表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/19

6. 黒神教

悪の教団《黒神教視点》です。

三人称視点です。

※少々不快な描写があります。

───アーレンバレス王国、東の森林のとある洞窟にて。

 

「それで、十五番は見つかったのか!」


「監禁していた場所周辺は調べ終えました。ですが、これといった発見はなく……」


「クソッ、あれほどの()()()()()()()()()()()は今までいなかったというのに!!高い金を払ってまで買ったというのに!!」


 幹部らしき男の甲高い声が狭い洞窟に響く。

 普段から感情の起伏が激しい性格ではあるが、よりいっそう激しさが増している。

 

 供物とは、それほど『()()()』にとって、必要不可欠な存在であった。

 

「……今回の奉納の儀式はつつがなく終了しております。次回の儀式までに、また新たな供物を調達してまいります」


 仮面を身につけている信徒らしき男は、跪き、冷静に具体案を示す。


「クソッ、クソッ、クソッ!!……仕方ない、また奴隷市場に赴いて天能を授かっている供物を探すか。もう少し量を増やすとしよう」


 そう言いながら、幹部らしき男は松明で照らされた通路を歩き、出口に向かう。

 そんな後ろ姿を見た信徒は深く頭を垂れた。


「では、私は引き続き、愛しき信徒達と共に洞窟内外を捜索いたします」


「……そうだな。貴様に任せる」


 幹部らしき男は忌々しそうにこちらを振り返り言った。プライドが高いためか、逃げられたことに対する憤慨は忘れていないらしい。

 

 幹部の後ろ姿を見送った信徒の男は、振り返り、暗い通路を歩き、奥へと戻っていった。



◇◇◇



 この洞窟は、アーレンバレス王国が九百年前に建国したときにはすでに存在していたらしい。建国当時から保存されている書記によると、「古い神」が残した遺物だそうだ。

 ただ、そういった古くから存在している洞窟や遺跡、人工物や自然物は無数に存在しており、数えれば枚挙にいとまがない。


 出入り口が一つしかなく、入ると通路が続く。

 通路を進むと、十人寝転ぶことができる空間があり、そこから枝分かれして通路が三本ある。その先には同じように広い空間が広がっている。

 通路のところどころに小さな横穴があり、まるで()()()()()()()()()()()するような空間が存在する。


 長年の歳月をかけてできた自然物なのか、人の手によって作られたものなのか、もしくは()()()なのか、知る者はいないだろう。


 そんな洞窟を活用する者は、一つの時代ごとに善悪関係なく存在していた。


 現在は『黒神教』と名乗る宗教団体が秘密裏な活動場所としている。活用方法が多数にとって善とは限らないが。


 広場にもどった男は周囲に目をやる。

 岩や壁に直接杭が打ちつけられ、その杭につながる鎖によって、()()()()()()()()()()達が虚な目で、またある供物は恨めしい目で男を見ている。


(フン、哀れな供物め)


 男は内心ほくそ笑む。

 天能を授けられる者たちは、運が良いのか悪いのか。

 いや、運、でいえば悪いのであろう。

 天能を授かった子が現れるのは千人に一人いるかどうか。

 天能を授けられた供物達は、周囲の人間から忌まわしい存在として見られることが多い。


 親から気味悪がられ、捨て子や孤児になった者。


 誘拐され、奴隷として売られた者。


 稀に英雄として活躍する者もいるが、そんなものはただ運と縁が良かっただけだ。


 そんな哀れで劣悪な者達に、黒神教は供物としての存在意義を示している。


(我らが主、『黒の神ファヴィオ』様の糧となることができるのだ。さぞ光栄だろう)

 

 男はローブの内側の鞄にある、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に触れる。


(この指輪のおかげでより効率的に奉納の儀式をおこなえる)


 この指輪は、触れている者の言葉を聞いた者の思考力を奪う力がある。抵抗もなく奉納の儀式をおこなえるのはありがたい話だ。

 この指輪は黒神教の教祖より賜った指輪だ。

 詳しいことはわからないが、なんでも奉納の儀式の最中に天より授かったモノらしい。

 

(さすがは教祖様。黒の神もお認めになられたようだ)


 今回の奉納の儀式は終了した。

 儀式は星の光が届かない夜に行われる。

 次の儀式は六日後といったところか。


「十六番、十七番。次の儀式は六日後だ。体をよく清めておけ」


「「はい。黒の神ファヴィオ様のために」」


 ()()()()()()少女二人は身を清めるために奴隷の服を脱ぎ捨てる。

 まだ成熟しきっていないが、純朴な瞳、肋骨の上に薄く乗った柔らかそうな肉。穢れを知らない四肢を上から下へじっくりと眺める。

 胸の中央の奴隷の烙印がよりいっそうそそられる。


(くそ、次の儀式で使わなければ俺が使ってやったのに)


 男は舌打ちをし、さらに奥へと向かう。


「コツン」

     

(……ん?なにか音がしたか?)


 男の歩く前方の岩陰で、ふいに石を蹴飛ばすような音がした。


「誰だ!」


 男は岩陰を覗いたが、特にこれといった異変は見当たらなかった。


(なんだ気のせいか)


 男は深く考えるでもなく奥へと歩を進めた。



 背後で見ているヴィオラとグレアの視線を感じることもできずに。

 



読んでくださりありがとうございます!

ブックマークや評価をしてくださる方も本当にありがとうございます!!すごく頑張れます!!


ヴィオラとグレアちゃんがんばれ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ