はフェニア=フォマード。あなたと同じ年でフェルケンの妹よ」


 やっぱりあいつの妹だったのか。

 あの様子を見ると相当にミール達を敵視しているな。

 オレと同じ特別クラスでレベルは22だった。

 それなりに優秀な生徒なのだろうが。


「············っ」

「ミール!? 大丈夫っ!?」


 今にも倒れそうなミールをエイミが支えた。

 そうだった。今はそれよりもミールだ。

 勝ったとはいえ魔力をほぼ使い果たしているため歩くことも難しそうだ。


「あなた達、彼女を保健室まで連れていってあげて」


 学園長が見学していた教師や生徒に指示する。

 ミールは少し休ませれば大丈夫だろう。


 あのフェニアって生徒はともかく、他の生徒達のミールに対する反応はそんなに悪いものじゃなかった。

 これをきっかけにエイミとミールが学園に馴染めればいいんだけど。





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