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完全無能力者の異世界転送  作者: ウェステール
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プロローグ

朝――――



目が覚めると、そこは――――



野外だった。



奇妙に捻れた不気味な樹木が生い茂る、鬱蒼たる森の中。

樹木の葉が覆う「九割方が黒」の空から、一筋の木漏れ日が狙いすましたかのようにベッドに差し込んでいた。

薄く立ち込める紫色の靄。

どこからともなく響く、ギャアギャアと耳障りな鳥(?)の声。


おとぎ話やファンタジー世界の『呪いの森』とでも表現するのがしっくりきそうな異様な空間で、俺の居るベッドだけが「元いた世界」を主張していた。




……何だこれ?



しばしフリーズ。



落ち着け、俺。

まずは確認だ。

俺の名前は遠藤浩一(えんどうこういち)

年齢は35歳。

しがない警備員である俺は、明日……というか今日から?新しい現場に上番する予定だ……予定だった。

うん、記憶に変な部分はない……と思う、多分。


身の回りをチェック。

枕元には着替え。

安全靴と制服、赤灯を入れたリュックはベッドの柱に掛けてある。

ベッドの周りや下を覗き込んでみたが、普段履きの靴はない。

ここに来たのはベッド周りのみ、玄関に置かれてた靴までは来てない、と。



さて、どうしたものか。



これはやっぱり、俗に云う「異世界転生」?……いや、生まれ変わった訳ではないから「異世界転送」とでも言うべきか。

いわゆる“なろう系”は幾つか愛読していたが、まさか自分が当事者になるとは予想外だった。



――――予想してたら、相当にヤバい奴だが。



枕元の普段着、カーゴパンツにパーカーを羽織り、安全靴を履き、ベッドから大地に下り立つ。

……なんだか身体がフワフワするな。

熱に浮かされてるというか、夢の中というか――――


そうだ、忘れてた。

こういう時、まず真っ先にやらなきゃならない「お約束」があるじゃないか。


俺は自分の頬を思いっきり抓った。

痛い。

普通に痛い。

覚悟はしてたが、やっぱり夢じゃない。




いつしか騒がしかった鳥(?)の声も止み、辺りは静寂に包まれていた。

実際に異世界に来てみると、案外感動とか歓喜とかは感じないもんだな。

ていうかさ、何も起きないにも程がないか?

普通ならさ、神様だか何か出てきて

「この世界は危機に瀕している。お前が救うのだ!」

とか

「ごっめ~ん、他の人と間違えて転送しちゃった♪」

とか言って、チートな能力を授けてくれるものなんじゃないのか?


とか考えていると、辺りの茂みや奇樹の陰から人影が姿を見せた。

暗い緑色の肌、人間の子供程度の矮躯、尖った耳……

世間一般に『ゴブリン』と呼ばれるモンスターに似てる生き物。

粗末で薄汚れた皮とも布とも判別できない服を着、手に手にボロボロの剣や斧で武装した彼等の数は――――



――――数十人。



……ちょっと待て。

チュートリアルにしちゃバランス悪くないか?

初見殺しなんてもんじゃないぞ。

周りに何か、武器になりそうなものは……何もない。


あれ?

ひょっとして俺、何もしてないのに異世界生活初日から詰んだ?


「ギェ」だか「ギャア」だか分からない鬨の声を合図に、ゴブリン達は俺に向かって殺到してきた。


イメージCV

遠藤浩一:平田広明

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