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春のアルバム

作者: 高石すず音

いつかの春を思い出したり、自然の恵みを感じたりしながら書きためた詩の小品集です。

挿絵(By みてみん)




1. ハクモクレン


ハクモクレンの花が咲く、

さなぎが蝶になるように。


眼を醒したばかりの君を、

小鳥の目線で見てみたい。




2. オトメツバキ


わたしがここへ来るたびに、

ひい、ふう、みい、よ、と

花ひらく。


わたしがここへ来るたびに、

ひい、ふう、みい、よ、と

朽ちてゆき、


わたしがここへ来るたびに、

ひい、ふう、みい、よ、と

またひらく。


わたしはここへ来るたびに、

ひい、ふう、みい、よ、と

としをとる。




3.  ビール


日々の小さきかなしみよ、

ビールの小さき泡となれ。


宝石のようにきらきらと、

自由になって消えてゆけ。




4. 船


船が橋を潜ります

虹を連れて水尾みおひいて


遠くに汽笛を聴きながら

ひと時の日陰を見送ります




5. 花見


電車の中でとなり合っているひと


長椅子の端に腰掛け携帯を眺める

おんなのひと


扉に寄りかかり携帯を眺める

おとこのひと


駅のちょっと手前になった


「次だから」とおんなのひとが

おとこのひとの背中をつついた


「ああ」とおとこのひとが

おんなのひとを一瞥した


駅に着いた


おんなのひとは弁当を

おとこのひとは水筒を

鞄の中に忍ばせていた


平成最後の春のこと




6. 惜春せきしゅん


花が咲く、花が咲く

あたたかな日差しを受けて


幾年いくとせ続く理に

変わりゆく人は 

を閉じて振り返るだろう

もう戻れない春を


花が舞う、花が舞う

やわらかな風に乗って


幾年絶えぬせせらぎに

過ぎ去りし季節は

身を任せ還りゆくだろう

また巡り来る春へ

写真:オトメツバキ 撮影:高石すず音

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― 新着の感想 ―
[一言] 素敵な写真と文章に惹き込まれました。 とても良かったです。
2020/12/07 15:05 退会済み
管理
[良い点] 三千さんに紹介されていたのでお邪魔させていただきました。 オトメツバキの詩が写真と共に描かれているし印象的でした。 春が来る度に花々に癒され喜びを感じ、そして年をとり逝くのでしょう。 だ…
[良い点] どの作品もリズムが心地良いですね。 選び抜かれた言葉と相まって、 軽やかに読み進めることができます♪
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